
【症例】50歳代 男性
【主訴】咽頭痛、嚥下痛、左頸部圧痛
【現病歴】4日前からの咽頭痛、嚥下痛、左頸部圧痛あり。昨日より寝返りができず寝られない。
【身体所見】BT 36.9℃
【データ】WBC 9600、CRP 7.46
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CT
MRI
骨条件をよく見ないと見落としそうな所見ですが、軸椎(C2)の腹側から環椎(C1)の腹側にかけて石灰化を認めています。
矢状断像でその様子がよく分かります。
crowned dens syndromeで認めた石灰化の部位とはやや異なります。
またこれも見慣れていないと厳しい所見ですが、C2−5の咽頭後間隙に浮腫性変化を認めています。
咽頭後間隙には扁桃周囲膿瘍が波及して咽後膿瘍を形成した症例がありましたが、今回は膿瘍を疑うような明らかな皮膜の造影効果は認めていません。
炎症があり反応性に浮腫性変化〜液貯留を認めていると考えることができます。
- 頸部痛
- 環椎腹側の石灰化
- 咽頭後間隙の浮腫性肥厚
これらがあるときに考えなければならないのが、石灰沈着性頸長筋腱炎です。
頸長筋腱(環椎の前に付着)へのハイドロキシアパタイト沈着に伴う炎症です。
次にMRIを見てみましょう。
頸長筋の環椎付着部左側にCTで認めた石灰化(T2WI低信号)を認めています。同部の頸長筋に軽度高信号の浮腫性変化を認めています。
また咽頭後間隙に浮腫性変化を高信号として認めています。
咽頭後間隙の浮腫性変化はより下のレベルのでC2−5で明瞭で、矢状断像で見た方がわかりやすいかもしれません。
診断:石灰沈着性頸長筋腱炎
※NSAIDで様子見となりました。外来でフォローされ、軽快しています。
関連:
- 頸長筋腱炎・筋炎(石灰沈着性頸長筋腱炎・筋炎)とは?画像診断のポイントは?
- Crowned dens syndrome と石灰沈着性頸長筋腱炎 ←こちらのレビューがcrowned dens syndromeと併せてよくまとまっています。
【顔面+α】症例30の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
全く知らない所見でしたが、crown densのように知っておかないと気づくのは厳しい症例ですね。
頚椎で目立った所見無いなぁと思うことはよくありましたが、こういった所見をたくさん見逃していたのかもしれません。
これから意識して観察してみます。
アウトプットありがとうございます。
>全く知らない所見でしたが、crown densのように知っておかないと気づくのは厳しい症例ですね。
そうですね。兄弟みたいなものですね。ともに石灰沈着ですし。
>頚椎で目立った所見無いなぁと思うことはよくありましたが、こういった所見をたくさん見逃していたのかもしれません。
こちらの石灰化も症状ありきで診断しますので、何でも引っかけるわけではない点に注意が必要ですね。
厳しかったですが勉強になりました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
こちらこそ30症例お付き合いいただきありがとうございます。
crowned dens syndromeが出題された時から、石灰沈着性頸長筋腱炎は「出題されるかもしれない」と思っていました^^
頚がまわせないほどの頚部痛として、2症例とも代表的な疾患ですね。
アウトプットありがとうございます。
>石灰沈着性頸長筋腱炎は「出題されるかもしれない」と思っていました^^
読まれていましたか(^_^;)
>頚がまわせないほどの頚部痛として、2症例とも代表的な疾患ですね。
そうですね。所見自体は脂肪織濃度上昇が激しいとかではないので、一度体験しておくことが重要な2症例ですね。
膿瘍を示唆する皮膜の造影効果はどのような機序で成り立っているのですか?
アウトプットありがとうございます。
膿瘍腔に接する部位には炎症性肉芽が存在しているためです。
30症例ありがとうございました。
頸部の画像も大分心理的な閾値が低くなりました。
今回、石灰沈着性頸長筋炎は石灰化の所見は必須では無いと言うことでしたが、Crowned dens syndromeの場合は如何でしょうか?
他部位の偽痛風でも画像的に石灰化は必須では無いと思いますので、
必須所見では無いと思っているのですが…
アウトプットありがとうございます。
そうですね。石灰沈着性頸長筋炎同様、必須ではないと考えますが、石灰化がないと診断には至らないことが多い気がしますね。
ありがとうございます。
まさに仰る通りで、診断が宙ぶらりんの状態で、
CDS疑いでNSAIDsが著効して治った症例が今まで2例ほどありました。
そうなんですね。
やはりそういうことはあるのですね。貴重な体験ありがとうございます。
うちでも先日頸部痛の主訴の方で、咽頭後間隙に浮腫性変化があったのですが、環椎腹側の石灰化は認めずという症例がありました。石灰化は認めかったのですが、(石灰沈着性)頸長筋腱炎なのだろうと最終的には診断されました。