先に結論:すりガラス結節と肺腺癌の分類
| CT所見(3cm以下) | 考える病理 |
|---|---|
| 純粋なすりガラス結節(充実部なし) | AAH(異型腺腫様過形成)・AIS(上皮内腺癌)=前浸潤性病変 |
| すりガラス結節+5mm以下の充実部 | MIA(微少浸潤性腺癌) |
| 充実部が5mmを超える | 浸潤性腺癌 |
AIS・MIAは完全に切除すればほぼ100%治るとされます。旧称の「BAC(細気管支肺胞上皮癌)」は使わず、肺炎のように広がるタイプは浸潤性粘液性腺癌と呼びます。経過観察の間隔は肺結節のガイドラインに従います。
すりガラス結節を見たときのCT所見の記載の仕方、新しい肺腺癌の分類の要点、BACとは言わない
まず新しい肺腺癌の分類の要点です。
▶3cm以下のすりガラス影をみたら、
▶浸潤部位が5mmを超えれば浸潤癌。(浸潤性腺癌では亜型の中で最も優勢なもので表現する。)
▶もうBACとは言わない。pneumonic patternの旧BACは浸潤性粘液産生性腺癌(invasive mucinous adenocarcinoma)という。
そして、実際にCTを読影するときに、画像所見と、新分類および野口分類との対応表が以下です。結局画像を見て表現しないといけないので、この表が非常に大事です。
- つまり、3cm以下の純粋なすりガラス結節(pure GGN)があれば、「AAHやAISが疑われる」と記載すればよい。
- 充実部位を認めるけども5mm以下で、かつ3cm以下のすりガラス影ならば、「MIAが疑われる」と記載すればよい。なお、AISとMIAは完全切除すれば疾患特異的生存率がそれぞれ100%、ほぼ100%とされ、部分充実型結節のT因子はCTで測った充実部の大きさで評価することが提案されている。2021年のWHO分類でも、置換性(lepidic)成分を含む非粘液性腺癌のT因子は浸潤部の大きさだけで決めるとされている(Nicholson 2022)。
AAH・AIS・MIAとは:違いの一覧
| 病変 | 病理 | 典型的なCT |
|---|---|---|
| AAH(異型腺腫様過形成) | 軽度〜中等度の異型をもつ細胞が肺胞壁に沿って限局性に増える、小さな前浸潤性病変 | 小さく淡い純粋なすりガラス結節 |
| AIS(上皮内腺癌) | 3cm以下で、純粋な置換性(lepidic)増殖のみ。浸潤なし | 純粋なすりガラス結節(充実部なし) |
| MIA(微少浸潤性腺癌) | 3cm以下で置換性増殖が優位、浸潤部は5mm以下 | すりガラス結節に5mm以下の充実部 |
| 浸潤性腺癌 | 浸潤部が5mmを超える。最も多い亜型で表現する | 充実部が5mmを超える部分充実結節など |
AIS・MIAは切除すれば疾患特異的生存率がそれぞれ100%・ほぼ100%とされ、通常は非粘液性です(Travis 2011)。AAHとAISは、浸潤性腺癌の前段階にあたる前浸潤性病変として扱われます。
純粋なすりガラス結節(pure GGO/GGN)はどのくらい変化する?
日本の多施設前向き研究では、すりガラス主体の結節(SSN)1229個を平均4.3年追跡しました。純粋なすりガラス結節1046個のうち、濃くなったものが13個(1.2%)、充実部が出てきたものが56個(5.4%)で、充実部が出てくるまでの期間は平均3.8年でした。浸潤性腺癌と診断されたのは部分充実結節だけで、全体の1%でした(Kakinuma 2016)。多くはゆっくり経過するため、すぐに手術せず経過をみることが多い病変です。
さらに、これらの肺結節に対して、どのようにアプローチするのか、つまり、
- フォローでよいのか?よいならその期間は?
- 生検や手術をすすめるのか?
