家族性地中海熱 繰り返す発熱と腹痛 CTの腹膜炎所見

高い熱と激しい腹痛が、何度も繰り返します。家族性地中海熱という病気かもしれないと言われました。CTで何がわかるのですか?
家族性地中海熱(FMF)は、発熱と、お腹や胸の膜の炎症(腹膜炎・胸膜炎)が繰り返す、生まれつきの体質による病気です。発作のときのCTでは、腹水や腸間膜の変化がみられることがありますが、虫垂炎などと見分けにくく、診断は症状の経過と遺伝子検査で決めます。画像でわかることと、わからないことを整理します。

先に結論:FMFは「繰り返す発熱+腹膜炎・胸膜炎」の病気。発作時のCTは特異的ではなく、画像の役割は虫垂炎などの別の病気の除外と、腸間膜などの変化の確認

項目 ポイント
どんな病気か 自己炎症性疾患(自分の免疫の仕組みが、感染がなくても炎症を起こす病気)。発熱と、腹膜炎・胸膜炎・関節炎などの漿膜炎の発作が、繰り返し起こる
発作時のCT 腸間膜の血管の拡張と膜の肥厚、腸間膜リンパ節の腫れ、腹水など。特異的ではない
間違えやすい病気 虫垂炎など。FMFの患者さんの約3割が腹部の手術を受け、その多くが虫垂切除だったという報告がある
見逃したくない合併症 AAアミロイドーシス(腎臓が多い)。日本の調査では3.7%
受診の目安 高熱とお腹・胸の痛みを繰り返すときは、内科・小児科・膠原病内科へ。激しい腹痛や息苦しさがあるときは急いで受診する

家族性地中海熱とは

家族性地中海熱(familial Mediterranean fever、FMF)は、代表的な自己炎症性疾患です。熱と、腹膜・胸膜・関節などの炎症(漿膜炎)の発作が、繰り返し起こります(Wekell 2022)。名前のとおり、地中海地域の人々に多い病気ですが、日本を含む東アジアにも患者さんがいます(Migita 2012)。治療には、発作を抑え、発作の合間の炎症や、長期の合併症であるアミロイドーシスを防ぐ薬(コルヒチン)が使われます(Wekell 2022)。薬の使い方は、主治医の指示に従ってください。

日本のFMFの特徴

2009年の全国調査では、日本のFMF患者さんは推定292人(95%信頼区間187〜398人)でした。詳しく調べられた134人では、高熱が95.5%、腹痛(腹膜炎の症状)が62.7%、胸痛(胸膜炎の症状)が36.9%、関節炎が31.3%でした。初めての発作は、10歳未満が25.4%、10歳代が37.3%、20歳以上が37.3%でした。MEFV遺伝子に異常があった人は86.5%で、コルヒチンが有効だった人は91.8%、AAアミロイドーシスは5人(3.7%)でした。地中海地域の患者さんとは臨床像や遺伝子の特徴が異なり、診断までに時間がかかることが課題とされています(Migita 2012)。

症状 日本の患者さん(134人)
高熱 95.5%
腹痛(腹膜炎の症状) 62.7%
胸痛(胸膜炎の症状) 36.9%
関節炎 31.3%

日本では、40歳以上で初めて発作が起きた「遅発型」も少なくありません。292人の検討では、44人(15.1%)が40歳以上の発症でした。この群では、高熱(97.7%)と関節炎(45.5%)が多く、腹膜炎(40.9%)と胸膜炎(25.0%)は、他の年齢の群より少ない傾向でした。薬の効果は、どの年齢でも良好でした。熱が繰り返す原因がはっきりしないときは、年齢にかかわらずFMFも考える必要があります(Kishida 2020)。

発作時のCT・画像所見

腹部CT:腸間膜の変化と腹水

FMFの急性の腹部発作のときにCTを撮った17人(11〜45歳)の報告があります。FMFの発作だった14人では、腸間膜の異常が12人(血管の拡張と、腸間膜のひだの肥厚)、腸間膜リンパ節の腫れが6人、腹水が6人でした。局所の腹膜炎のサインは4人にありました。FMFと診断されていない患者さんで、このようなCTの所見があれば、臨床の状況によってはFMFを疑うきっかけになります。一方、残りの3人は、FMFではない別の病気で手術が必要でした(Zissin 2003)。

