【頸部リンパ節】症例5

【症例】30歳代 男性
【主訴】発熱、リンパ節腫脹
【現病歴】本日39℃の発熱と、頸部リンパ節腫脹あるため来院。
【既往歴】扁桃腺摘出、アルコール性肝障害
【身体所見】BT 38.9℃、左頸部リンパ節腫脹あり、圧痛あり、咽頭痛あり。白苔なし。咳嗽なし。
【データ】WBC 12300、CRP 3.52、インフルエンザ簡易検査陰性

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まず横断像から見てみますと、両側頸部に多数のリンパ節を認めていることが分かります。

高さに分けて見ていきましょう。

まずは舌骨よりやや頭側レベルです。

すると、顎下腺後縁より腹側(レベルⅠB)、顎下腺後縁〜内頸静脈後縁(レベルⅡA)、内頸静脈後縁より背側(レベルⅡA)に多数リンパ節を認めています。

中でも内頸静脈周囲のレベルⅡAで最も目立ちます。

続いて、舌骨レベルを見てみましょう。

舌骨およびその尾側レベルで総頸動脈内側縁より外側、胸鎖乳突筋後縁より腹側(レベルⅢ)にリンパ節腫大を認めています。

ここもリンパ節腫大が目立ちますね。

続いて輪状軟骨レベルです。

輪状軟骨およびその尾側レベルで総頸動脈内側縁より外側、胸鎖乳突筋後縁より腹側(レベルⅣ)にリンパ節腫大を認めています。

内頸静脈沿いに頭尾方向に広範にリンパ節腫大を認めていることがわかります。

さらに尾側のレベルを見てみましょう。

胸鎖乳突筋の後縁と前斜角筋の後外側縁を結ぶ斜線の前内側(レベルⅣ)、後外側(レベルⅤB)に小リンパ節が散見されます。

次に冠状断像を見てみましょう。

冠状断像で見ると、内頸静脈周囲を中心に両側広範にリンパ節腫大を認めていることがわかりますね。

 

診断:両側多発頸部リンパ節腫大(レベルⅡA、Ⅲ、Ⅳ中心)

 

今回の特徴としては、

  • 両側左右対称性にびまん性に認めている
  • リンパ節周囲の脂肪織濃度上昇は軽度である
  • 急性発症である
  • 圧痛がある
  • (ただし右レベルⅡAリンパ節に中心壊死を疑う所見を認めている)

と言った特徴があります。

これらの所見は、ウイルス性リンパ節炎を疑う所見です。

(ただし、中心壊死を認めている所見は典型的ではありません)

この症例は確定診断には至っておらず、抗生剤投与による経過観察で症状が軽快しました。ですので、細菌性の可能性もありますが、リンパ節の分布や周囲の脂肪織濃度上昇の程度からはウイルス性を疑う所見です。

 

診断:ウイルス性リンパ節炎疑い

 

※あくまで疑いということでお願いします。

 

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【頸部リンパ節腫大】症例5の動画解説


お疲れ様でした。

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