胸腺上皮性腫瘍(thymic epithelial tumor)とは?
胸腺上皮性腫瘍は大きく、胸腺腫と胸腺癌に分けられる。
- 前縦隔で最多。中年以上(55~65歳)で多い。
- 重症筋無力症、赤芽球癆を代表とした自己免疫疾患の合併が高頻度。
- 病理学的特徴にて、WHO分類にて、
- 胸腺腫(thymoma)・・・TypeA,AB,B1,B2,B3
- 胸腺癌(thymic carcinoma)
の6種類に分類されている。5生率はA,AB,B1は90%以上、B2,B3は70%、癌は50%。
※このType AやBは、腫瘍上皮細胞の形態やリンパ球の占める割合により細分類される(WHO分類)。
胸腺腫(thymoma)とは?
- 胸腺腫は縦隔腫瘍の15~30%を占め、最多。約90%は前縦隔に発生する。
- 好発年齢は50歳台の中高年で、小児や20歳以下の若年者には稀であり、性差はない。
- WHO病理組織分類では、腫瘍上皮細胞の形態から、type Aと type Bに分類され、type Bは異型性とリンパ球の多寡によりB1、B2、B3の3型に分類され、type Aとtype Bの両方の病理像を有するものはtype ABとされた。type A、AB、B1は低リスク胸腺腫、type B2、B3は高リスク胸腺腫であり、悪性度と相関している。
- ときに自然退縮することがある。自然退縮することがある腫瘍としては、胸腺癌、肝細胞癌、腎細胞癌、悪性リンパ腫で報告あり。自然退縮の機序として、腫瘍内血管の血栓形成による血流障害や腫瘍内出血・線維化・壊死が考えられている。
胸腺腫(thymoma)の画像所見
- 分葉状腫瘤で内部の線維性隔壁構造が特徴的。
- 単純CTでCT値が30-40HU程度の軟部組織濃度で、嚢胞変性や壊死、石灰化を伴うことがある。
- 造影CTでは単純から40HU以上の増強効果を認める。
- 低リスク胸腺腫では腫瘍の辺縁は平滑で、均一に造影される傾向がある。MRIで全周性に被膜が確認できることもある。
- 高リスク胸腺腫や胸腺癌では扁平~分葉状の形態を呈し、辺縁不整で、内部の造影効果も出血や壊死、線維成分を反映し不均一になってくる。被膜が不明瞭になり、周囲組織への浸潤が認められることもある。
- 胸腺癌では約40%でリンパ節転移が見られ、胸腺腫では0~8%と頻度は低いと報告されている。
- MRIでは線維性隔壁や嚢胞変性が観察しやすい。
- FDG-PETで軽度〜中等度の集積を認める。
症例 60歳代男性 スクリーニング
単純CTで前縦隔に境界明瞭な類円形腫瘤を認めています。
内部は漿液性嚢胞としては高吸収です。
手術にて、胸腺腫と診断されました。
関連記事:
参考:
画像診断 Vol.31 No.1 2011 P72-73
困ったときの胸部の画像診断 P298