先に結論:腎腫瘍の診断で知っておきたいこと
- 腎腫瘍は、まず最も多い淡明細胞型腎細胞癌かどうかを考え、合わないときに他の組織型を検討します
- 若年なら腎芽腫・転座型腎癌、乏血性なら嫌色素性腎癌・乳頭状腎癌・後腎性腺腫、腎盂から放射状に広がるなら集合管癌・浸潤性尿路上皮癌を考えます
- 腎の腫瘤が腫瘍でない(黄色肉芽腫性腎盂腎炎など)・転移・肉腫・類上皮血管筋脂肪腫のこともあるので、典型から外れる所見に注意します
- オンコサイトーマは中心瘢痕と区域性造影反転、黄色肉芽腫性腎盂腎炎は水腎症・腎周囲の炎症・bear paw signが手がかりです
非定型的所見に注意する
患者:
・若年:Wilms腫瘍、転座腎癌 ・女性:嫌色素性癌、後腎性腺腫、粘液状管状紡錘形細胞癌など
画像:
・腎外性突出:後腎性腺腫、血管筋脂肪腫 ・腎盂から放射状:集合管癌、浸潤性腎盂癌 ・Hypovascular:嫌色素性癌、後腎性腺腫 ・車軸状血管:オンコサイトーマ
肉眼:
・ベージュ色:嫌色素腎癌 ・マホガニー色:オンコサイトーマ ・灰白色:集合管癌
規約で扱わない腫瘍にも注意
・カルチノイド:馬蹄腎に合併することある。
・腎滑膜肉腫:極めて稀。
腎原発肉腫の診断
・常に転移の可能性を考えて除外する。他臓器に原発と思われる病変がない。
・肉眼的に腎原発が示唆される。
・後腹膜からの浸潤ではない。後腹膜は肉腫の宝庫。
・肉腫様腎癌、血管筋脂肪腫の可能性が除外される。
・カルチノイド、神経内分泌癌などについても同様。
類上皮血管筋脂肪腫
・結節性硬化症に合併した「腎細胞癌」とされたものの一部は類上皮血管筋脂肪腫の可能性がある
・平滑筋様成分が類上皮状形態を示すmalignant potentialを有するまれな間質系腫瘍
・純粋な類上皮型41例の検討では、結節性硬化症の既往は9例(約2割)であった。
・平均年齢は40.7歳(14〜68歳)との報告がある。
・存在を知り、疑う事が大事。
・Hamartin(TSC1)とtuberin(TSC2)はmTOR経路を抑制的に調節する。
オンコサイトーマの画像所見
・中心性星芒状瘢痕と区域性造影反転(SEI:皮髄相と排泄相で濃く染まる部分と薄い部分が入れ替わる所見)が手がかりで、オンコサイトーマ51例と嫌色素性腎癌120例の比較でも、両者はオンコサイトーマに多くみられました(Choi 2015)。
・SEIは特異的な所見ですが、研究によって感度が0〜80%と大きくばらつき、画像だけで良性と決めつけないことが大切です(Schieda 2014)。
症例 70歳代女性

引用:Radiopaedia(Renal oncocytoma)
偶然見つかった症例の造影CT(皮髄相)です。右腎上極に境界明瞭な腫瘤があり、周囲の腎皮質より弱く不均一に染まり、中心に造影されない瘢痕がみられます。腎部分切除でオンコサイトーマと診断されましたが、嫌色素性腎癌などとの画像での区別は難しいとされています。
黄色肉芽腫性腎盂腎炎(XGP)の画像所見
・結石による閉塞を背景にした慢性の腎感染で、腫瘤のように見えて腎癌と紛らわしいことがあります。
・CTを撮影した40例では、95%に水腎症と腎周囲の炎症性変化、55%にbear paw sign(拡張した腎杯が低吸収域として並び、熊の足跡のように見える所見)がみられました(Pais 2022)。
症例 50歳代女性

引用:Radiopaedia(Xanthogranulomatous pyelonephritis)
腰痛が続いた症例の造影CTです。右腎盂に大きなサンゴ状結石があり、拡張した腎杯が低吸収域として並ぶbear paw signを示しています。右腎周囲には液体貯留と脂肪織の毛羽立ちがあり、黄色肉芽腫性腎盂腎炎が考えられた症例です。
腎癌を診断する上で重要なこと
・頻度の高い腎腫瘍の診断を誤らない:淡明細胞型腎細胞癌の診断を確実に除外した後、他組織型を吟味
・予後、治療法の異なる組織型を間違えない:集合管癌と乳頭状腎細胞癌、肉腫様癌とMTSCC、腎芽腫と後腎性腺腫
・腎腫瘍は腎細胞癌ばかりとは限らない:腎盂由来の腫瘍、小児腫瘍、類上皮性AMLoma、JGoma、MESTなど。希少な組織型は転移を除外する。WHO分類2022(第5版)では、TFEB変異型腎細胞癌・ELOC変異型腎細胞癌・SMARCB1欠損腎髄質癌など分子異常で定義される型や、好酸性充実性嚢胞性腎細胞癌が新たに加わりました。また乳頭状腎細胞癌の1型・2型の区分はなくなり、旧2型は「その他の腎腫瘍」や「分子異常で定義される腎癌」に再分類されました。これらの多くは乳頭状腎細胞癌と同様に漸増性に造影されるため、年齢・発育形式・造影の程度・T2信号・転移の有無が典型例と違うときは希少型を疑います。
・腫瘍と非腫瘍を間違えない:集合管癌、浸潤性尿路上皮癌と腎盂腎炎、淡明細胞癌と黄色肉芽腫性腎盂腎炎。
あわせて読みたい:粘液管状紡錘細胞癌(MTSCC)の画像所見、腎癌総論
参考文献
- Moch H, Amin MB, Berney DM, et al. The 2022 World Health Organization Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs-Part A: Renal, Penile, and Testicular Tumours. Eur Urol. 2022;82(5):458-468. PubMed
- Tsai CC, Wu WJ, Li CC, et al. Epithelioid angiomyolipoma of the kidney mimicking renal cell carcinoma: a clinicopathologic analysis of cases and literature review. Kaohsiung J Med Sci. 2009;25(3):133-40. PubMed
- Nese N, Martignoni G, Fletcher CD, et al. Pure epithelioid PEComas (so-called epithelioid angiomyolipoma) of the kidney: A clinicopathologic study of 41 cases: detailed assessment of morphology and risk stratification. Am J Surg Pathol. 2011;35(2):161-76. PubMed
- Jinzaki M, Nicola R, Withey SJ, et al. WHO 2022 Renal Cell Tumor Classification: Imaging Features and Clinical Implications. Radiographics. 2026;46(7):e250098. PubMed
- Choi JH, Kim JW, Lee JY, et al. Comparison of computed tomography findings between renal oncocytomas and chromophobe renal cell carcinomas. Korean J Urol. 2015;56(10):695-702. PubMed
- Schieda N, McInnes MD, Cao L. Diagnostic accuracy of segmental enhancement inversion for diagnosis of renal oncocytoma at biphasic contrast enhanced CT: systematic review. Eur Radiol. 2014;24(6):1421-9. PubMed
- Pais JS, Rocha MB, Muglia VF, et al. Xanthogranulomatous pyelonephritis: Case series – Clinical, radiologic, therapeutic, and histological aspects. Urol Ann. 2022;14(4):383-388. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
