聴神経腫瘍/聴神経鞘腫
- acoustic neurinoma/vestibular schwannoma。
- 原発性脳腫瘍の約8%を占め、小脳橋角部腫瘍の75%は聴神経腫瘍。参考)小脳橋角部における腫瘍の頻度
- 好発年齢は30〜60歳でやや女性に多い。
- Schwann細胞から発生する良性腫瘍で、脳神経では85〜90%が第Ⅷ神経(聴神経)から発生する。厳密には前庭神経から発生するので前庭神経鞘腫が正しい。
- 神経鞘腫の頻度は、聴神経(前庭神経)>三叉神経>顔面神経>舌咽・迷走・副神経…。
- 多くは第Ⅷ神経の前庭神経から生じるにもかかわらず、初発は耳鳴や聴力低下などの鍋牛神経の症状で始まることが多い。
- 組織学的には、細長い突起を持つ紡錘形の細胞が密集して平行に並び、柵状配列(palisade)を作る部分を“Antoni A type”と呼び、柵状配列を示さない星状の部分“Antoni B type”も観察される。嚢胞変性や、周囲くも膜の癒着によるくも膜嚢胞の合併もある。
- ほとんどは内耳道口に発生し、内耳道を拡大しつつ小脳橋角部に進展する形をとる(コンマ型、アイスクリームを入れたコーン(ice cream on cone)などと表現される)。
- 小脳橋角部から内耳道へ入り込んでいるように見えるが、内耳道から発生して、小脳橋角部に出ているという点に注意。
- 神経線維腫症2型(neurofibromatosis type 2)では両側に発生する。
- 増大速度は遅く、小さな腫瘍では経過観察を行い、増大傾向あれば放射線治療(ガンマナイフ)や腫瘍摘出術が考慮される。
聴神経腫瘍の画像所見
- MRIではT1強調像にて軽度低〜等信号、T2強調像にて軽度から著明な高信号を示す。
- ただし小さな腫瘍は内耳道内で均一なT2WI等信号を呈する。
- 造影にて不均一に増強される。
- 錐体骨の骨髄による脂肪高信号には注意を要するため、適宜、脂肪抑制をかけるとよい。
- 内耳道の拡大の有無についてはCTの方が有用。
- 15%程度に嚢胞成分を有し、まれに出血性変化を伴い、液面形成する。
- 石灰化は非常に稀。
- 聴神経腫瘍の5%ほどに内耳道に限局したintracanalicular typeや内耳道の拡大しないmedial typeもある。
- 蛋白を産生し、交通性水頭症を来すことがある。
症例 70歳代女性
右内耳道にコンマ型の腫瘤あり。
Gdにて造影効果あり。聴神経腫瘍を疑う所見です。
※T1WI→heavily T2WI(CISS)の誤りです。
関連記事:頭部MRIの特殊な撮像方法とその特徴(FLAIR、SWI、BPAS、FIESTA、CISS、DTI、MRS)
症例 60歳代女性
左内耳道にコンマ型の腫瘤あり。
聴神経腫瘍を疑う所見です。
症例 50歳代男性
左小脳橋角部に嚢胞変化および辺縁を中心に造影効果を有するコンマ型の腫瘍性病変あり。
手術の結果、聴神経腫瘍でした。
症例 40歳代男性
右小脳橋角部に嚢胞変性を伴う腫瘤あり。
(嚢胞変性を伴う)聴神経腫瘍を疑う所見です。
聴神経腫瘍のマネジメント
- 明確なガイドラインはない。
- 治療には手術療法と放射線治療がある。
- 小脳橋角部に3cmを超える腫瘤を認め、脳実質の圧排や浮腫が強い場合は手術が選択される。
- ただし、サイズが大きくても臨床症状に乏しい場合があり、年齢など考慮して治療方針を決定する。
- 偶発的に発見された聴神経腫瘍は、約半数が増大、約半数が不変、ごく一部に縮小を示したと報告されている。
参考文献: