【新腹部救急】症例16

【症例】60歳代男性
【主訴】心窩部痛
【現病歴】半月前くらいから心窩部痛があり、この半月で3kgの体重減少あり。本日朝、上腹部の痛みの増強あり受診。
【既往歴】高血圧症
【身体所見】意識清明、BT 37.0℃、BP 156/73mmHg、PR 99bpm、SpO2 99%、腹部:全体的に膨張気味、腫瘤触知せず、全体的に軽度の圧痛あり、腸雑音減弱あり。CVA tenderness(-)、肝脾腫(-)
【データ】WBC 9500、CRP 1.10

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腸管の拡張像および液貯留、ニボー像を認めています。

腸閉塞を疑う所見です。

よく見ると拡張所見は、小腸だけでなく、上行結腸や下行結腸にも認めています。

このように結腸にも拡張所見を認めている場合は、結腸〜直腸に閉塞機転があることが示唆されます。

より肛門側である下行結腸をさらに肛門側に追っていくと、下行結腸に閉塞機転があることがわかります。

同部では結腸の3層構造は消失し、不整な壁肥厚・造影効果を認めていることがわかります。

このような所見を見たときに考えなければならないのが、結腸癌です。

つまり、下行結腸癌が閉塞機転となり大腸閉塞および小腸閉塞を来しているということです。

その様子は冠状断像でより明瞭で、下行結腸に腫瘍を疑う閉塞機転があり、その口側の結腸及び小腸が拡張していることが分かります。

 

診断:下行結腸癌による大腸閉塞

 

※下行結腸に憩室があってちょっとわかりにくいですが、壁肥厚は漿膜側に不整であり、漿膜外浸潤(SE)の可能性を示唆する所見です。

※その後イレウス管留置され、後日ステント留置がなされました。症状軽減したところで、外科にて開腹左半結腸切除術+人工肛門造設術が施行されました。最終的に病理学的にも漿膜下層への浸潤(SE)を認めていました。

関連:

その他所見:

  • 肝嚢胞あり。peribiliary cystの疑い。
  • 副脾あり。
  • 少量腹水あり。
【新腹部救急】症例16の動画解説

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