Lemierre’s syndrome(レミエル症候群)とは?
- 健常若年成人が急性扁桃炎、扁桃膿瘍あるいは扁桃周囲膿瘍発症後4〜5日で急激に増悪し、頸静脈の化膿性血栓性静脈炎から、敗血症、多発性転移性感染(膿瘍形成)を肺胸膜、肝、腎、関節に呈する病態。
- 静脈炎は両側に及ぶことは少なく、左右非対称の頚部腫脹・疼痛を訴えることが多い 。
- 若年健常者に多い。2:1で男性に多い。
- 100万人に0.6-2.3人との報告あり。
- 死亡率は現在でも10%を越える。
- 先行感染として咽頭炎、扁桃炎が7割。
- 内頚静脈に波及する経路は正確には解明されていない(経静脈性、筋膜を介した直接波及、リンパ系など)。
- 血栓性静脈炎後の波及は肺が多い。→敗血症性肺塞栓となる。
- 肺についで、関節、肝臓、脾臓、骨髄。稀に眼内炎、脳膿瘍が起こる。
- 病原体は嫌気性菌でFusobacterium necrophorumが最多である。
- 若年者で咽頭痛や開口障害が先行し、激しい炎症所見を認め、汎発性播種性管内凝固(DIC)、敗敗血症、敗血症性肺塞栓などの多彩な臨床経過をたどる。
- 上気道感染症状が無くても、衛生状態の悪い口腔内での原因菌の増殖や慢性活動性EBウイルス感染症の合併症として発症する場合がある。
- 治療は、抗菌薬投与が中心で、例としてスルバクタムとアンピシリン、ペニシリンGとクリンダマイシン等の組合せによる。マクロライド系や第3世代セフェムは無効。
Lemierre’s syndrome(レミエル症候群)の古典的な診断基準
1、喉頭・咽頭の感染症、
2、少なくとも1セットの血液培養陽性、
3、内頚静脈の血栓性静脈炎、
4、1か所以上の遠隔感染症がある、
があり、すべてを満たさなくとも臨床的に疑われる場合に診断される。
Lemierre’s syndrome(レミエル症候群)の画像所見
- 血栓性静脈炎として、内頸静脈に血栓・周囲炎症所見
- 敗血症性肺塞栓
などを認める。
急性咽頭炎や扁桃炎に合併するため、こららの炎症所見や膿瘍形成所見を認めることがある。
敗血症性肺塞栓を認めると
- 多発性の結節性コンソリデーションを来すことが多い。
- 空洞を認めることも多い。
- ほとんどの症例で胸水を伴う。
- 結節の中枢側が肺血管と連続するfeeding vessel signを認めることがある。
症例 70歳代女性 抜歯後数日で後頚部痛出現、エンドトキシンショックあり。
両側肺野に多発結節の出現あり。(過去画像は非提示)
左上葉には楔状で胸膜に接する陰影あり。
敗血症性肺塞栓にも矛盾しない所見です。
頸部造影CTにて両側の内頸動脈に血栓を認めており、血栓性静脈炎および、Lemierre’s syndrome(レミエル症候群)を疑う所見です。
咽頭後間隙に液貯留を認めており、膿瘍形成を疑う所見。
抜歯から、感染が咽頭後間隙および両側内頸静脈へと波及し、感染が全身に飛び、
- 敗血症
- 敗血症性肺塞栓
へと至ったと考えられる。
参考文献:
画像診断 vol.31 No.1 2011 P28