
【頭部】TIPS症例52
【症例】70歳代 女性
スクリーニング
画像はこちら
CT
MRI
左上顎洞炎以外の異常所見は?(ヒント:DWIをよく観察してください。)
CTですと難しいので今回はMRIから見ていきます。
まずはDWI/ADCです。
ちょっと気づきにくい所見ですが、左の小脳橋角部にDWI高信号を認めています。
ADCは脳実質よりは高信号ですが、脳脊髄液よりは信号低下しています。
同所見は、FLAIRでは同定可能ですが、T2WIでは脳脊髄液と等信号くらいで同定できません。
小脳橋角部にこのような所見を見た際に考えなければならないのが、類表皮嚢胞(epidermoid cyst)です。
診断:類表皮嚢胞(epidermoid cyst)疑い
CTではどうでしょうか?
その目で見ると左小脳橋角部に腫瘤があるのかもしれませんが、この症例はCTのみでの指摘は困難ですね(^_^;)
副所見として、DWIをよく観察すると、橋右側に低信号を認めます。
T2WIで同部を見てみるとやはり低信号となっており、陳旧性の微小出血を疑う所見です。
橋だけでなく、左被殻にも同様の所見を認めています。
いずれも高血圧性出血の好発部位であり、今回も高血圧による陳旧性の微小出血が疑われます。
DWIをよく観察してくださいという出題でしたので、もしかしたらこちらの所見のみを取った方もおられるかも知れません。
ちなみに出血は、T2*WIやSWIでより明瞭に見えるのですが今回は撮影がありませんでした。
関連:
【頭部】TIPS症例52の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
かなり難しい症例でした。脳底に気付きにくい髄膜腫でもあるのかなと思ってみていましたが、類表皮嚢胞自体を知りませんでした。それ自体は悪性でなくても、神経圧排等の影響が出ることもありそうですね。
上顎洞の内部にCT、DWIで高信号、ADC低下の信号は血腫か何かでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>かなり難しい症例でした。
ヒントも記載したのですが、気づきにくいですよね(^_^;)
>脳底に気付きにくい髄膜腫でもあるのかなと思ってみていましたが、類表皮嚢胞自体を知りませんでした。
同部にDWI高信号をみたら類表皮嚢胞を思い出しましょう。
>上顎洞の内部にCT、DWIで高信号、ADC低下の信号は血腫か何かでしょうか?
真菌性副鼻腔炎の可能性もありますが、こちらについては精査されておりません。
ちょっと解らなかったです。
画像を並べて見ることができても気づけなかったかもしれません。過去の症例提示でも頭は特に難しい症例の難易度が高い気がします。がんばります。
アウトプットありがとうございます。
>画像を並べて見ることができても気づけなかったかもしれません。過去の症例提示でも頭は特に難しい症例の難易度が高い気がします。
この症例は特に気づきにくいと思います。
関連ページの類表皮嚢胞の方はわかりやすいのですが。
同じような髄膜腫をよく見るのでしっかり鑑別できるようにしないとだめですね
アウトプットありがとうございます。
髄膜腫も同部に認めることがありますので注意が必要ですね。
鑑別が難しいこともありますね。
おつかれさまです。すみません、質問です。
類表皮嚢胞?類上皮嚢腫?
どちらもepidermoid cystですか?
アウトプットありがとうございます。
類皮腫(dermoid)は別ですが、類表皮嚢胞、類上皮嚢腫は同じものだと認識しています。
もし間違っていれば逆に指摘していただけたら幸いです。
いつもお世話になっております。一般内科医です。ただの感想です。
多分、これは脳外科の先生がご覧になると
❶小脳橋角部にある片側性腫瘤
❷DWI高信号 ADC低信号
の時点で「類表皮嚢腫」が思い浮かんでしまうのであろうと思います。
更に、以下の点がちょっと面白いなあ、と思えるようになりました!!
同病変は
❸T2では同部位は高信号で指摘しにくいから、多分、液体成分からなる嚢胞のようなものであるのかな
❹FLAIRで周囲の髄液と信号強度が異なるから、髄液とは異なる成分の液体なのだろうな。例えば蛋白濃度がやや高いなどの液体成分からなる嚢胞なのかな
MRIの各シークエンスからその病変の性質を探るっていうところがMRIの面白いところの一つなのですね!
と卒後30年になろうとして(恥ず!!)ようやく実感した次第でした。。
この企画に出会えたおかげです。ありがとうございます!!