マラコプラキア 腫瘍に似た慢性炎症 CT・MRI所見

膀胱の検査で「マラコプラキア」と言われました。腫瘍のようにも見えると説明されましたが、がんなのでしょうか。どんな病気ですか?
マラコプラキアは、細菌をうまく処理できなくなったマクロファージ(白血球の一種)が集まってできる、腫瘍に似た慢性の炎症で、がんではありません。膀胱や腎臓などの尿路に多く、大腸菌の感染や免疫が弱った状態が背景にあります。ただ、CTやMRIでは腫瘍や膿瘍と区別がつきにくく、確定には組織の検査が必要です。ここでは、見え方の特徴と、見間違えやすい病気を整理します。

先に結論:マラコプラキアは「腫瘍に似た良性の炎症」。画像だけでは区別が難しく、診断は生検(Michaelis-Gutmann小体)で決まる

項目 ポイント
どんな病気か マクロファージが細菌を消化しきれず、組織に黄白色の斑状・結節状の病変を作る慢性の肉芽腫性炎症。悪性腫瘍ではない
多い場所 膀胱・腎臓などの尿路が中心。消化管(大腸・直腸)、後腹膜、筋肉、皮膚などにも報告がある
背景 尿路感染の繰り返し(大腸菌が多い)、臓器移植・糖尿病・ステロイドなどによる免疫の低下。免疫が正常な人にも起こりうる
画像検査 特異的な所見はない。腫瘍・膿瘍・結核などに似る。診断は生検で、Michaelis-Gutmann小体を確認する
受診の目安 血尿、繰り返す膀胱炎症状、発熱を伴う腰や背中の痛みが続くときは泌尿器科や内科へ

マラコプラキアとは

マラコプラキア(malakoplakia、malacoplakia とも書きます)は、ギリシャ語の「軟らかい(malakos)」と「板(plakos)」に由来する名前の、まれな慢性の肉芽腫性炎症です(Zorrilla Ariza 2026)。肉眼では黄色や白色の平たく軟らかい病変で、中央がへこむことがあり、腫瘍や感染症に似て見えます。20世紀のはじめに記載された病気で、2011年までに700例を超える報告があるとされますが、頻度は不明で、報告の多くは症例報告や小規模な症例集積です(Zorrilla Ariza 2026)。

なぜできるのか

原因は、白血球のマクロファージ(組織球)が、取り込んだ細菌を消化しきれないことだと考えられています。細胞の中のグアノシン一リン酸(cGMP)が少ないことや、β-グルクロニダーゼの放出が不十分なことなどが、消化の不具合の理由として挙げられています。処理しきれなかった細菌の残りがたまり、慢性の炎症を起こします(Zorrilla Ariza 2026)。病気の仕組みには、まだわかっていない部分が多いとされます(Abbasi 2025)。

診断を決める顕微鏡の所見

顕微鏡で見ると、泡のような広い細胞質をもつ大きな組織球(von Hansemann 細胞)が目立ちます。その細胞の中に、Michaelis-Gutmann小体という丸い封入体があり、これがマラコプラキアに特徴的な所見とされます。小体は、カルシウムと鉄が貯まったもので、同心円状の層構造のために「標的」「フクロウの目」のように見えます。HE染色のほか、PAS染色、鉄染色、特にvon Kossa染色で見つけやすくなります(Zorrilla Ariza 2026)。

どんな人に、どこにできるのか

膀胱のマラコプラキアを調べた文献レビュー(35論文)では、平均年齢は50.9歳で、75%が女性でした。繰り返す尿路感染症が47.2%、免疫系の病気が19.4%にあり、尿培養が陽性だった例では大腸菌が92%の例で分離されています。病変の場所は、尿管が膀胱に入る部分(膀胱尿管移行部)が42.3%、膀胱三角部が38.5%と多く、約44%で水尿管・水腎症がありました。再発は15%でした(Polisini 2022)。

部位 報告されている特徴
膀胱 女性に多い。膀胱尿管移行部や三角部に多く、水腎・水尿管を伴う例がある。尿路感染の繰り返し、免疫の病気が背景に多い(Polisini 2022)
腎臓 中年の女性の大腸菌による腎盂腎炎に多い。多発型と単発型の2つの型がある(Hartman 1980)
移植腎 移植後2年以内が多い。大腸菌感染が多く、肉芽腫性の腫瘤として見つかる(Abbasi 2025)
消化管 S状結腸・直腸が多い。内視鏡ではポリープ状や腫瘤状。免疫が低下した人に多い(Lee 2020)
後腹膜・筋肉 まれ。腫瘍の転移やリンパ腫に見える腫瘤として見つかることがある(Zorrilla Ariza 2026、Dominguez 2025)

CT・MRIでの見え方

マラコプラキアの画像所見には特異性がありません。多発する病変が融合して浸潤性の腫瘤のように見える例が、最大で75%にあるとされ、腫瘍や膿瘍に見間違えられやすい病気です(Zorrilla Ariza 2026)。臓器ごとに、報告されている見え方を整理します。

