
先に結論:アミロイド甲状腺腫は、甲状腺にアミロイドが沈着して腫れる病態。脂肪の混じり方によりCTで低吸収、超音波で高エコーのびまん性腫大を示しやすい。急に大きくなり圧迫症状を出すことがあるが、甲状腺機能は正常のことが多い
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 背景 | 家族性地中海熱などの慢性炎症による続発性(AA)アミロイドーシスが多い。FMFの42例では90%が甲状腺腫の前から腎アミロイドーシスで血液透析中(Vergneault 2021) |
| 症状 | 急な増大88%、呼吸困難58%、嚥下困難44.8%。甲状腺機能は75.6%が正常(Vergneault 2021) |
| 画像 | びまん性の腫大。脂肪の浸潤で超音波は高エコー、CTは低吸収。アミロイドが多い所は低エコーの結節に見えることがある(Vergneault 2021、Bakan 2017) |
| 診断 | 穿刺吸引細胞診でアミロイドを確認。続発性アミロイドーシス38例の甲状腺腫で92%に検出(Ozdemir 2006) |
アミロイド甲状腺腫とは
アミロイドーシスは、異常な線維状の蛋白(アミロイド)が臓器の細胞の外に沈着する病気の総称です。甲状腺にアミロイドが顕微鏡でわかる程度に沈着することは珍しくありませんが、甲状腺がはっきり腫れるほど沈着したものを「アミロイド甲状腺腫(amyloid goiter)」と呼びます。全身性アミロイドーシスの一部として起こり、甲状腺の腫れが最初に気づかれる症状になることもあります。
原因となるアミロイドーシスには、慢性の炎症で血清アミロイドA(SAA)が増えて起こる続発性(AA型)と、形質細胞の異常による免疫グロブリン軽鎖(AL型)などがあります。14例の臨床病理学的な検討では、続発性8例、原発性6例で、9例は剖検で見つかったものでした。症状があった5例は、痛みのない急に大きくなる首の腫瘤で、嚥下困難・呼吸困難・嗄声を伴っていました(Hamed 1995)。
多結節性甲状腺腫の中でアミロイド甲状腺腫が占める頻度は0.17%とされ、手術前に臨床的に見つかることは少ないと報告されています(Paz-Ibarra 2024)。家族性地中海熱(FMF)との関係やアミロイドーシス全体の流れは家族性地中海熱(FMF)の画像とアミロイドーシスで解説しています。
どんな人に起こりやすいか
FMFに伴うアミロイド甲状腺腫42例(フランスの9例と文献の33例)をまとめた報告では、90%が甲状腺腫に先立って腎アミロイドーシスのため血液透析を受けていました。甲状腺腫は88%で急に大きくなり、58%に呼吸困難、44.8%に嚥下困難があり、75.6%は甲状腺機能が正常でした(Vergneault 2021)。ペルーの4例(28〜65歳)も、全員がもともと炎症性の病気をもち、呼吸困難・嚥下困難・発声の障害を伴う大きな甲状腺腫でした(Paz-Ibarra 2024)。
一方、米国の施設の5例では、甲状腺腫の重さは50〜130gで、全員が数年続く嗄声のあとに圧迫症状で受診しており、経過観察の終わりまでに全員に何らかの甲状腺機能の異常がみられました(Law 2013)。「急に大きくなる」「機能は正常」という典型像から外れる例もあるということです。
| 報告 | 対象 | 主な数字・所見 |
|---|---|---|
| Hamed 1995 | 14例(続発性8・原発性6) | 9例は剖検で発見。約3分の1に成熟脂肪組織と巣状のリンパ球性甲状腺炎 |
| Ozdemir 2006 | 続発性アミロイドーシス50例 | 38例に甲状腺腫。穿刺吸引で35例(92%)にアミロイド。手術例では実質の大部分がアミロイドと脂肪に置き換わる |
| Vergneault 2021 | FMFの42例 | 透析中90%、急な増大88%、機能正常75.6%。手術31例の64%で成熟脂肪組織 |
| Law 2013 | 症状のある5例 | 50〜130g。数年の嗄声が先行。全員に経過中の機能異常 |
超音波の所見
腎アミロイドーシスの9例に甲状腺の超音波を行った検討では、7例に特徴的な異常がありました。片側または両側の葉の腫大、周りの結合組織に近いほどの高いエコー、すりガラスのようにとても細かく均一な内部エコーで、4例には拡張した濾胞がみられました。異常があった3例はくさび生検でアミロイドが確かめられ、超音波が正常だった1例にはアミロイドがありませんでした。健常者10人と透析患者20人の甲状腺は大きさも見え方も正常でした(el-Reshaid 1994)。
ただし見え方は一様ではありません。FMFの42例のうち超音波の記載があった18例では、約半数(7例)が高エコーまたは不均一、約3分の1(6例)が多結節性で、エコー輝度が正常でびまん性・均一な例もありました(Vergneault 2021)。同じ論文は、脂肪の浸潤が高エコー(CTでは低吸収)の原因になり、アミロイドが多い部分は低エコーの結節に見えうると述べています。早い時期は均一で、のちに結節状になるという見方も紹介されています(Vergneault 2021)。甲状腺結節の超音波の見方は甲状腺結節の鑑別とエコー所見にまとめています。