CT所見 FMFの発作14人での頻度
腸間膜の異常(血管の拡張・ひだの肥厚) 12人
腸間膜リンパ節の腫れ 6人
腹水 6人
局所の腹膜炎のサイン 4人

ただし、小児の外科の総説では、発作時の超音波・CTの所見は特異的ではなく、画像の役割は、虫垂炎や腸閉塞など、手術が必要な病気を見つけることだとされています(Wekell 2022)。腹膜炎のCTの一般的な読み方は腹膜炎の原因とCT画像所見で、腸間膜リンパ節の腫れは腸間膜リンパ節炎とは?で解説しています。

症例 40歳代男性 腸間膜の血管の拡張とリンパ節の腫れ(FMF)

家族性地中海熱 腸間膜リンパ節の腫れと腸間膜血管の拡張 造影CT・FDG-PET/CT
引用:Park HW, et al. Korean J Intern Med 2026(Figure 1)(CC BY-NC 4.0)

造影CTの横断像(A)と冠状断像(B)で、腸間膜に、均一に造影される短径1.2cmまでの腫れたリンパ節(矢頭)があり、腸間膜の血管の拡張と、ひだの肥厚(矢印)を伴っています。発作のない時期に撮影したFDG-PET/CT(C)では、腸間膜リンパ節の集積は軽いものでした。論文では、周期的な発熱の経過と腸間膜の変化、意義がはっきりしないMEFV遺伝子のバリアントを総合して、FMFと診断されたと説明されています。

この方は、最初は、リンパ節の生検の結果とCT所見からキャッスルマン病(リンパ節が腫れる別の病気)と考えられました。発作が周期的であることやPETの集積が軽いことから診断が見直され、コルヒチンの治療で、発作が起こらなくなり炎症反応も正常になりました(Park 2026)。

胸痛・胸膜炎:画像の所見は限られる

胸膜炎では胸の痛みが出ます。日本の患者さんの36.9%に胸痛があり、胸膜炎の症状とされています(Migita 2012)。発作時のエコーやCTの所見は特異的ではなく(Wekell 2022)、胸膜炎の画像の一般的な見方は胸膜炎(肋膜炎)とは?で解説しています。

虫垂炎などとの区別

FMFの腹部発作は、急性腹症(緊急の手術が必要な腹痛)と区別がつかないことがあります。FMFの患者さん254人の検討では、74人(29.1%)が腹部の手術を受け、診断前の最初の手術が虫垂切除だった人は68人(26.6%)でした。健常者182人では、腹部の手術が8.7%、虫垂切除は4.9%で、FMFの群で有意に多くなっていました。FMFのために診断前に不要な開腹手術を受けることがあり、コルヒチン治療中でも、腹痛の発作は急性腹症と見分けにくいとされています(Kaşifoğlu 2009)。

項目 FMFの発作 急性虫垂炎など
経過 熱と痛みの発作が、間隔をあけて繰り返す。発作の間は症状や検査の異常がない(Park 2026) 1回の経過で、痛みが続き悪化する
CTの所見 腸間膜の血管の拡張・ひだの肥厚、リンパ節の腫れ、腹水など。特異的ではない(Zissin 2003) 腫れた虫垂、虫垂のまわりの炎症など。詳しくは急性虫垂炎のCT所見
注意点 FMFの患者さんが、ほかの急性腹症(虫垂炎など)を併発することがある(Zissin 2003) FMFがあっても、虫垂炎がないとは限らない

FMFと診断されている人でも、虫垂炎などの別の病気の合併を探すことが大切です(Zissin 2003)。

診断:症状の経過とMEFV遺伝子

診断は、発熱と漿膜炎が繰り返す経過、家族歴、血液の炎症反応、MEFV遺伝子検査を合わせて行います。日本で、Livneh基準でFMFが疑われた13歳以上の504人にMEFV遺伝子検査を行い、1年後の診断を調べた研究では、34人(6.7%)がFMF以外の病気で、最も多かったのはベーチェット病、次いで周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎(PFAPA)症候群、炎症性腸疾患、骨髄異形成症候群、感染症でした。口内炎はベーチェット病やPFAPA症候群と、40歳以上の発症は骨髄異形成症候群や感染症と関連していました。症状が基準に当てはまっても、典型的でないときは、診断の見直しが必要とされています(Kishida 2024)。

