【新腹部救急】症例11

【症例】60歳代女性
【主訴】腹痛、下血
【現病歴】2日前に近医でバリウム検査を受けた。バリウムはある程度便として出たが、今朝1時間ほど便を気張ったときから腹痛が出現。便に血が付着していた。近医受診し、当院転院となる。
【既往歴】高血圧症、子宮筋腫開腹手術
【身体所見】腹部:やや硬い、下腹部中心に圧痛あり、筋性防御あり。下腹部正中に手術痕あり。
【データ】WBC 4200、CRP 6.41

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肝表などに腹腔内遊離ガス(free air)を認めていることにまず気づきましょう。

airをより見やすくした条件で見てみましょう。

肝表などの上腹部や下腹部にも腹腔内遊離ガス(free air)を認めていることが分かります。

消化管穿孔が疑われます。

今回はどこからの穿孔でしょうか?

バリウム検査を受けたとのことで、結腸内のバリウムが目立ちます。

下腹部正中のバリウム+便が最も目立つ部位では、腸管の壁肥厚があり、周囲に脂肪織濃度上昇を認めています。

結腸の連続性を追ってみると、S状結腸であり、このバリウム+便は一部腸管外に存在することが分かります。

このように便が腸管外に出ている様子をdirty mass signと言います。

S状結腸からの穿孔が疑われます。

ダグラス窩には腹水を認めており、腹膜の肥厚および造影効果増強を認めています。

また腸間膜や大網の脂肪織濃度上昇を認めており、これらは腹膜炎を示唆する所見です。

 

診断:S状結腸穿孔および腹膜炎

 

※緊急手術が施行されました。
※特発性S状結腸穿孔の場合、S状結腸そのものの壁肥厚が目立たないことがしばしばありますが、今回のケースではバリウムが通過障害を起こしたためか、壁肥厚が目立ちます。

なおバリウムは上行結腸や横行結腸、直腸にも残存していることがわかります。

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その他所見:右腎嚢胞あり。

【新腹部救急】症例11の動画解説

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