腎臓:腎腫大と、造影されにくい多発の領域

腎盂腎炎の一般的な画像は腎盂腎炎のCT画像診断で解説しています。マラコプラキアは、このような腎盂腎炎の経過の中で、まれに起こります。

腎実質のマラコプラキアを調べた1980年の報告(自験5例と文献30例の検討)では、多くは中年の女性の大腸菌による腎盂腎炎で、画像では多発型と単発型の2つの型がありました。予後は、型と広がりによって異なり、適切な治療で長期に生存できる例もあります(Hartman 1980)。

大腸菌の菌血症を伴った若い女性の症例では、CTで両側の腎腫大、皮質と髄質の境の不明瞭化、多発する低吸収の領域がみられました。融合した低吸収域は、膿瘍や梗塞の組織を反映している可能性があるとされています。超音波では、腎の腫大と不均一なエコー、散在する低エコー域が、MRIでは、不均一に造影が低下した領域に拡散の制限があり、腎の内外に液体の貯留も見られました。腎生検でMichaelis-Gutmann小体が見つかって診断され、抗菌薬などで腎機能は改善しました(Henlon 2023)。

移植腎:腫瘍に似た腫瘤

腎移植後のマラコプラキアでは、腎の腫瘤として見つかり、腫瘍との区別が問題になります。59例の報告をまとめた検討では、移植後2年以内の発症が中心で、47%が拒絶反応の既往か、2回目以降の移植でした。大腸菌感染の報告が多く、手術で切除せずに保存的に治療した報告のほうが、改善・消失が多いことがわかっています。自験の2例も、抗菌薬と尿のドレナージで腫瘤が小さくなりました(Abbasi 2025)。

膀胱:膀胱尿管移行部・三角部の病変

膀胱では、病変が膀胱尿管移行部(42.3%)と三角部(38.5%)に多く、約44%で水尿管・水腎症を伴い、血清クレアチニンが高い(腎機能が低下した)例もありました。尿管の出口の近くにできやすいことが、この病気の特徴です(Polisini 2022)。腫瘍や感染に似た病変を作るため、膀胱癌との区別が問題になります(Zorrilla Ariza 2026)。膀胱壁の肥厚の鑑別はびまん性膀胱壁肥厚の原因と鑑別、膀胱癌のCT・MRIは膀胱癌の画像診断で解説しています。

消化管:ポリープや腫瘤

消化管のマラコプラキアは、尿路に次いで多いとされます。23例の検討では、S状結腸・直腸が10例、横行・下行結腸が4例、胃・食道胃接合部が4例などで、内視鏡ではポリープ(10例)や腫瘤(5例)として見つかりました。91%(21/23)の患者は、移植・がん・自己免疫疾患・糖尿病などで免疫が低下していました(Lee 2020)。別の26例の検討では、大腸が23例、平均年齢は64歳で、スクリーニングの内視鏡の組織検査で見つかった例が多く、良性で偶然に見つかる所見とされました(Zhang 2020)。

後腹膜・筋肉:転移に見える腫瘤

後腹膜のマラコプラキアでは、骨盤部の後腹膜の大きな腫瘤(約12.5×5×7.3cm)と腸腰筋の病変が、MRIで悪性腫瘍の転移を疑わせた43歳の女性の報告があります。この女性は免疫が正常で、腸腰筋の生検で、Michaelis-Gutmann小体が見つかって診断されました(Zorrilla Ariza 2026)。また、肝臓の腺癌の切除後に、FDG-PETで強く集積する後腹膜の腫瘤が現れた66歳の女性の報告では、CTガイド下の生検でマラコプラキアと診断され、抗菌薬で腫瘤が消えました(Dominguez 2025)。FDGの集積があっても、悪性とは限りません。

症例 40歳代女性 骨盤の後腹膜から腸腰筋に及ぶマラコプラキア

骨盤の後腹膜から腸腰筋に及ぶマラコプラキア 造影CT冠状断
引用:Zorrilla Ariza JJ, et al. Cureus 2026(Figure 4)(CC BY 4.0)

右の付属器の近くから腸腰筋に向かって伸びる、不均一に造影される液体貯留を思わせる病変が、造影CTの冠状断で写っています(図中で囲まれた部分)。論文では、MRIで悪性腫瘍の転移が疑われた症例で、生検の組織にMichaelis-Gutmann小体があり、マラコプラキアと診断されたと説明されています。

見間違えやすい病気と、見分け方

画像で区別できないため、病変がある場所によって、次のような病気と鑑別します。

場所 疑われる病気 区別の考え方
膀胱 膀胱癌、炎症性の隆起 尿路感染の繰り返し・免疫低下の背景があるとき、マラコプラキアも考える。内視鏡と生検で確定する
腎臓 腎細胞癌、腎膿瘍、腎盂腎炎、黄色肉芽腫性腎盂腎炎 大腸菌感染や腎盂腎炎の経過がある腫瘤では、考えに入れる。生検で確認する
後腹膜・筋 転移、リンパ腫、結核などの感染 FDG-PETの集積があっても区別できない。生検で診断する(Dominguez 2025)
消化管 大腸癌、ポリープ、リンパ腫 内視鏡の組織検査で見つかる。リンパ球の集まりが目立つとリンパ腫を疑うことがある(Zhang 2020)