CT・MRI・PETの所見
アミロイド甲状腺腫の主な画像所見は甲状腺のびまん性の脂肪浸潤で、所見は脂肪とアミロイドの量で変わるとされています(Bakan 2017)。CTでは、腫れた甲状腺の中に脂肪に近い低吸収の領域が広がるのが手がかりです。正常の甲状腺はヨードを含むためCTで周りの筋より高い吸収値を示すので(詳しくは甲状腺のCT画像診断)、腫れた甲状腺が逆に低吸収になっているときは目を引きます。
脂肪の目立たない例もあります。肺結核の既往のある30歳代女性の報告では、造影CTで甲状腺はびまん性に腫れ、両葉に造影されない病変が多発し、咽頭後間隙にも多房性の病変が広がっていました。細胞診は甲状腺炎の判定で、甲状腺全摘の標本でアミロイドと脂肪化生がわかりました(Ahmed Khan 2023)。
FDG-PETでは、FMFの1例で甲状腺の両葉の腫大とびまん性の集積が示され、手術でアミロイドーシスと診断されています(Vergneault 2021)。FDGの集積だけで腫瘍と炎症・沈着症を分けることはできないため、背景の病気を合わせて考えます。
症例 家族性地中海熱に伴うアミロイド甲状腺腫のCT

引用:Vergneault H, Terré A, Buob D, et al. Amyloid Goiter in Familial Mediterranean Fever: Description of 42 Cases from a French Cohort and from Literature Review. J Clin Med 2021;10(9):1983(Figure 5)(CC BY 4.0)
(A)は甲状腺腫による首の腫れです。(B)のCT横断像では、甲状腺が低吸収の組織(矢印)に置き換わっており、甲状腺への脂肪の浸潤を示しています。
症例 FDG-PET/CTで集積を示したアミロイド甲状腺腫

引用:Vergneault H, Terré A, Buob D, et al. Amyloid Goiter in Familial Mediterranean Fever: Description of 42 Cases from a French Cohort and from Literature Review. J Clin Med 2021;10(9):1983(Figure 3)(CC BY 4.0)
CTの冠状断(A)・矢状断(C)とFDG-PET/CTの融合像(B、D、E)で、甲状腺の両葉が腫大し、FDGの集積が高くなっています(矢印)。
似た病態との区別
脂肪の浸潤はアミロイド甲状腺腫のおよそ3分の2に報告される目立つ特徴ですが、特異的ではありません(Vergneault 2021)。腫れた甲状腺を見たときは、背景の病気と増大の速さを合わせて次のような病態と比べます。
| 鑑別 | 画像・臨床の手がかり |
|---|---|
| アミロイド甲状腺腫 | 慢性炎症・透析・既知のアミロイドーシス。びまん性腫大、脂肪による低吸収・高エコー |
| 橋本病(慢性甲状腺炎) | びまん性腫大でCTの吸収値が下がり、超音波は低エコー・不均一になりやすい |
| 多結節性甲状腺腫 | 大小の結節が集まり、嚢胞・石灰化を伴いやすい。アミロイド甲状腺腫も結節状に見えることがある |
| 甲状腺髄様癌 | 腫瘍がカルシトニン由来のアミロイドを含むため、細胞診でアミロイドがあっても周りの細胞を確かめる(Vergneault 2021) |
| 急に大きくなる悪性腫瘍(リンパ腫・未分化癌など) | 急速な増大と圧迫症状が重なる。画像だけで区別できないときは組織で確かめる |
アミロイド甲状腺腫の中に乳頭癌が見つかった例もあり(Ozdemir 2006)、結節がある場合は通常の甲状腺結節と同じように評価します。
診断と治療で画像に求められること
診断は組織でアミロイドを確かめて行います。コンゴーレッド染色で偏光顕微鏡下にアップルグリーンの複屈折を示すことで確認し、14例の検討では免疫染色でアミロイドAが陽性でした(Hamed 1995)。穿刺吸引細胞診は続発性アミロイドーシスの甲状腺腫で92%にアミロイドを検出しましたが(Ozdemir 2006)、ペルーの報告のように細胞診で「コロイド甲状腺腫」とされ、手術で初めてわかる例もあります(Paz-Ibarra 2024)。
FMFの42例のうち31例が甲状腺切除を受け、その理由は圧迫症状の解除(72%)と悪性の除外(27%)でした。この集団の手術標本には癌は見つからず、著者らは圧迫症状がなく細胞診でアミロイドが示されれば手術を避けるのが妥当としています(Vergneault 2021)。米国の5例では、手術2例、保存的な経過観察2例で、1例は全身のアミロイドーシスの治療後に甲状腺腫が縮小しました(Law 2013)。
