肺毛細血管腫 SPCHのCTと肺腺癌との鑑別

右下葉の1cmほどの部分充実結節を、早期肺腺癌を疑って切除したら「孤立性肺毛細血管腫」でした。CTで区別できる手がかりはありますか?
孤立性肺毛細血管腫(SPCH)は、肺胞の壁の中で毛細血管が密に増える良性の病変です。すりガラス・部分充実・充実のどの形でも見え、早期の肺腺癌によく似ます。下葉の末梢に多い、充実結節でもスピキュラや胸膜陥入が乏しい、体位や時期で濃度が変わる、などが手がかりとして報告されています。数字とともに整理します。

先に結論:SPCHは若年〜中年の下葉末梢に多い、すりガラス〜充実の孤立結節。すりガラス・部分充実結節では腺癌と重なる所見が多いが、充実結節では下葉・エアブロンコグラム・スピキュラや胸膜陥入がないことが腺癌との違いとして報告されている

項目 ポイント
どんな病変か 肺胞の壁に毛細血管が密に増える良性の病変。異型はない(Hashimoto 2016)
CTの見え方 すりガラス27.3%・部分充実18.2%・充実54.5%(Wan 2026)。部分充実が多いとする報告もある(Kim 2022、Qin 2024)
好発部位 下葉の底区に多い(Qin 2024では68%)
腺癌との違い 充実結節では、下葉・エアブロンコグラムが多く、スピキュラ・胸膜陥入が少ない(Wan 2026)
造影・PET 造影CTで低吸収、PETで低集積だった報告がある(Kim 2022)

孤立性肺毛細血管腫(SPCH)とは

孤立性肺毛細血管腫(solitary pulmonary capillary hemangioma、SPCH)は、肺胞の壁(肺胞中隔)の中で、毛細血管が密に増えて拡張する良性の病変です。剖検例で最初に記載され、手術例の報告は2006年からと新しく、2016年の時点で英語で報告された手術例は9例にとどまっていました(Hashimoto 2016)。CT検診や肺癌の精査で偶然見つかる例が多く、ほとんどは症状がありません(Hashimoto 2016、Qin 2024)。

病理では、異型のない内皮細胞に裏打ちされた毛細血管が密に増え、毛細血管が近くの血管の内腔や細気管支の壁に入り込み、細気管支の内腔へポリープ状に突出することもあります(Hashimoto 2016)。CD31・CD34などの内皮マーカーが陽性です(Hashimoto 2016)。一般の病理医には見落とされやすく、手術された良性結節71個を見直した検討では、6個(8.5%)が実はSPCHでした(Hsieh 2018)。術中迅速診断でも、27例中15例は肺炎や炎症性病変と判断されていました(Qin 2024)。

原因はまだ分かっていませんが、6例中5例でPIK3CA遺伝子の変異が見つかり、血管奇形の仲間である可能性が示されています(Yeh 2025)。

患者背景

報告された患者は、肺腺癌よりやや若い傾向があります。44人の検討では年齢の中央値は44.5歳で、比べた肺腺癌の58歳より若く、63.6%が女性でした(Wan 2026)。17人の検討では平均47歳(30〜60歳)で、76%が検診のCTで見つかっていました(Kim 2022)。32例の検討では26〜70歳(中央値43歳)で、全員が無症状でした(Qin 2024)。

CTの見え方

SPCHは、すりガラス結節・部分充実結節・充実結節のいずれの形でも見えます。どの形が多いかは報告で違いがあり、施設の対象の選び方によって変わると考えられます。

報告(人数) 結節の型 大きさ・部位など
Hashimoto 2016(7人) 部分充実6、純粋すりガラス1 中央値11mm(8〜16mm)。増大はごくゆっくり
Kim 2022(17人) 部分充実88% 辺縁なめらか94%、境界不明瞭53%、エアブロンコグラム59%、血管周囲の透亮像12%
Qin 2024(32人) 部分充実21、すりガラス7、充実4 6〜18mm(平均10mm)。下葉の底区に68%
Wan 2026(44人) すりガラス27.3%、部分充実18.2%、充実54.5% 充実結節は下葉に87.5%、エアブロンコグラム75.0%

部分充実結節では、中心の充実部分のまわりに、境界のはっきりしないすりガラス影が広がる像として見えます(Kim 2022)。病理との対比では、中心部は毛細血管がより密に増えてうっ血し、周辺部は増えた毛細血管が正常の肺組織と混ざっていました(Kim 2022)。中心が濃く周辺が淡いという像は、病変の中で毛細血管の密度が違うことを反映しています。