論文では、マラコプラキアと間違えやすい病気として、結核・クリプトコッカス症・放線菌症などの感染症、クローン病・サルコイドーシスなどの炎症性疾患、リンパ腫や顆粒細胞腫などの腫瘍や腫瘍様の病変が挙げられています(Zorrilla Ariza 2026)。腎の黄色肉芽腫性の炎症は腎癌の診断で知っておくべきこと(オンコサイトーマ・黄色肉芽腫性腎盂腎炎)に、後腹膜の線維化は後腹膜線維症の記事にあわせて解説しています。

治療と経過

治療は、病変の場所と患者さんの状態で決まります。細菌を細胞の中で消化できないという病気の成り立ちから、細胞の中に届く抗菌薬(フルオロキノロン系、ST合剤、リファンピシンなど)が選ばれ、必要に応じて免疫抑制の治療を見直します。閉塞や膿瘍を伴うとき、治療に反応しないとき、悪性腫瘍を除外できないときなどに、手術が検討されます(Zorrilla Ariza 2026)。膀胱では、抗菌薬と手術(経尿道的切除・部分切除・膀胱全摘など)を組み合わせた治療が30.6%でした。治療は標準化されておらず、薬による治療も手術も、再発を防ぐのに有効とされています(Polisini 2022)。マラコプラキアに対し、ベタネコールやアスコルビン酸(ビタミンC)を抗菌薬と併用した報告もあります(Henlon 2023)。治療の選び方は、主治医と相談してください。

こんなときは医療機関へ

  • 血尿が出た、排尿のときの痛みや頻尿などの膀胱炎の症状を繰り返す
  • 発熱と、腰や背中の痛みが続く
  • 臓器移植後や免疫を抑える薬を使っていて、熱や尿の異常が出た
  • 内視鏡や画像検査で「腫瘤」「ポリープ」を指摘され、詳しい説明を受けていない

高い熱で寒気がする、尿がほとんど出ない、ぐったりしているときは、急いで受診してください。診断や治療は、検査結果をふまえて担当の医師が決めます。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. マラコプラキアはがんですか?
A. がんではなく、炎症の一種です。ただし画像では腫瘍と区別できないことが多く、組織検査でMichaelis-Gutmann小体を確認して診断します(Zorrilla Ariza 2026)。

Q. 免疫が弱くないとなりませんか?
A. 免疫が低下した人に多い病気ですが、免疫が正常な人にも起こります。後腹膜と腸腰筋に病変ができた43歳の女性も、免疫は正常でした(Zorrilla Ariza 2026)。

Q. 再発しますか?
A. 膀胱の文献レビューでは、再発率は15%でした(Polisini 2022)。移植腎では、手術で切除せず、保存的に治療した報告のほうが、改善・消失が多いとされます(Abbasi 2025)。

Q. 内視鏡で見つかった消化管のマラコプラキアは心配ですか?
A. 大腸の26例の検討では、多くが検診の内視鏡で偶然に見つかった良性の所見で、経過をみた患者さんに追加の病変はありませんでした(Zhang 2020)。ただし、背景に免疫低下の病気がないか、主治医に確認してください。

参考文献

  1. Polisini G, Delle Fave RF, Capretti C, et al. Malakoplakia of the urinary bladder: A review of the literature. Arch Ital Urol Androl. 2022;94(3):350-354. PubMed
  2. Hartman DS, Davis CJ Jr, Lichtenstein JE, et al. Renal parenchymal malacoplakia. Radiology. 1980;136(1):33-42. PubMed
  3. Henlon NE, Fishman EK, Gomez EN. Multimodal imaging appearance including cinematic rendering of renal malakoplakia in a patient with E. coli bacteremia. Radiol Case Rep. 2023;18(2):709-714. PubMed
  4. Abbasi AB, Gamino G, Zambeli-Ljepović A, et al. Malakoplakia among kidney transplant recipients: case series and literature review. Front Immunol. 2025;16:1605146. PubMed
  5. Lee M, Ko HM, Rubino A, et al. Malakoplakia of the gastrointestinal tract: clinicopathologic analysis of 23 cases. Diagn Pathol. 2020;15(1):97. PubMed
  6. Zhang Y, Byrnes K, Lam-Himlin D, et al. Gastrointestinal Malakoplakia: Clinicopathologic Analysis of 26 Cases. Am J Surg Pathol. 2020;44(9):1251-1258. PubMed
  7. Zorrilla Ariza JJ, Ulloa Zuluaga V, Zorrilla Ariza JM, et al. A Rare Case of Iliopsoas Muscle and Retroperitoneal Lesion Secondary to Malakoplakia. Cureus. 2026;18(8):e114657. PubMed
  8. Dominguez D, Eichhorn J, Palot Manzil FF. Retroperitoneal Malakoplakia Mimicking Metastatic Disease. Clin Nucl Med. 2025;50(1):75-76. PubMed

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