【胸部】TIPS症例43
【症例】50歳代女性
【主訴】特になし
【現病歴】職場健診でp53抗体上昇を指摘され、精査目的で受診。スクリーニングCTが施行された。
【既往歴】気管支喘息
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異常所見は?その後1ヶ月後にCTが再検されましたが、著変ありませんでした。今後の方針は?
ぼ〜っとしてると見落としそうですが、左上葉にすりガラス結節を認めています。
中心部位の濃度がやや高く充実部位があるかもしれません。
薄層スライス(thin slice)のCTで確認する必要があります。
確認すると中心部にやはり充実部位を認めているすりガラス影であり、いわゆる
part-solid noduleやmixed GGNと呼ばれるタイプ
の肺結節であることがわかります。
サイズと計測してみましょう。
長径が8.6mm、充実部位が2mm大です。
「低線量CTによる肺がん検診:肺結節の判定と経過観察 第5版 ©日本CT検診学会」によるとこのタイプはすりガラス部位が6mmを超えるものは、3ヶ月後(以内)の薄層スライス(thin slice)による再検が推奨されています。
今回1ヶ月後で著変がありませんでした。
この場合は、初回から(3),12,24ヶ月後(およびその後も)にCTでのフォローが推奨されています。
※ただし今回は単なる検診ではなくp53高値の精査ですので、もっと短い期間でフォローされると考えられます。
診断:左上葉にpart-solid nodule(mixed type GGN)あり。長径6mmを超えており1ヶ月後の再検で著変を認めず、引き続きフォローが必要。
※肺癌取扱い規約の第8版では、
部分的に充実部位を示し、充実成分径≦0.5cmかつ病変全体径≦3cmのものは、微小浸潤性腺癌でT分類はT1miと定義されており今回はこれに相当します。
※2017年に改訂されたガイドライン上はフォローが推奨されていますが、手術が施行されました。(このガイドラインも以前のガイドラインではこのケースは手術や生検が推奨されていました。また施設や医師によって経過観察方法や治療方針の違いもあるかと考えられます。)
病理診断
Adenocarcinoma in situ(上皮内腺癌)
φ8mmの領域で肺胞上皮細胞の増殖が見られる。細胞異型は軽度であるが、細胞密度が周囲の数倍に増加しており、一様な病変であり、境界明瞭であり、腫瘍性病変と思われる。肺胞は破壊されていない。
ということで、上皮内腺癌(AIS)と診断されました。
最終診断:左上葉に上皮内腺癌(AIS)
肺腺癌の浸潤度による分類は以下の通りです。
関連:
【胸部】TIPS症例43の動画解説
CTで肺結節を見つけたときの取り扱い方法最新版(第5版)
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
古いバージョンの「肺結節の判定と経過観察」を用いていました。常に、最新版のチェックが必要だと反省しました。
アウトプットありがとうございます。
>古いバージョンの「肺結節の判定と経過観察」を用いていました。
そうなんです(^_^;)
私も2版で見ていましたが、時代は5版でした。
月刊画像診断や臨床画像などの雑誌も常に新しいものをチェックしないとですね。
>24ヶ月以降の継続的なフォローアップが必要と思われました。
そうですね。
おそらく多くの人が持っているであろう
・充実結節→悪性
・GGN→良性
という思い込みがもしあればそれは捨てないといけないということですね。
もう1点、今回のGGNは特に、肺動脈(気管支)が関与しており、24ヶ月以降の継続的なフォローアップが必要と思われました。
肺結節のフォローの判断のために、血管や気管支など僅かな鑑別のヒントも知っておかないと判断できなくて難しいですね。その都度ガイドラインをチェックする癖をつけます。
アウトプットありがとうございます。
>その都度ガイドラインをチェックする癖をつけます。
そうですね。覚えるのも大変なので、都度チェックで良いと思います。
こんばんは。
毎日お忙しいところご解説ありがとうございます。
充実部分を血管の断面ととらえて、pure ground glass noduleとしてしまいました…。
肺癌診療は日進月歩なのでとても大変そうだなぁといつも思います。。
アウトプットありがとうございます。
>充実部分を血管の断面ととらえて、pure ground glass noduleとしてしまいました…。
血管の場合は前後のスライスと連続性を確認したいところですね。
>肺癌診療は日進月歩なのでとても大変そうだなぁといつも思います。
肺癌に限らずですが、ガイドラインがコロコロ変わるのやめて欲しいですね・・・(^_^;)
多くの知見からこのような基準ができたのですね。研究成果を得られることはありがたいことです。経過観察についてしっかりと言ってあげられるのはいいですね。
アウトプットありがとうございます。
>経過観察についてしっかりと言ってあげられるのはいいですね。
そうですね。基準があると次回何ヶ月後フォローとか、手術が推奨されていると説明できるのでよいですね。
基準が変わることがあるので注意が必要ですが。