
【頭部】TIPS症例43
【症例】70歳代 女性
【主訴】めまい
【現病歴】1ヶ月前にめまい感があり他院受診。耳鳴、聴力低下なし。当院紹介となる。
画像はこちら
CT
MRI
まずCTから見ていきましょう。
ちょっと気づきにくいかも知れませんが、右の小脳橋角部に腫瘤を認めています。
内耳道が近くにあり、聴神経腫瘍の可能性があります。
その他髄膜腫等の可能性もあります。
また、副所見として、鼻骨の腹側に人工物があり、高吸収であり、インプラント挿入を示唆します。
隆鼻術後であることがわかります。
次にMRIを見てみましょう。
T2WIで右の小脳橋角部に淡い高信号の腫瘤を認めています。
DWI/ADCでは脳実質と同程度の信号強度であることがわかります。
冠状断像で、灰白質と比較してT1WI,T2WIともに等信号程度で、T2WIでは腫瘤が右の内耳道に入り込んでいるように見えます。
CISS(脳槽撮影)では、その様子がよくわかります。
腫瘤は右の内耳道に入り込んでいるように見え、コンマ状の形態を示しています。
典型的な聴神経腫瘍を疑う所見です。
診断:右聴神経腫瘍疑い
※その後フォローでめまいは消失しました。6ヶ月ごとの画像フォローをされています。
さて、今回の症例ではややサイズが大きいため、CTやT2WIでも指摘できましたが、これらで指摘できない聴神経腫瘍もしばしばあります。
一つ症例を見てみましょう。
症例 60歳代男性
こちらの症例では、T2WIでは指摘は困難です。
CISSでは、内耳道内に腫瘤を認めており同定することができます。
ですので、聴神経腫瘍を除外するには、脳槽撮影が必須と言えます。
ご自身の施設のMRIの「内耳ルーチン」にも必ず含まれているはずです。
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【頭部】TIPS症例43の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
ありがとうございます。聴神経鞘腫と髄膜種の鑑別は造影して均一(髄膜種)か不均一(神経鞘腫)という考えでよいでしょうか?
小さな聴神経鞘腫だと不均一になるのか?
小さいうちは症状なければ経過観察だからどちらにしても問題ないのか?
いろいろ質問して申し訳ありません。
アウトプットありがとうございます。
>聴神経鞘腫と髄膜種の鑑別は造影して均一(髄膜種)か不均一(神経鞘腫)という考えでよいでしょうか?
そうですね。造影効果で判断するよりも、内耳道との連続性やdural tail signに着目しますが、サイズが小さいもので内耳道との連続性が微妙な場合は鑑別が難しいこともありますね。
>小さいうちは症状なければ経過観察だからどちらにしても問題ないのか?
そうですね。割とサイズが大きくてもフォローされているケースはよくあります。
年齢、症状と増大速度との兼ね合いで加療されると認識しております。
二例目はCISSがなければ絶対に無理ですね
聴神経腫瘍を鑑別に挙げられるかが難しいところです
アウトプットありがとうございます。
>二例目はCISSがなければ絶対に無理ですね
無理ですね。T2WIで無理なのでCISSがなければひっかけようがないです。
>聴神経腫瘍を鑑別に挙げられるかが難しいところです
内耳道内にある場合は聴神経腫瘍をまずは鑑別に挙げます。
CT所見で、後床突起近傍の低濃度領域は左海綿静脈洞脂肪沈着でよろしいでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
確かに空気ではなく脂肪のようですので、おっしゃるとおりだと思います。