【新腹部救急】症例34

【症例】40歳代女性
【主訴】左下腹部痛
【現病歴】関東から旅行中。昨日19時頃、歩行時に左下腹痛が徐々に出現。その後増悪あり。痛みの場所は変化しない。嘔気・嘔吐・下痢なし。横になっているのもつらくなり、本日救急外来受診。一昨日の夜に生牡蠣を含む牡蠣の食べ放題を摂取。
【既往歴】子宮筋腫(経過観察の方針)
【身体所見】意識清明、BT 35.9℃、BP 147/77mmHg、P 115bpm、SpO2 97%(RA)、
腹部:平坦、軟、左下腹部に4横指程度の範囲に圧痛あり。
【データ】 WBC 12600、CRP 4.61

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まず単純CTから見ていきましょう。

右〜正中腹部に石灰化を有する巨大腫瘤を認めています。

尾側で子宮との連続性を認めており、漿膜下子宮筋腫を疑う所見です。

そのやや尾側で先ほどの子宮筋腫の左側に腫瘤影を認めています。

こちらも子宮と連続性があるように見え、漿膜下子宮筋腫を疑う所見です。こちらには石灰化は認めていません。

また両者の間には腹水あり。

よく見ると、左側の子宮筋腫の周りにはやや脂肪織濃度上昇が目立ちます。

子宮はサイズが大きく、筋層内筋腫を疑う石灰化を認めています。

また前方に突出する腫瘤あり、こちらも筋腫が疑われます。

先ほどの大きな漿膜下子宮筋腫以外にも複数の筋腫を認めていることが分かります。

次に造影CTを見てみましょう。

すると、先ほどの大きな漿膜下子宮筋腫のうち、右側は造影効果を認めていますが、左側はやや造影不良であることがわかります。

左側の子宮筋腫周囲には脂肪織濃度上昇を認めていることも考慮すると、漿膜下子宮筋腫の捻転が示唆されます。

ただし、筋層内の子宮筋腫も左側の漿膜下子宮筋腫と同じような造影効果のようにも見えます。

これは子宮筋腫を構成する組織が異なる(今回の場合、筋層内子宮筋腫は石灰化や線維組織が豊富であり、造影されにくい)ためと推測されます。

その翌日にMRIが撮影されました。

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両側の腫瘤はやはり子宮筋腫を疑うT2WI低信号腫瘤であることが確認されます。

そして、造影前後を比較すると、やはり右側の筋腫は造影されていますが、左側の筋腫は造影されていないことが分かります。、

また子宮との連続性を確認すると、筋腫と子宮との間には血管構造を認めており、造影効果を認めていません。

やはり同部で捻れを起こしている漿膜下筋腫捻転であることが示唆されます。

なお、被膜には均一な造影効果を認めていますが、これは浮腫により閉塞した末梢静脈、リンパ管を示唆すると言われます。

 

診断:漿膜下子宮筋腫の捻転

 

漿膜下筋腫の捻転は、しばしば卵巣腫瘍の捻転との鑑別が問題になります。

卵巣腫瘍ではないということを確認するには、

  • (今回のように)子宮と連続性がある。
  • 両側正常卵巣がある。

という点をチェックすればよいです。

では今回正常卵巣は確認できるでしょうか?

まず右卵巣ですが、CTでははっきりしませんが、MRIでは卵巣を同定できます。

次に左ですが、こちらもややわかりにくい(むしろこちらはMRIでわかりにくい)ですが、CT、MRIともに正常卵巣を同定することができます。

 

疼痛が軽減したため、一旦退院希望。自宅から通える関東の某大学病院へ転院となり、そこで手術となりました。

関連:漿膜下子宮筋腫の捻転とは?MRI画像診断のポイントは?

その他所見:

  • 肝嚢胞あり。
  • 少量腹水あり。
【新腹部救急】症例34の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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