
先に結論:ポリープ状子宮内膜症は悪性腫瘍に似る良性の子宮内膜症の型。T2強調像で内膜に似た高信号の腫瘤、T2低信号の縁(black rim sign)、拡散制限がない、ゆっくり強まる造影が手がかり。エストロゲンへの曝露と関係し、ホルモンの変化で大きさが変わった報告がある
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな人に多いか | 24例で23〜78歳(平均52.5歳)。通常の子宮内膜症より年齢が高い(Parker 2004) |
| できる場所 | 大腸・卵巣・子宮漿膜・子宮頸部や腟の粘膜など。多発もある(Parker 2004) |
| MRIの手がかり | T2高信号(内膜に似る)、T2低信号の縁、拡散制限がない、造影が漸増(Takeuchi 2022、Ghafoor 2020) |
| ホルモンとの関係 | エストロゲン単独療法・ホルモン補充療法・タモキシフェンとの関連(Parker 2004、Ghafoor 2020) |
| 鑑別 | 卵巣癌・腹膜播種、ミュラー管腺肉腫など(Parker 2004、Yazawa 2022) |
ポリープ状子宮内膜症とは
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の外にできる病気です。全体像は子宮内膜症まとめで解説しています。ポリープ状子宮内膜症はその中のまれな型で、内膜症の組織が子宮内膜ポリープのような形の塊をつくり、腫瘤として大きくなります。組織では、内膜症の腺と間質が混ざったポリープ状の塊で、腺は嚢胞状に拡張したり、増殖症のような形をとったりします(Parker 2004)。
24例をまとめた病理の報告では、年齢は23〜78歳(平均52.5歳)で、7人はエストロゲン単独の補充を、4人はエストロゲンと黄体ホルモンの併用療法を受けていました。症状は骨盤の腫瘤、腟のポリープ状腫瘤、大腸の閉塞が多く、手術中の所見でも腫瘍を疑われた例がありました。病変は大腸、卵巣、子宮漿膜、子宮頸部・腟の粘膜、尿管、卵管、大網、膀胱、後腹膜などにみられ、7例は複数の場所にありました。大きさは最大14cmに達しました(Parker 2004)。
通常の子宮内膜症が閉経前に多いのに対し、ポリープ状子宮内膜症は閉経前後から閉経後の女性に比較的多く、タモキシフェンやホルモン補充療法への曝露と関係すると述べられています(Ghafoor 2020)。年齢が高く、腫瘤が大きいことも、悪性腫瘍と間違われる理由の一つです。
| 項目 | 通常の子宮内膜症 | ポリープ状子宮内膜症 |
|---|---|---|
| 年齢 | 生殖年齢に多い | 閉経前後〜閉経後に比較的多い(Ghafoor 2020)。24例の平均52.5歳(Parker 2004) |
| 形 | 内膜症性嚢胞、線維化を伴う結節 | ポリープ状・多結節状の充実性腫瘤、最大14cm(Parker 2004) |
| 画像で迷う相手 | 出血性嚢胞、深部内膜症の結節 | 卵巣癌、腹膜播種、肉腫など(Yazawa 2022、Jacquot 2021) |
| ホルモンとの関係 | エストロゲン依存 | エストロゲン単独療法・補充療法・タモキシフェンとの関連の報告(Parker 2004、Ghafoor 2020) |
MRIの見え方
病理で確かめた4例のMRIの検討では、全例がT2強調像で高信号を示し、拡張した内膜腺を反映していました。腹膜の病変は低信号の縁に囲まれ、著者らはこれを内膜症による線維性の癒着を反映した「black rim sign」と呼んでいます。内膜症性嚢胞から出た2例は、壁を越えて腹膜側や筋層へ広がっていました。4例すべてに、T1強調像の高信号や磁化率強調像の信号欠損として出血の跡が見られました。拡散強調像では高信号でしたが、ADCは比較的高く(T2 shine-throughによる)、拡散制限はなく、ダイナミック造影では良性病変のようにゆっくり強まるパターンでした(Takeuchi 2022)。
ほかの報告でも、内膜に似たT2強調像の信号、T2低信号の縁、内膜と同じような造影、拡散制限がないことが、ポリープ状子宮内膜症を示唆する所見として挙げられています(Ghafoor 2020)。3例の検討では、充実部に小さな嚢胞が多数混じる型や多房性の型(いずれも拡張した腺を反映)、多分葉状・ポリープ状の形が手がかりになり、2例は手術前にMRIでポリープ状子宮内膜症と推定されていました(Yajima 2022)。
| 撮像法 | 報告された所見 | 意味 |
|---|---|---|
| T2強調像 | 内膜に似た高信号、小嚢胞の集まり、低信号の縁(black rim sign) | 拡張した内膜腺と、周囲の線維化・癒着(Takeuchi 2022) |