血管・気管支に関係する所見

結節を通る肺静脈のまわりに透亮像(perivascular lucency)が見えることがあり、病理では、肺静脈が拡張してうっ血し、そのまわりでは毛細血管の増殖が比較的乏しいことが示されています(Kim 2022)。また、結節の中に、周囲の細気管支より明らかに太く、直角に曲がったり枝分かれしたりする不整な気管支の透亮像(atypical bronchus lucency)が11.3%、血管周囲の透亮像が6.8%に見られました(Wan 2026)。この気管支の像は、増えた毛細血管が細気管支の内腔へポリープ状に突出し、細気管支が不整に拡張していることに対応していました(Wan 2026)。

症例 40歳代男性・40歳代女性 孤立性肺毛細血管腫の充実結節

孤立性肺毛細血管腫 充実結節内の不整な気管支透亮像 CTと病理
引用:Wan Q, Zhou J, Guo X, et al. CT characteristics of solitary pulmonary capillary hemangioma versus lung adenocarcinoma. Cancer Imaging 2026;26(1):24(Fig. 3)(CC BY 4.0)

症例1(A、B)は40歳代男性の左下葉の充実結節で、結節の中に、周囲の細気管支より太く直角に曲がる不整な気管支の透亮像が見えます(矢印)。病理では、拡張した細気管支の内腔へ、増えた毛細血管がポリープ状に突出していました。症例2(C、D)は40歳代女性の右中葉の充実結節で、結節内に「鹿の角」のような形の不整な気管支の透亮像があり、病理で同様の毛細血管の突出が確かめられています。

肺腺癌との鑑別

SPCHが問題になるのは、早期の肺腺癌と同じように、部分充実結節やすりガラス結節として見えるためです。腺癌の疑いで切除され、病理でSPCHと分かる経過が典型的です(Hsieh 2018)。すりガラス結節の分類と腺癌の考え方はすりガラス結節(GGN)のCT所見と肺腺癌の分類、肺癌の初期像は肺がんのCT画像|初期の見え方で解説しています。

結節の型と大きさをそろえて肺腺癌352人と比べた検討では、すりガラス結節と部分充実結節では、SPCHと腺癌に共通する所見が多く、区別は難しいとされました。一方、充実結節に限ると、次のような差がありました(Wan 2026)。

充実結節のCT所見 SPCH(24結節) 肺腺癌(192結節)
下葉にある 87.5% 37%
エアブロンコグラム 75.0% 13.5%
スピキュラ 8.3% 88.0%
胸膜陥入 20.8% 68.2%

出典:Wan 2026(いずれも P<0.001)。単一施設の後ろ向きの検討で、腺癌は結節の型と大きさをそろえて選ばれています。

濃度が変わる・大きさが揺れる

SPCHでは、時期や体位で濃度や大きさが変わることがあります。17人の経過観察(平均14.8か月)では、59%は変化がなく、18%は縮小したり、大きさや濃度が増えたり減ったりしました(Kim 2022)。58歳男性の7mmの結節が、あおむけでは部分充実、うつぶせでは純粋なすりガラスに見えた報告もあり、体位による濃度の変化はSPCHを疑う手がかりになりうるとされています(Matsushita 2012)。一方で、この例は5年間で濃度がわずかに増えていたため、悪性を否定しきれず切除されました(Matsushita 2012)。

造影CT・PET

17人の検討では、全例が造影CTで胸壁の筋肉より低吸収で、PET-CTでも低集積でした(Kim 2022)。7例の報告でも、PETを行った3例でFDGの異常集積はありませんでした(Hashimoto 2016)。ただし、すりガラスを主体とする早期の腺癌もPETで集積が乏しいことが多いため、PETの低集積だけでSPCHと腺癌を区別することはできません。

症例 30歳代男性 孤立性肺毛細血管腫の部分充実結節

孤立性肺毛細血管腫 右下葉の部分充実結節 CT・造影CT・PET-CTと病理
引用:Kim MJ, Hong W, Kim TJ, et al. Solitary Pulmonary Capillary Hemangioma: CT and PET-CT Features with Clinicopathologic Correlation. Diagnostics (Basel) 2022;12(11):2618(Figure 1)(CC BY 4.0)

