胸腺嚢胞(thymic cyst)
- 胸腺は発生過程で尾側方向へ移動し、最終的に前縦隔に位置する。
- 胸腺嚢胞は、この過程で遺残した組織から発生し、下頸部から縦隔上部のいずれの部位にも生じる。
- このような先天性のものが多いが、後天性のものもある。
- 後天性のものは悪性リンパ腫などの放射線治療後や、開胸術後、Sjogren症候群やリンパ増殖性疾患、HIV感染症などでに生じるとされる。
- 単房性あるいは多房性とさまざま。先天性は単房性、後天性は多房性であることが多い。
- 多房性は炎症変化に続発すると言われる。通常は無症状で男性に多い。
- 内部は一般に漿液性。先天性の場合、ややCT値の高い軽度出血性の液体をその中に入れる。壁は薄いものが多いが、厚いものもある。
- 鑑別は、心膜嚢胞、嚢胞変性の強い胸腺腫、成熟嚢胞性奇形腫など。
胸腺嚢胞の画像所見
- CTでは低吸収。時に出血や感染を合併し、比較的高吸収を呈することもある。
- 稀に嚢胞壁に沿って石灰化を認めることあり。
- MRIでは、T1WI低信号、T2WI高信号。出血や感染を合併した場合はともに高信号を示すこともある。この場合、充実性病変と鑑別が困難な場合あり。
- 造影効果なし。
症例 60歳代女性
前縦隔に15mm大の嚢胞性病変を認めています。
造影CTにて造影効果は明らかではありません。
手術が施行され、胸腺嚢胞と診断されました。
症例 50歳代男性
前縦隔におむすび型の嚢胞性病変を認めています。
手術が施行され、胸腺嚢胞と診断されました。
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