| T1強調像・磁化率強調像 | T1高信号の点状域、磁化率による信号欠損 | 内膜症に伴う出血(Takeuchi 2022) |
| 拡散強調像・ADC | 拡散強調像で高信号でもADCは高い | T2 shine-throughで、拡散制限ではない(Takeuchi 2022) |
| ダイナミック造影 | ゆっくり強まる造影、内膜に似た造影 | 良性病変に近いパターン(Takeuchi 2022、Ghafoor 2020) |
深部子宮内膜症との関係
ダグラス窩や直腸腟中隔にできる病変は、深部子宮内膜症の結節と隣り合っていることがあります。通常の深部内膜症はT2強調像で低信号の線維性結節として見えるのに対し、ポリープ状の病変はT2高信号の塊として見える点が違います。深部内膜症の見方は深部子宮内膜症のMRI画像診断で、腸管・臍・肺など骨盤外の病変は異所性子宮内膜症とはで解説しています。
症例 40歳代女性 ダグラス窩のポリープ状子宮内膜症

引用:Jacquot A, Gertych W, Golfier F, et al. Polypoid endometriosis of the Douglas pouch. Radiol Case Rep 2021;16(3):612-614(Fig. 1)(CC BY 4.0)
T2強調像(A・B)で、ダグラス窩にT2中間信号の不均一な腫瘤があり、嚢胞状の部分の一部は出血性です(黒矢印)。T2・T1強調像で低信号の隔壁と、腫瘤を囲む低信号の縁が見えます(白矢印)。拡散強調像とADCマップ(D)では拡散制限はなく、ADCの平均値は2.15×10−3mm2/sと高い値でした。造影後(E)は子宮筋層より弱く造影されます。手術標本(F〜H)では、子宮頸部の漿膜から出る多結節状のポリープ状腫瘤で、嚢胞状に拡張した内膜腺が多数見られました(Jacquot 2021)。
悪性腫瘍との区別
ポリープ状子宮内膜症が問題になるのは、画像でも手術中でも悪性腫瘍に見えることです。46歳の女性では、内膜症性嚢胞などの手術の11か月後に右卵巣が急に大きくなり、造影CTとMRIで右付属器・盲腸・S状結腸・大網に腫瘤を認め、PET-CTでも集積が上がったため、卵巣癌と腹膜播種が疑われました。大網と右付属器の生検でポリープ状子宮内膜症と診断され、悪性所見はありませんでした(Yazawa 2022)。
病理での主な鑑別はミュラー管腺肉腫で、ポリープ状子宮内膜症では、腺の周りの間質の細胞密度の増加、間質の異型、腺内への間質の乳頭状の突出が、2例を除いて見られなかったと報告されています(Parker 2004)。一方で、通常の内膜症と同じく、前癌病変やまれに腫瘍へ進む例もあるとされています(Parker 2004)。画像では、拡散制限がないこと、造影がゆっくり強まることが良性を示す所見として挙げられていますが(Takeuchi 2022)、PETで集積が上がった例もあり(Yazawa 2022)、画像だけで良悪性を決めることはできません。
内膜症性嚢胞の壁から出る病変では、嚢胞の悪性化による壁在結節との区別も問題になります。壁在結節の見分け方は内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)の壁在結節の鑑別にまとめています。
ホルモン療法との関係
ポリープ状子宮内膜症は女性ホルモンの影響を受けることが、いくつかの症例で示されています。60歳の閉経後の女性では、ホルモン補充療法中に偶然見つかった骨盤腫瘤が生検でポリープ状子宮内膜症と診断され、補充療法の中止後の画像で腫瘤は小さくなりました(Ghafoor 2020)。前述の46歳の女性では、GnRHアンタゴニストによる治療を4か月行ったあと、右付属器の腫瘤が著しく小さくなりました(Yazawa 2022)。
逆に、GnRHアゴニストを中止したあとに病変が急に大きくなった報告もあります。38歳の女性では、GnRHアゴニストを2回で中止した後、子宮の後ろの病変が急速に大きくなり、手術でポリープ状子宮内膜症と診断されました。著者らは、ほかにもGnRHアゴニスト中止後に発生した2例の報告があり、抑制が外れたあとの反跳と考えられていると述べています(Zhang 2023)。
妊娠を望む年代の女性では、手術中の迅速病理、子宮鏡、治療前のホルモン療法への反応が術前・術中の診断に役立ち、3例中2例が妊娠・出産に至ったと報告されています(Miyoshi 2022)。MRIでポリープ状子宮内膜症を疑えることが、過大な手術を避け、妊娠する力を残すことにつながると述べる報告もあります(Yajima 2022)。治療の選び方は、組織診断を踏まえて主治医と相談して決めるものです。
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よくある疑問(Q&A)
Q1. ポリープ状子宮内膜症は癌になりますか?
