深部子宮内膜症(Deep endometriosis)
- 子宮内膜症→チョコレート嚢胞を診断して、満足していはいけない。
- 子宮・卵巣外での子宮内膜症の好発部位はDouglas窩で、しばしば子宮と直腸を介在する有痛性の硬結を形成する。深部内膜症(Deep endometriosis)と呼ばれ、血性の嚢胞を内包しない場合には見落とすことがある病態である。
- 月経困難症の原因としては重視すべき病態であり、腺肉腫をはじめとする稀な腹膜由来の悪性腫瘍の発生母地としても重要である。
- 深部子宮内膜症は、腹膜下に5mm以上内膜組織が貫通したものとされている。
- 比較的高齢者に多く見られるとされ、強い疼痛や月経困難症を来し、高い活動性を保っている病変と考えられている。
- 発生部位により仙骨子宮靭帯内膜症、直腸膣中隔内膜症、腸管子宮内膜症、膀胱子宮内膜症に大別され、仙骨子宮靭帯が最も侵されやすい。
- 組織学的には、小さな内膜症組織の集簇、その周囲に観察される豊富な線維成分を特徴とする。
- 内診や腹腔鏡では診断や病変の広がりを把握することが困難な場合があり、MRIが有用。
ダグラス窩閉鎖とは?
- ダグラス窩腹膜病変による炎症・線維化。
- R-ASRM分類高スコア→完全閉鎖+α=stageⅣ
- 腹腔鏡手術の難易度に関係するので術前診断が重要。
- 手術例の3割に認められる。
- 画像所見では、子宮後屈、後膣円蓋の挙上、腸管の子宮への牽引、子宮と腸管との間の線維性索状構造、子宮後壁漿膜面の線維化・線維性結節の5つが重要。
深部子宮内膜症の画像所見
- 典型的には、豊富な線維成分を反映してT1・T2強調像ともに低信号を呈する腫瘤として認められる。
- 内部にはT1強調像で出血を反映した小さな高信号域を認める。
- T2強調像では病変内に小さな高信号域が散見されることがあり、内膜腺や小さな空洞を反映。
症例 30歳代女性
仙骨子宮靭帯の病変
- 不整な肥厚(非対称性肥厚)を示した場合に考慮する。
- 子宮の後屈や癒着の存在、Douglas窩付近の内膜症性嚢胞の存在により、仙骨子宮靭帯の同定が困難な場合には評価が難しい。
- 肥厚した靭帯の近位部に結節様構造を有したり、子宮後壁の仙骨子宮靭帯付着部に強い癒着、線維化が示唆される場合には、積極的に考慮する必要がある。
- 仙骨子宮靭帯を正確に評価するには、3mm以下の薄い スライス厚での撮像が必要。
直腸膣中隔内膜症
- Douglas窩の腹膜病変が深部に浸潤し病巣を形成するものと、Muller管遺残組織 の化生により生じた内膜腺上皮の周囲に形成されるものに大別される。
- 後膣円蓋と直腸前壁の間に形成される境界不明瞭な結節として認められ、膣後壁への浸潤や直腸前壁の線維性肥厚を伴う。
腸管子宮内膜症
- 直腸とS状結腸が侵されることが多い。
- 症状は下血、下腹部痛が多く、月経周期に関連して反復出現するのが特徴的とされているが、その頻度は約2~3割程度と低く、診断に難渋することも多い。
- イレウスを発症することもある。粘膜面に変化が生じることは少なく、粘膜下腫瘍の形態をとるものが多い。その約8割は腫瘤を形成し、残りの2割はびまん性の腸管狭窄を引き起す。
- 注腸造影では内腔の狭窄を認めるが、粘膜面は保たれることが特徴。
- MRIではT1・T2強調像で低信号を呈する壁肥厚や腫瘤として認められ, その抽出には造影剤併用像が有用。
douglas窩閉鎖のシェーマ
Kataoka M.L et al Radiology 2005;234:815-823より引用。シェーマがすごくわかりやすいです。
膀胱子宮内膜症
- 膀胱後壁が好発部位。
- 約 2/3の症例で、膀胱や腹部、婦人科疾患での手術歴がある。
- 限局性、もしくはびまん性の壁肥厚を示し、T2強調像で、内部に点状の高信号域を含む低信号病変として認められることが多い。
腹膜病変(endometrial implants)
一次所見
①色素性病変:ブルーベリー斑 ・血性嚢胞 ・散布状黒斑 ・ヘモジデリン沈着 ・点状出血斑 ・漿膜下出血 ・卵巣チョコレート嚢胞
②非色素性病変:小水胞 ・漿液性嚢胞 ・充実性隆起
画像所見:脂肪抑制併用T1WIが必要。