
【症例】70歳代 男性
【主訴】咽頭痛、嚥下時痛
【現病歴】2日前より咽頭痛あり、徐々にひどくなり昨晩眠れず受診。
【身体所見】SpO2 95%(RA) 、開口障害なし、左口蓋扁桃周囲腫脹あり、左頚部に圧痛あり。
【データ】WBC 13900、CRP 6.48
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左扁桃周囲膿瘍および周囲に浮腫性変化を認めています。
左扁桃周囲膿瘍のある部位から尾側方向に広範な軟部組織の腫脹・浮腫性変化を認めています。
浮腫は喉頭蓋に及んでおり、喉頭浮腫の状態であることがわかります。
矢状断像で喉頭蓋の腫脹がわかりやすく、頸部単純X線側面像でthumbサインと呼ばれる像に相当する所見を認めています。
診断:左扁桃周囲膿瘍および喉頭浮腫(喉頭蓋浮腫)
※耳鼻科入院となりました。緊急の喉頭ファイバー検査においても喉頭蓋舌面腫脹を認めているものの、気道は確保されていると判断され、切開排膿およびステロイド、抗生剤点滴開始となりました。
翌日、改善を認めず再度頸部CTが撮影されました。
左扁桃周囲膿瘍は増大し、咽頭後間隙に及び咽後膿瘍を形成しています。
また、喉頭蓋の腫脹も残存、周囲浮腫の増強あり、右側にも及び、気道狭窄を認めていることが分かります。
浮腫性変化および咽後膿瘍は下咽頭レベルまで達しています。
矢状断像で、喉頭蓋の腫脹は残存し、咽後膿瘍を中咽頭から下咽頭にかけて認めている様子がよくわかります。
診断:左扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍、喉頭浮腫、気道狭窄
※膿瘍形成は悪化しており、窒息の可能性があると判断され緊急手術となりました。
気管切開術、左口蓋扁桃摘出術が施行され、切開排膿がなされました。
その後経過良好で、10日後に気管切開孔閉鎖術が施行され、その8日後に退院となりました。
※なお膿瘍の培養からは口腔内常在菌のみ検出されました。
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お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
扁桃の腫大はよく遭遇しますが、ここまで炎症が波及した症例や喉頭蓋が主張した症例は初めてみました。確かにここまで腫れてくると気道閉塞の恐れが出てきますよね。
間隙については症例20を参考にしながら記載することができました。(^^)
アウトプットありがとうございます。
>ここまで炎症が波及した症例や喉頭蓋が主張した症例は初めてみました。確かにここまで腫れてくると気道閉塞の恐れが出てきますよね。
そうですね。ここまで炎症が広がるのは頻度としては多くないですが、扁桃腺炎も軽視してはいけないということがわかりますね。
扁桃周囲膿瘍による重篤な合併症(喉頭浮腫に気道狭窄、咽後膿瘍など)が良くわかる症例でした。あと、見るべきところとして静脈血栓の有無も大切だと感じます。
アウトプットありがとうございます。
>あと、見るべきところとして静脈血栓の有無も大切だと感じます。
補足ありがとうございます。
Lemierre 症候群ですね。
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thumbサインはこんなにも腫れるのですね。注意してみたことがなかったのですがこれくらいはよくあるのでしょうか?ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
ここまでではありませんが、急性喉頭蓋炎では同じように腫脹することがあります。
レントゲンでも気づかなければならない所見ですが、CTならばなおさらです。横断像で喉頭蓋の腫脹に気づいて矢状断像で「やはり!」とthumb signを確認しなければなりません。
研修医の時、強い咽頭痛があってCTを取って急性喉頭蓋炎だった症例があって、えらく怒られた記憶があります笑
でもCTだと良く腫張がわかりますね!
アウトプットありがとうございます。
>強い咽頭痛があってCTを取って急性喉頭蓋炎だった症例があって、えらく怒られた記憶があります笑
CT撮影して、急性喉頭蓋炎に気づけたのなら問題ないと思いますが、スルーして怒られたんですかね(^_^;)
>でもCTだと良く腫張がわかりますね!
そうですね。矢状断像で特にわかりやすいですが、喉頭蓋は正常ならば薄いということを普段から意識して見ておく必要がありますね。