については、CTで見つかった肺結節のフォローはどうしたらいい?を参照ください。なお、Fleischner Society 2017では、6mm未満の純粋なすりガラス結節はルーチンの経過観察は不要、6mm以上は6〜12か月後のCTで残存を確認し、その後5年間は2年ごとにCTで経過をみるとされている。6mm以上の部分充実型結節は3〜6か月後のCTで残存を確認し、充実部が6mm未満で変化がなければ5年間毎年CTを行う(MacMahon 2017)。
これで、肺結節へのアプローチはとりあえずできるはずです。
すりガラス結節=腺癌とは限らない:扁平上皮癌のすりガラス結節
ゆっくり大きくなるすりガラス結節の多くは腺癌系の病変ですが、末梢型の扁平上皮癌がすりガラス結節として見えることもまれにあります。末梢型扁平上皮癌は通常は充実性結節として見えますが、塵肺のある77歳男性で、徐々に増大するすりガラス結節が腺癌を疑われて切除され、病理では肺胞腔に沿って広がる扁平上皮癌であった報告があります。著者らは、塵肺のように扁平上皮癌のリスクが高い人では、末梢のすりガラス結節の鑑別に扁平上皮癌を含めるべきとしています(Terada 2017)。
CTでの早期の経過から扁平上皮癌の前駆パターンを分けた検討でも、すりガラス影を示す「部分充実結節パターン」の群があり、病理では腫瘍が肺胞壁に沿って浸潤し、この群の7例中2例では腫瘍の辺縁に置換性(lepidic)増殖がみられました(Adachi 2026)。
すりガラス結節は上の分類(AAH・AIS・MIA・浸潤性腺癌)にあてはめて記載するのが基本ですが、喫煙歴や塵肺など扁平上皮癌の背景がある人では、組織型を決めつけずに経過と充実部の変化を追うことが大切です。
すりガラス結節でよくある疑問(Q&A)
Q. すりガラス結節はすべて肺がんですか?
A. いいえ。炎症などで一時的に出てすぐ消えるものもあり、残るものでもAAHのような前浸潤性病変が含まれます。前向き研究でも、浸潤性腺癌と診断されたのは全体の1%でした(Kakinuma 2016)。
Q. AAHとAISはCTで区別できますか?
A. どちらも純粋なすりガラス結節として見えるため、CTだけで区別するのは難しく、「AAHやAISが疑われる」と記載します。経過で大きくなる・充実部が出てくる場合は、MIAや浸潤性腺癌への進行を考えます。
健診などですりガラス結節を指摘されたときは、自己判断せず、指示された時期に経過観察のCTを受けてください。
参考文献
- Travis WD, Brambilla E, Noguchi M, et al. International Association for the Study of Lung Cancer/American Thoracic Society/European Respiratory Society international multidisciplinary classification of lung adenocarcinoma. J Thorac Oncol. 2011;6(2):244-85. PubMed
- MacMahon H, Naidich DP, Goo JM, et al. Guidelines for Management of Incidental Pulmonary Nodules Detected on CT Images: From the Fleischner Society 2017. Radiology. 2017;284(1):228-243. PubMed
- Travis WD, Brambilla E, Nicholson AG, et al. The 2015 World Health Organization Classification of Lung Tumors: Impact of Genetic, Clinical and Radiologic Advances Since the 2004 Classification. J Thorac Oncol. 2015;10(9):1243-1260. PubMed
- Terada Y, Sato M, Abe H, et al. Squamous cell carcinoma of the lung showing a ground glass nodule on high-resolution computed tomography associated with pneumoconiosis: a case report. Surg Case Rep. 2017;3(1):107. PubMed
- Adachi M, Kashima J, Sugawara H, et al. Histological Features of Lung Squamous Cell Carcinoma According to Radiological Early-Phase Progression Patterns. Pathol Int. 2026;76(5):e70124. PubMed
- Kakinuma R, Noguchi M, Ashizawa K, et al. Natural History of Pulmonary Subsolid Nodules: A Prospective Multicenter Study. J Thorac Oncol. 2016;11(7):1012-28. PubMed
- Nicholson AG, Tsao MS, Beasley MB, et al. The 2021 WHO Classification of Lung Tumors: Impact of Advances Since 2015. J Thorac Oncol. 2022;17(3):362-387. PubMed
あわせて読みたい:微小髄膜皮様結節(MPMN)の胸部CT|すりガラス小結節・びまん性の型と転移・AAH/AISとの区別、孤立性肺毛細血管腫(SPCH)のCT|すりガラス〜充実結節の見え方と肺腺癌との鑑別
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →



AAH、AIS、MIA(minimally invasive adenocarcinoma)、LPA(lepidic predominant adenocarcinoma)、とはいずれも病理所見での浸潤性を示す用語であり、CT画像ではそんなものが見えるわけないですから当然乖離があります。このCT所見なら、この程度だろうというわけで・・・要するに、画像診断における基本的な概念は野口A/B/Cの頃と何も変わっていないのですが。しかしこの頃は“その言葉”が使われているのには間違いありません。
コメントありがとうございます。
BACは現行WHO/IASLC分類では主として AIS・MIA・lepidic predominant adenocarcinoma に再編され、用語体系が更新されています。とはいえ、CTは浸潤の量を直接定量できないため、おっしゃるように野口A/B/C以来の枠組みに基づき、C/T比や充実成分径、スピクラ・胸膜陥入などの形態学的指標を統合して浸潤リスクを推定し、それを現行用語へ写像して報告する運用は不変です。