基本は良性の病変で、24例のうち経過がわかった17例では15例が病変なく生存していました(Parker 2004)。ただし、通常の子宮内膜症と同じように、前癌病変やまれに腫瘍へ進む例があるとされており(Parker 2004)、経過観察が必要です。
Q2. どんな画像所見があれば疑いますか?
T2強調像で内膜に似た高信号の多分葉状・ポリープ状の腫瘤、周りを囲むT2低信号の縁、内部の小さな出血、拡散制限がないこと、ゆっくり強まる造影がそろうと疑いやすくなります(Takeuchi 2022、Yajima 2022)。内膜症の既往やホルモン療法の情報も合わせて考えます。
Q3. 閉経後でも起こりますか?
起こります。通常の内膜症と違い、閉経前後から閉経後に比較的多いとされ、ホルモン補充療法やタモキシフェンとの関連が報告されています(Ghafoor 2020)。閉経後の骨盤腫瘤でも、ホルモン療法の有無を確認することが診断の手がかりになります。
Q4. PETで集積があれば悪性ですか?
そうとは限りません。ポリープ状子宮内膜症でPET-CTの集積が上がり、卵巣癌と腹膜播種が疑われた例があります(Yazawa 2022)。最終的な診断は組織で行います。
参考文献
- Parker RL, Dadmanesh F, Young RH, et al. Polypoid endometriosis: a clinicopathologic analysis of 24 cases and a review of the literature. Am J Surg Pathol. 2004;28(3):285-97. PubMed
- Ghafoor S, Lakhman Y, Park KJ, et al. Polypoid endometriosis: a mimic of malignancy. Abdom Radiol (NY). 2020;45(6):1776-1782. PubMed
- Takeuchi M, Matsuzaki K, Bando Y, et al. Magnetic resonance imaging characteristics of polypoid endometriosis and review of the literature. J Obstet Gynaecol Res. 2022;48(10):2583-2593. PubMed
- Yajima R, Kido A, Minamiguchi S, et al. MR findings of polypoid endometriosis of female genital organs: report of three cases. Abdom Radiol (NY). 2022;47(6):1968-1974. PubMed
- Jacquot A, Gertych W, Golfier F, et al. Polypoid endometriosis of the Douglas pouch. Radiol Case Rep. 2021;16(3):612-614. PubMed
- Yazawa H, Yazawa R, Fukuda K, et al. A case of polypoid endometriosis mimicking advanced ovarian carcinoma with rapid growth, invasion, and dissemination. Fukushima J Med Sci. 2022;68(3):183-190. PubMed
- Zhang DY, Peng C, Huang Y, et al. Rapidly growing extensive polypoid endometriosis after gonadotropin-releasing hormone agonist discontinuation: A case report. World J Clin Cases. 2023;11(27):6631-6639. PubMed
- Miyoshi S, Yamaguchi K, Chigusa Y, et al. Fertility preservation of polypoid endometriosis: Case series and literature review. J Obstet Gynaecol Res. 2022;48(2):502-509. PubMed
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