【新腹部救急】症例33
【症例】50歳代 女性
【主訴】左側腹部痛
【現病歴】子宮内膜増殖症疑いで当院婦人科かかりつけ。3日前より左側腹部痛あり、当院受診。
【身体所見】BT 37.5℃、BP 173/101mmHg、HR 101bpm、左側腹部に圧痛(+)、軽度の反跳痛(+)
【データ】WBC 12500、CRP 11.90、Hb 10.3
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両側腎に脂肪を含有する腫瘤を複数認め、腎血管筋脂肪腫(腎AML)が疑われます。
左腎には長径7cm大のサイズの大きな腫瘤があり、その周囲(腎皮膜下)に血腫を疑う高吸収を認め、左の腎筋膜の肥厚を認めています。
このサイズの大きな腫瘤の破裂による後腹膜出血が疑われます。
なお、腹腔内出血は認めておらず、あくまで出血は後腹膜にとどまっています。
診断:左腎血管筋脂肪腫破裂による後腹膜出血
※バイタルおよびHbの低下は落ち着いており、一旦保存的に加療されることになりました。
翌日CTです。
翌日撮影されたダイナミックCTの動脈相において、左腎の出血を来している大きなAMLの辺縁に仮性動脈瘤を疑う造影効果を認めています。同部の破綻による出血が疑われます。
2日後に待機的に血管造影が施行されました。
左腎動脈造影で、左腎に仮性動脈瘤を疑う所見を認めており、同部の塞栓術が施行されました。
さらにその4日後(入院6日後)に退院となりました。
その後、以後半年ごとのフォローがなされています。
通常、腎血管筋脂肪腫(腎AML)は単発のことが多いのですが、今回のように多発している場合は、結節性硬化症(TSC : tuberous sclerosis complex)を伴っていることがあります。
ただ今回は、結節性硬化症を疑う身体所見はして指摘できないと記載がありました。
今後ホルモン異常の有無なども評価要。遺伝子検査を提出して、mTOR阻害剤使用可能か評価するとのことです。
その他所見:子宮にIUD留置あり。(IUDについては腹部TIPS症例14で出てきました。)
【新腹部救急】症例33の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
Bridging septaが筋膜ではなく,面で考えるべきというのがスッキリしました.
確かにその面に沿った広がり方をしますね.
AMLも学生時代に習いましたが,すっかり忘れてしまいますね.
アウトプットありがとうございます。
>Bridging septaが筋膜ではなく,面で考えるべきというのがスッキリしました.
そうですね。私も最初にこの考えを知ったときはかなりすっきりしました。
>AMLも学生時代に習いましたが,すっかり忘れてしまいますね.
腎臓で脂肪濃度を含んだ腫瘤があればまずこれを思い出しましょう。
腎AMLが多発する場合、結節性硬化症の可能性を考えるのですね、記憶しておきます。ありがとうございまた。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
この辺りは放射線科専門医の試験でもよく問われるところです。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/12455
結節性硬化症は頭部のイメージが有りましたが全身に結節を作り、人の場合はAMLが多いのですね。知りませんでした。
アウトプットありがとうございます。
人→腎ですね。
人(ヒト)以外をご存じなのかと思いました(^_^;)
遺伝性(成人家族性)腎腫瘍にはいくつか種類があるので、覚える必要はないかもしれませんが、いくつかあるということはチェックしておきましょう。