
【症例】60歳代 男性
【主訴】右耳の痛み
【現病歴】右耳の痛みがあり、昨日より腫脹の増悪あり、来院。
【身体所見】右耳前部から顎下部にかけて発赤、腫脹あり。
【データ】WBC 10800、CRP 8.66
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右耳下腺の腫大および造影効果増強、周囲の脂肪織濃度上昇を認めています。
急性耳下腺炎を疑う所見です。
左右差を見れば右の所見が目立ちます。
右内頚静脈の周囲(レベルⅡに相当)に多数のリンパ節腫大を認めています。
反応性腫大が疑われます。これも左右差を見れば明らかです。
右側頭部皮下にもかなり大きなリンパ節腫大を単発で認めています。
こちらも反応性リンパ節腫大が疑われます。
冠状断像で見ると、耳下腺の様子がよくわかります。
右耳下腺の腫大・造影効果増強・周囲脂肪織濃度上昇がわかりやすいですね。
明らかな膿瘍を疑う所見は今回認めませんでした。
診断:右耳下腺炎
※耳鼻科入院となり、抗生剤で加療されました。
【顔面+α】症例24の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
右耳下腺内に一部結節状の造影効果を伴っていますが、耳下腺内のリンパ節腫大を見ているのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
腫瘍の除外は必要ですが、今回は腺内のリンパ節が複数腫大していると考えます。
今回右内頸静脈が左に比べ拡張しており、頭蓋内でも静脈が拡張していると思ったのですが、これは炎症によるものですか?それとも生理的なものでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>頭蓋内でも静脈が拡張していると思ったのですが、これは炎症によるものですか?それとも生理的なものでしょうか?
生理的ですね。炎症は関係ないと考えます。
内頸静脈はしばしば左右差があり今回のように左側で径が小さいことが多いです。
海綿静脈洞〜横静脈洞についても右が優位に造影されていますが、これも右の方が血流が太い→造影剤が流れやすいからという理解で大丈夫でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
今回他の方が指摘されているように、右の内頸静脈と顔面動脈にシャントが出来ている可能性があります。
もしそうならばその影響でこれらの血管が太くなっている可能性があります。
なお、頸静脈孔については正常でも左に比べて右で大きいことが多いですね。
頭部TIPSでも出てきたこの部位のpseudolesion(偽病変)についても復習しておいてください。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/5656
> 今回他の方が指摘されているように、右の内頸静脈と顔面動脈にシャントが出来ている可能性があります。
もしそうならばその影響でこれらの血管が太くなっている可能性があります。
なるほど、有難うございます。海綿静脈洞〜横静脈洞が右優位に造影されているのもAVシャントが影響している可能性があるんですね。
でも、このくらいの造影差は正常と考えても矛盾はないということですよね。頸静脈孔もそうですが、左右差=異常と取らないように気をつけたいです。勉強になりました。
始めましていつも非常にためになっています。49-50枚目のところで右内頸静脈への血管(高さ的には右の顔面動脈でしょうか?)の合流が見られるのですがこれは異常ではないでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>49-50枚目のところで右内頸静脈への血管(高さ的には右の顔面動脈でしょうか?)の合流が見られるのですがこれは異常ではないでしょうか?
解剖の書籍を何冊か確認したのですが、確かに顔面動脈ぽいですね。もう少し下のスライスまで血管を追いたいところですが。
となるとAVシャントを形成しており、右内頸静脈が拡張していると言う可能性がありますね。
生理的と思っていたのですが、そうではないのかもしれません。
ご指摘ありがとうございます。
耳下腺管の走行については今後解説がありますでしょうか。
唾石がないか確認したかったのですが、耳下腺管がどれかよく分からず、耳下腺と咬筋周りをぼんやり眺めるだけになってしまいました。
「これが耳下腺管」とわかればもっと自信を持って唾石の有無を判断できると思うのですが。
アウトプットありがとうございます。
>唾石がないか確認したかったのですが、耳下腺管がどれかよく分からず、耳下腺と咬筋周りをぼんやり眺めるだけになってしまいました。
実際の画像診断ではこれが耳下腺管と同定できないので、走行する部位を何となく覚えておいて観察するということになります。
>耳下腺管の走行については今後解説がありますでしょうか。
解説予定はありませんでしたので、解説しました。
丁寧な解説どうもありがとうございます。
どの辺を眺めればいいか、分かった気がします。