
【症例】30歳代 男性
【主訴】咽頭痛、開口障害
【現病歴】3日前より咽頭痛、開口障害あり。昨日より食事摂取、水分摂取不良となり、本日耳鼻科外来受診。
【身体所見】発熱37度台、左扁桃周囲腫脹++、開口障害+、喉頭浮腫なし。呼吸苦なし。
【データ】WBC 15400、CRP 7.47
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頸部の造影CTが撮影されています。
左口蓋扁桃の腫脹および壁を有する液貯留があり、扁桃周囲膿瘍が疑われます。
このように液貯留を確認することが膿瘍の診断において最も重要です。
膿瘍腔の背側にはリンパ節の軽度腫大を認めています。
同部のリンパ節は、Rouvièreリンパ節(ルビエル)という名前がついており、上咽頭癌のリンパ節転移で重要なリンパ節です。
また膿瘍があるやや尾側レベルにおいて、頸動静脈の周囲に複数のリンパ節腫大を認めています。
左で目立ちますが右にも認めています。
※細かい話になりますが、頸部のリンパ節はレベルシステムという分類がなされ、同部はレベルⅡ相当となります。
膿瘍腔の下方レベルの喉頭蓋レベルで咽頭粘膜は軽度左右差があり、左側で肥厚を認めています。
ただし、喉頭蓋自体には腫脹は認めていません。
傍咽頭間隙への炎症波及はどうでしょうか?
傍咽頭間隙とは上記の間隙の間に認める脂肪濃度部分を指します。
若干左右差があり、左の傍咽頭間隙に脂肪織濃度上昇を認めています。
そのため、傍咽頭間隙への炎症波及を示唆する所見です。
傍咽頭間隙から咀嚼筋間隙に炎症波及を認め開口障害を生じている可能性があります。
診断:左扁桃周囲膿瘍
※入院となり、スルバシリン1.5g×4回/day、ステロイド点滴開始となりました。扁桃周囲膿瘍切開術が施行され、症状改善。6日後に退院となっています。
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【顔面+α】症例20の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
おまけ
今回の動画でも出てきた扁桃周囲膿瘍のシェーマをイラストレーターに依頼しました。
子供が遊ぼうと言っているのに、それを無視する鬼畜動画がこちらです。
passは、kichikuです。
もう5年くらい前の映像です。
この子が今や小学校に通い、学校から帰ってきて一人で「公園に野球行ってくるわ」というまで大きくなりました。
小児を中心に頸部CTを見る機会が多いので、大変参考になります。間隙などの解剖も重要なのに中々覚えられないため、これを機に覚えていきたいです。
アウトプットありがとうございます。
>小児を中心に頸部CTを見る機会が多い
そうなんですね。うちは小児科がないので逆に見る機会がほとんどありません(T_T)
>間隙などの解剖も重要なのに中々覚えられないため、これを機に覚えていきたいです。
そうですね。頸部の間隙は明瞭な線が引けるわけじゃないのが難しいところですが、臨床上重要な間隙もありますので、これを機に覚えていただけたら幸いです。
「読影の手立てとなる局所解剖と画像診断(メジカルビュー社)」に頚部の間隙のことがわかりやすく解説されており、よく確認しています。
実際、間隙は3次元に展開しているので位置関係がとても大切だと感じます。
アウトプットありがとうございます。
>「読影の手立てとなる局所解剖と画像診断(メジカルビュー社)」に頚部の間隙のことがわかりやすく解説されており、よく確認しています。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/wp-content/uploads/2020/11/kangeki.jpg
こちらの書籍ですね。
以前腹部のコンテンツを作る際に参考にしたのですが、確かに頸部もかなり詳しく記載がありますね。
ちょっと読んでみようと思います。ご紹介いただきありがとうございます(^^)
2013年にレベル7以降のレベリングがなされたようです(放射線治療計画ガイドライン2016年版:JASTRO:金原出版:P137-140)。Ibには顎下腺を含んでいたり耳下腺が8番になっていたりするみたいですね。また、下頭がんにおいても咽頭後リンパ節は上咽頭と同様にセンチネルリンパ節と考えられているようです(がん・放射線療法2017:P699:秀潤社)。とはいえ知らない解剖を丁寧に教えてくださり勉強になりました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
補足ありがとうございます。
おっしゃっているのは、あくまで放射線治療に用いるCTVアトラスでの分類かと思われます。
※CTV: Clinical target volume. 臨床標的体積
https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/guideline/2016/03cervicofacial.pdf
リンパ節の分類はややこしくて、
・レベルシステム
・頭頸部癌取り扱い規約
による分類があります。
CTVアトラスではレベルシステムを元に作成されているのだと思います。
リンパ節の分類はいつもなんとなくみてるだけでしたが今回で整理できました!
また復習したいと思いますありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
リンパ節の分類は難しいので、一度レベル分類に基づいてどこに相当するかの確認を経験したことがあることが大事ですね。
よくある部位以外は覚えるのは難しいので都度対応表などを見ながらで良いと考えます。
頚部の解剖は全然分からず、未開の地状態だったので有り難いです。シェーマもとても分かりやすいです。扁桃周囲膿瘍で開口障害が出るのが内側翼突筋が原因だからというのも勉強になりました。扁桃周囲膿瘍を見たら、炎症がどこまで及んでいるのかチェックしようと思いました。
おまけの動画は声がとっても可愛かったです笑 確かに破壊力抜群で開覧注意ですね。
アウトプットありがとうございます。
>頚部の解剖は全然分からず、未開の地状態だったので有り難いです。
頸部の解剖は苦手とする放射線科医も多いと思います。何を隠そう、私もその一人です(^_^;)
>扁桃周囲膿瘍を見たら、炎症がどこまで及んでいるのかチェックしようと思いました。
そうですね。上下、左右にも炎症波及することがあります。
たかが扁桃炎と舐めてはいけない症例にそのうち遭遇はずです(意味深)
>おまけの動画は声がとっても可愛かったです笑 確かに破壊力抜群で開覧注意ですね。
こちらへのツッコミありがとうございます。
鬼畜な上に、膿瘍は厚い隔壁がある、周囲を圧排する、という点も理解できる動画ですね。
朝コメントを返しているときに、たまに子供が入ってきて、「あ、あかいろなすび!」と言ってます。
「あかいろなすび」「シロクマ」のお二人は名前が面白いためか、覚えているようです(^^)