画像の役割は、腫大の範囲と気管・食道の圧迫、胸骨の後ろへの広がりを示すこと、脂肪を含むびまん性の変化から本症を思いつくこと、そして結節があれば別に評価することです。肺など他の臓器のアミロイドーシスの画像は肺アミロイドーシスのCT画像所見、心臓は心アミロイドーシスの画像診断で解説しています。首の腫れが急に大きくなる、息苦しさや飲み込みにくさがあるときは、早めに医療機関に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 甲状腺に脂肪があればアミロイド甲状腺腫ですか?
そうとは限りません。脂肪の浸潤はアミロイド甲状腺腫のおよそ3分の2にみられる特徴ですが、特異的ではないとされています(Vergneault 2021)。慢性炎症や透析、既知のアミロイドーシスといった背景がそろうと可能性が高まり、最後は細胞診や組織でアミロイドを確かめます。
Q2. 甲状腺の機能は悪くなりますか?
多くは正常です。FMFの42例では75.6%が正常でした(Vergneault 2021)。ただし症状のある5例を長く追った報告では、全員に経過中の機能異常(低下症・亢進症)がみられており(Law 2013)、経過中の血液検査は欠かせません。
Q3. 透析患者の甲状腺が白っぽく見えたら疑うべきですか?
腎アミロイドーシスの患者で、高エコーですりガラス様の細かい内部エコーを示す腫大は手がかりになります。一方、透析を始めたばかりの10人と1年以上透析中の10人では甲状腺は正常に見えました(el-Reshaid 1994)。透析だけで甲状腺がこう見えるわけではないので、アミロイドーシスの有無を確かめます。
Q4. 手術は必要ですか?
圧迫症状が強いときや悪性を除外できないときに手術が選ばれています(Vergneault 2021)。圧迫症状がなく細胞診でアミロイドが示された場合は手術を避ける考え方もあり、方針は主治医と相談して決めます。
参考文献
- Vergneault H, Terré A, Buob D, et al. Amyloid Goiter in Familial Mediterranean Fever: Description of 42 Cases from a French Cohort and from Literature Review. J Clin Med. 2021;10(9):1983. PubMed
- Hamed G, Heffess CS, Shmookler BM, et al. Amyloid goiter. A clinicopathologic study of 14 cases and review of the literature. Am J Clin Pathol. 1995;104(3):306-12. PubMed
- Ozdemir BH, Uyar P, Ozdemir FN. Diagnosing amyloid goitre with thyroid aspiration biopsy. Cytopathology. 2006;17(5):262-6. PubMed
- el-Reshaid K, al-Tamami M, Johny KV, et al. Amyloidosis of the thyroid gland: role of ultrasonography. J Clin Ultrasound. 1994;22(4):239-44. PubMed
- Bakan S, Kandemirli SG, Akbas S, et al. Amyloid Goiter: A Diagnosis to Consider in Diffuse Fatty Infiltration of the Thyroid. J Ultrasound Med. 2017;36(5):1045-1049. PubMed
- Law JH, Dean DS, Scheithauer B, et al. Symptomatic amyloid goiters: report of five cases. Thyroid. 2013;23(11):1490-5. PubMed
- Paz-Ibarra J, Concepción-Zavaleta M, Quiroz-Aldave JE, et al. Amyloid Goiter: A Peruvian Case Series. touchREV Endocrinol. 2024;20(2):124-129. PubMed
- Ahmed Khan Z, Ahmad S, Williams R, et al. Co-occurrence of Amyloid Goiter and Adipose Metaplasia in a Patient With History of Pulmonary Tuberculosis: A Case Report. Cureus. 2023;15(3):e36008. PubMed
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