アミロイドーシス:長期の合併症

FMFで最も重大な合併症は、AAアミロイドーシスです。炎症が続くと、血清アミロイドA(SAA)というたんぱく質が、腎臓などに沈着します。FMFの患者さんの最大8.6%に起こるとされ、多くはネフローゼ症候群として現れ、腎不全に進むことがあります。心臓・血管、消化管、中枢神経に及ぶこともあります。尿のたんぱく(微量アルブミン尿)の早期発見が、腎臓の異常に気づく最初の手がかりです(Siligato 2021)。日本の調査では、AAアミロイドーシスは3.7%でした(Migita 2012)。心臓にアミロイドがたまった場合の画像は心アミロイドーシスの画像診断で解説しています。

治療と経過観察

FMFの治療の中心はコルヒチンで、発作を抑え、発作の合間の炎症や、アミロイドーシスなどの長期の合併症を防ぎます(Wekell 2022)。日本の調査では、コルヒチンは91.8%で有効でした(Migita 2012)。血液のSAA(血清アミロイドA)は、発作の合間の炎症や治療を続けられているかを知る指標とされ、コルヒチンに加える治療として、IL-1阻害薬(アナキンラ、カナキヌマブ)や抗IL-6薬(トシリズマブ)が報告されています(Siligato 2021)。薬の量や使い方は、病状によって異なるため、主治医の指示に従ってください。

こんなときは医療機関へ

  • 高熱とお腹や胸の痛みが、間をあけて何度も起こる
  • 原因のはっきりしない熱を、年齢にかかわらず繰り返す
  • 家族に同じような症状の人がいる
  • 尿に泡が増えた、むくみが出た(腎臓の合併症のサインのことがあります)

激しい腹痛が続く、お腹が硬い、嘔吐が止まらない、息苦しさがあるときは、FMFかどうかにかかわらず急いで受診してください。診断や治療は、検査結果をふまえて担当の医師が決めます。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 地中海の人の病気ではないのですか?
A. 地中海地域に多い病気ですが、日本でも2009年の調査で、推定292人の患者さんが確認されています。日本の患者さんは、臨床像や遺伝子の特徴が地中海地域とは異なる点があります(Migita 2012)。

Q. 発作のときのCTで、FMFと診断できますか?
A. CTだけでは診断できません。腸間膜の変化や腹水が見えることがありますが、特異的ではなく、虫垂炎などの別の病気を見つけることが画像の大切な役割です(Zissin 2003、Wekell 2022)。

Q. 大人になってから発症することはありますか?
A. あります。日本の検討では、15.1%が40歳以上で初めて発作を起こしていました(Kishida 2020)。

Q. FMFの診断が遅れると、どうなりますか?
A. 診断前に不要な腹部の手術を受けることがあり(Kaşifoğlu 2009)、炎症が続くとAAアミロイドーシスの危険があります(Siligato 2021)。日本でも診断の遅れが課題とされています(Migita 2012)。

あわせて読みたい:アミロイド甲状腺腫のCT・超音波|脂肪を含むびまん性腫大と透析・家族性地中海熱、診断の進め方

参考文献

  1. Zissin R, Rathaus V, Gayer G, et al. CT findings in patients with familial Mediterranean fever during an acute abdominal attack. Br J Radiol. 2003;76(901):22-5. PubMed
  2. Migita K, Uehara R, Nakamura Y, et al. Familial Mediterranean fever in Japan. Medicine (Baltimore). 2012;91(6):337-343. PubMed
  3. Kishida D, Yazaki M, Nakamura A, et al. Late-onset familial Mediterranean fever in Japan. Mod Rheumatol. 2020;30(3):564-567. PubMed
  4. Kishida D, Nakamura A, Yazaki M, et al. Variables for differential diagnosis of familial Mediterranean fever: Multiple correspondence analysis of a large Japanese cohort. Mod Rheumatol. 2024;34(4):784-790. PubMed
  5. Wekell P, Wester T. Familial Mediterranean fever may mimic acute appendicitis in children. Pediatr Surg Int. 2022;38(8):1099-1104. PubMed
  6. Kaşifoğlu T, Cansu DU, Korkmaz C. Frequency of abdominal surgery in patients with familial Mediterranean fever. Intern Med. 2009;48(7):523-6. PubMed
  7. Siligato R, Gembillo G, Calabrese V, et al. Amyloidosis and Glomerular Diseases in Familial Mediterranean Fever. Medicina (Kaunas). 2021;57(10). PubMed
  8. Park HW, Youn SY, Park G, et al. Castleman disease-like mesenteric lymphadenopathy in a Korean adult ultimately diagnosed with familial Mediterranean fever. Korean J Intern Med. 2026;41(5):963-964. PubMed

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