先に結論:腎血管筋脂肪腫(AML)とは

  • 腎血管筋脂肪腫は、血管・平滑筋・脂肪からなる良性の腫瘍で、腎臓の良性腫瘍で最も多く、健診の超音波やCTで偶然見つかることがほとんどです。女性に多く、結節性硬化症では両側・多発しやすくなります
  • 診断のカギは脂肪で、超音波では白く(高エコー)、単純CTでマイナスのCT値(脂肪)を含めばAMLとほぼ診断できます。脂肪が少ないタイプ(fat-poor AML)は腎がんとの区別が難しく、MRIや生検で確認します
  • 小さいものは経過観察でよいことが多いですが、大きいもの(目安4cm以上)や動脈瘤を伴うものは出血(破裂)のリスクがあり、塞栓術などを検討します
  • 症状は多くの場合ありません。破裂すると急なわき腹・背中の痛み、血尿、血圧低下を起こすことがあり、CTで腎臓のまわりの出血として見つかります

※急なわき腹の痛みや血尿があるときは、すぐに受診してください。

腎血管筋脂肪腫(AML:renal angiomyolipoma)とは?

  • 良性充実性腫瘍で最も多い。
  • 脂肪と平滑筋成分、血管の3つで構成される良性腫瘍(かつては過誤腫と考えられていたが、現在は血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)の一つとされる)で、女性に多い。
  • 近年ではPEComaと呼ばれることもある。
  • 腹痛、血尿、腫瘤触知などの症状を呈することがあるが多くは画像で偶然見つかることが多い。
  • ほとんどは単発。
  • 腫瘍周囲の偽被膜は通常認められない。
  • 静脈進展を呈するものもある。
  • 無症状で見つかった場合、以前は4cm以上のサイズでは腫瘍内血管が破綻して、出血のリスクがあり、治療の対象とされていたが、近年の大規模な経過観察研究では、無治療のAMLの92%以上は増大せず、4cm超と4cm以下で増大速度に差がなかったため、無症状であれば大きさだけで早期治療を行う必要はなく、まず経過観察(active surveillance)を選択できるとされている。
  • 結節性硬化症では高い頻度で認め、成人になるまでに多くの患者にみられる(Trnka 2021)。この場合は両側や多発が多い。また有意に発育速度が速く、出血のリスクも高い。そのため、塞栓術などの積極的治療の対象となる。
  • 結節性硬化症以外では、思春期以前に発見されることはきわめて稀、大きなAMLは女性に多い、妊娠中に増大することあり、これらよりホルモンとの関係が示唆されている。
  • 稀に、リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)を合併することあり。
  • 脂肪の占める割合が少なく、筋成分が主体を占めているものをAML with minimal fatと称し、AML全体の中では少数である。
  • またAMLはbeak signを伴わない突出をする傾向があり、腎癌との鑑別が困難な場合あり、その場合腎生検が推奨される。
  • 免疫染色により腎細胞癌(cytokeratin陽性、HMB45陰性)と血管筋脂肪腫(cytokeratin陰性、HMB45陽性)は鑑別可能。
  • 脂肪の多いところのみを病理医が見たときに、脂肪肉腫と診断してくることがある。画像でAMLが疑われる旨を病理医に強く推すことが大事。

腎血管筋脂肪腫の症状と破裂(Wunderlich症候群)

  • 多くは無症状で、検診や他の病気の検査で偶然見つかる。経過観察中のAML447例の検討では91%が無症状で、80%が女性であった(Bhatt 2016)。
  • 最も注意すべきは破裂による出血で、外傷なしに腎被膜下〜腎周囲腔に出血するものをWunderlich症候群と呼ぶ。原因は腎腫瘍が多い(Ramirez-Limon 2022)。
  • 破裂の予測には大きさだけでなく腫瘍内の動脈瘤が重要とされる。塞栓術を行ったAML27病変の検討では、破裂例の80%、非破裂例の27%に腫瘍内動脈瘤があり、破裂例と非破裂例で大きさに有意差はなかった(McQueen 2023)。

血管筋脂肪腫の画像所見

▶エコー所見:

  • 脂肪を反映して高エコーの腫瘤として認める。
  • ただし高エコーはAMLに特有ではない。石灰化のない高エコー腎病変220病変をまとめた検討では、高エコーはAMLに対して感度0.99・特異度0.43で、腎細胞癌の57.4%も腎実質より高エコーであった(Farrelly 2008)。高エコー腫瘤を見つけたら、CT(またはMRI)で脂肪の有無を確認するのが基本となる。

▶CT所見:

  • 単純CTで脂肪に相当するマイナスのCT値を呈する。
症例 50歳代女性 検診で異常を指摘された。

renal aml CT findings1

腹部単純CTの横断像です。

右腎下極に内部に脂肪を含有する(CT値が最小で-74HUで平均-23HU)1.5cm大の結節あり。

AMLを疑う所見です。

renal aml CT findings2

造影CTでも脂肪の含有を疑う低吸収域を認めています。

renal aml mri findings1

MRIのT1強調像のin phase及びopposed phaseです。

in phase→opposed phaseにかけて、内部の信号低下を認めており、脂肪の含有を示唆する所見です。

CTでもMRIでも脂肪の含有を認めています。

AMLを疑う所見です。

▶MRI所見:

  • MRIではT1強調像、T2強調像ともに高信号を呈する。また、in-out phaseでの低下、脂肪抑制での低信号化にて診断される。

※ただし、in-out phaseにて信号低下をしないものもあることに注意。水と混在していないと低信号化しない。(皮下脂肪を見れば明らか)

※また、脂肪を含有する腎細胞癌(淡明細胞型腎癌)もあるので注意。

▶動画で学ぶ腎血管筋脂肪腫の破裂症例

脂肪の乏しいAML(AML with minimal fat)とは?