(A)右下葉の部分充実結節で、中心の充実部分のまわりに、境界の不明瞭なすりガラス影が広がっています(矢印)。(B)造影CTでは、胸壁の筋肉より低吸収です。(C)PET-CTでは低集積(SUVmax 1.7)でした。(D、E)病理では、中心部に毛細血管が厚く密に増えて吻合し、周辺部では増えた毛細血管が正常の肺組織と混ざっています。

ラジオミクスの試み

CT画像から多数の数値を取り出して解析するラジオミクスで、SPCH 13人と置換性増殖優位の腺癌49人を区別する試みでは、AUC 0.954でした(Wang 2022)。症例数が少ない段階の研究で、日常の読影の基準にはなっていません。

経過観察と切除の考え方

SPCHは良性で、7例の報告では増大がごくゆっくりで、SPCHで亡くなった患者はいませんでした(Hashimoto 2016)。ただし、術前にCTだけでSPCHと診断できる基準はなく、腺癌を否定できない結節は、一般の肺結節と同じ考え方で経過観察や切除を検討します。偶然見つかった肺結節の経過観察の間隔はFleischnerガイドライン2017とは?にまとめています。下葉末梢の結節で、濃度や大きさが揺れる、エアブロンコグラムがある、スピキュラや胸膜陥入がない、といった所見がそろうときは、SPCHを鑑別に挙げて病理医と情報を共有しておくとよいでしょう。術中迅速診断では、SPCHが肺炎や炎症性病変と判断された例が多かったためです(Qin 2024)。治療方針は主治医と相談して決めます。

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よくある疑問(Q&A)

Q. SPCHはがんになりますか?
A. 良性の病変と考えられています。7例の報告では、増大はごくゆっくりで、SPCHで亡くなった患者はいませんでした(Hashimoto 2016)。

Q. 充実結節ならSPCHと腺癌は区別できますか?
A. 充実結節では、下葉・エアブロンコグラム・スピキュラや胸膜陥入がないことがSPCHに多いと報告されています(Wan 2026)。ただし傾向の差であり、1つの所見で診断が決まるわけではありません。

Q. 結節が小さくなったら、SPCHと考えてよいですか?
A. SPCHでは縮小や大きさ・濃度の揺れが18%に見られました(Kim 2022)。ただし炎症性の結節なども小さくなるため、経過だけでSPCHとは決められません。

Q. 病理でもSPCHは見落とされますか?
A. はい。手術された良性結節を見直した検討で、8.5%が実はSPCHでした(Hsieh 2018)。術中迅速診断では肺炎や炎症と判断されることもあります(Qin 2024)。気になる所見を指摘された方は、担当の医療機関で相談してください。

参考文献

  1. Hashimoto H, Kurata A, Fujiwara M, et al. Solitary Pulmonary Capillary Hemangioma of Adult Cases: Clinicopathologic Characteristics as an Unrecognized Entity. Am J Surg Pathol. 2016;40(10):1380-9. PubMed
  2. Hsieh MS, Lee YH, Lin MW, et al. Solitary pulmonary capillary hemangioma: An under-recognized pulmonary lesion mimicking early lung cancer on computed tomography images. Lung Cancer. 2018;124:227-232. PubMed
  3. Kim MJ, Hong W, Kim TJ, et al. Solitary Pulmonary Capillary Hemangioma: CT and PET-CT Features with Clinicopathologic Correlation. Diagnostics (Basel). 2022;12(11):2618. PubMed
  4. Wan Q, Zhou J, Guo X, et al. CT characteristics of solitary pulmonary capillary hemangioma versus lung adenocarcinoma. Cancer Imaging. 2026;26(1):24. PubMed
  5. Qin J, Ng CS, Chen F, et al. Solitary pulmonary capillary hemangioma – An underrecognized rare tumor. Report of 32 new cases with literature review. Pathol Res Pract. 2024;260:155372. PubMed
  6. Matsushita M, Kawakami S, Matsushita T, et al. Changes in CT density of solitary capillary hemangioma of the lung upon varying patient position. Jpn J Radiol. 2012;30(9):772-6. PubMed
  7. Wang HJ, Lin MW, Chen YC, et al. A radiomics model can distinguish solitary pulmonary capillary haemangioma from lung adenocarcinoma. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2022;34(3):369-377. PubMed
  8. Yeh YC, Chu PY, Lin CI, et al. Frequent PIK3CA and GNAQ mutations in solitary pulmonary capillary haemangioma and pulmonary cavernous haemangioma: genetic link to vascular malformations. Pathology. 2025;57(5):585-591. PubMed

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