
【頭部】TIPS症例49
【症例】60歳代 男性
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副鼻腔炎以外の異常所見と次に行うべき検査は?
正中部の所見ですので、一見見落としがちかもしれませんが、トルコ鞍内に腫瘤性病変があることに気づかなくてはなりません。
横断像では少し分かりにくいですが、腫瘤はトルコ鞍内〜鞍上部にかけて認めています。
正常例をチェックして見ましょう。
正常例と比べると、トルコ鞍内に腫瘤があることがやはり確認できますね。
診断:下垂体腫瘍疑い
下垂体腫瘍の可能性があるとしてMRIが撮影されました。
拡散強調像(DWI)から見てみましょう。
拡散強調像(DWI)では脳実質とほぼ等信号を示す腫瘤として正中部に同定できます。
また副所見として両側脈絡叢嚢胞を疑う所見を、両側側脳室の三角部に認めています。
脈絡叢嚢胞については、症例6で取り扱いましたね。
次にT2WIを見てみましょう。
T2WIでトルコ鞍内〜鞍上部にかけて脳実質よりやや高信号な腫瘤として同定できます。
しかしやはり下垂体部や鞍上部の観察でわかりやすいのは矢状断像です。
腫瘤の全体像がわかりやすく、トルコ鞍内〜鞍上部にかけてややダルマのような形で腫瘤が存在していることがわかります。
嚢胞ではなく充実性腫瘤であり、下垂体腺腫が疑われます。
また頭尾方向の長径は1.8cm大>1cmありますので、下垂体腺腫の中でもmacroadenomaということになります。
診断:下垂体腺腫(macroadenoma)疑い
※視野異常など症状は認めず、また内分泌検査で異常を認めず、非機能性下垂体腺腫として手術はされずに、画像でフォローされています。
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その他所見:副鼻腔炎あり。
【頭部】TIPS症例49の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
正中の病変は左右比較でわからないので同じような画像でわからない時期があったのを記憶しています。でも知ってたら、経験を重ねたら、見えるので症例提示ありがたく思います。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように正中部は見落としやすいところですね。
特に下垂体は要注意ですね。
他のコメントにもあるように正中部病変でなかなか異常所見に気づくのか難しかったです
アウトプットありがとうございます。
ボーっとしてたら見落としますね。
本来ない構造が存在しているとコロコロスクロールしている間に気づかなくてはなりません。
次回は頭蓋咽頭腫と予想します。
CTで下垂体がどの様に見えるかすらノーマークでした。反省します。
アウトプットありがとうございます。
正常ならばトルコ鞍内はここまでの腫瘤は見えませんので、見えない陰性所見となりますが、正常例をチェックしてみてください。
7スライス目、左側頭葉付近の空隙が目立つような気がするんですが正常なのですか?
アウトプットありがとうございます。
確かに目立ちますね。
同部に好発するくも膜のう胞があるのだと考えられます。
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https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/7793
質問多く大変すみません。本症例のT1矢状断は後葉の高信号域は指摘困難でしょうか??もし指摘困難ということになると、、何か考えておくべきことがあるのでしょうか?(今後尿崩症などを呈してくることもありうる??とか、。。。)
9/16でそれっぽく見えたのは、斜台の骨髄でしょうか。。
アウトプットありがとうございます。
改めてこの症例を見直してみますと、CT横断像で確認できますが、斜台は右よりも左でより高位まで認めています。
MRIのT1WIでの高信号に左右差が有るのもこの影響と考えられます。
では、後葉の高信号はどこにあるのかということですが、T1WI矢状断で10/16で腫瘤のすぐ背側に高信号を認めています。これは下垂体柄でこの部位に高信号を認めている点から、下垂体腺腫が下垂体柄を圧迫して、いわゆる「せきとめ現象」が起こっていると考えられます。
後葉ホルモンは視床下部の神経細胞体で作られて下垂体柄をへて後葉に運ばれ貯蔵され、高信号を示すのですが、それが途中でせき止められて、下垂体柄に高信号を認めている状態です。ですので、後葉は存在するのでしょうがホルモン貯蔵を認めていないためT1WIで指摘できない状態になっていると思われます。
ご回答をありがとうございます!
なるほど 高さはだるまの(胴体ではなく)顔のあたりから画面向かって2時方向に出ているやつですよね