  • AMLの中では少数。
  • 脂肪成分が少なくなると、エコーで実質と等エコー。
  • 脂肪が乏しく平滑筋成分が主体のもの(fat-poor AML)や、類上皮細胞が主体の類上皮型AML(epithelioid AML)があり、後者には悪性の経過をとる例が存在する。
  • 単純CTでは実質より高吸収(平滑筋主体なので筋と同じくらいの濃度。)
  • MRIのT2強調像で低信号を呈する。
  • 筋成分のみで占められるので、比較的均一な像を呈し、腎被膜からはbeak signを伴わない突出をする傾向がある。このような血管筋脂肪腫は乳頭状腎癌などと鑑別が困難である。
  • 生検を行い不要な手術を避けるのが望ましい。AMLを脂肪の量でfat-rich・fat-poor・fat-invisibleに分ける考え方があり、CT・MRIで脂肪が見えないfat-invisible AMLは生検の対象、fat-poor AMLは腎細胞癌との鑑別のためさらに精査して生検の要否を決めるとされる。脂肪の検出には、ROIの大きさや形を調整して腫瘤全体を丁寧に評価することが大切である。

単純CTで高吸収を呈する腎腫瘤の鑑別診断

  • 乳頭状腎細胞癌
  • 脂肪成分の少ないAML
  • complicated cyst
  • metanephric adenoma(後腎性腺腫)
  • 平滑筋腫
症例 30歳代女性 左腎腫瘤を指摘された。

leiomyoma of the left kidney CT and MRI findings

左腎より突出する腫瘤あり。

単純CTで高吸収、造影にてわずかに染まりあり。

MRIのT2強調像では筋肉と同程度の低信号を示しています。

腹腔鏡下腎部分切除術が施行され、病理診断の結果、平滑筋腫(leiomyoma of the left kidney )と診断されました。

脂肪成分は含まれておらず、AMLは否定されました。

脂肪を含む腎腫瘍はすべてAML?

  • 淡明細胞癌などRCCにおいても脂肪を含有するものがある。
  • 脂肪のみで、AMLと診断してはいけない。
脂肪を有する腎腫瘍で悪性を疑うとき
  • 腫瘍内の骨様の石灰化の存在
  • 腎周囲や腎洞脂肪に浸潤する大きく辺縁不整な腫瘍
  • 小脂肪巣を伴う壊死性腫瘍
  • 被膜の存在
  • リンパ節腫大や静脈浸潤の存在

腎血管筋脂肪腫でよくある疑問(Q&A)

Q. 4cmを超えたらすぐに治療が必要ですか?
A. 無症状のAMLを経過観察した研究では、92%以上が増大せず、4cm以下と4cm超で増大速度に差がありませんでした(Bhatt 2016)。症状・増大の速さ・腫瘍内の動脈瘤などをあわせて治療を検討します。

Q. 結節性硬化症のAMLは何が違いますか?
A. 両側・多発しやすく、大きくなりやすいのが特徴です。経過観察の研究では、結節性硬化症のAMLの大きさの中央値は5.5cmで、全体の中央値1cmより有意に大きいものでした(Bhatt 2016)。定期的な画像での経過観察が行われます(Trnka 2021)。

参考&引用改変)
・知っておきたい泌尿器のCT・MRI (『画像診断』別冊KEY BOOKシリーズ) 山下 康行先生

参考文献

  1. Jinzaki M, Silverman SG, Akita H, et al. Renal angiomyolipoma: a radiological classification and update on recent developments in diagnosis and management. Abdom Imaging. 2014;39(3):588-604. PubMed
  2. Hosokawa Y, Kinouchi T, Sawai Y, et al. Renal angiomyolipoma with minimal fat. Int J Clin Oncol. 2002;7(2):120-123. PubMed
  3. Park BK. Renal Angiomyolipoma: Radiologic Classification and Imaging Features According to the Amount of Fat. AJR Am J Roentgenol. 2017;209(4):826-835. PubMed
  4. Bhatt JR, Richard PO, Kim NS, et al. Natural History of Renal Angiomyolipoma (AML): Most Patients with Large AMLs >4cm Can Be Offered Active Surveillance as an Initial Management Strategy. Eur Urol. 2016;70(1):85-90. PubMed
  5. Farrelly C, Delaney H, McDermott R, et al. Do all non-calcified echogenic renal lesions found on ultrasound need further evaluation with CT? Abdom Imaging. 2008;33(1):44-47. PubMed
  6. McQueen S, Combes A, Benz D. Renal angiomyolipoma: Beyond size criteria for predicting rupture. J Med Imaging Radiat Oncol. 2023;67(6):619-624. PubMed
  7. Ramirez-Limon DA, Gonzaga-Carlos N, Angulo-Lozano JC, et al. Wunderlich Syndrome Associated With Angiomyolipomas. Cureus. 2022;14(4):e23861. PubMed
  8. Trnka P, Kennedy SE. Renal tumors in tuberous sclerosis complex. Pediatr Nephrol. 2021;36(6):1427-1438. PubMed

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