橋小脳低形成 PCHとCDGのMRIの見分け方

MRIで「橋と小脳が小さい」と言われたお子さんがいます。橋小脳低形成(PCH)とは何で、CDGとはどう違うのでしょうか?
橋小脳低形成(PCH)は、橋と小脳が小さいことを共通点とする、まれな遺伝性の病気のグループです。画像では虫部に比べて半球が強く小さく、PCH2Aではトンボ(dragonfly)の形になります。CDGなど似た病気との見分け方を、見る順番とあわせて整理します。

先に結論:PCHは「橋と小脳が小さい」遺伝性疾患群。虫部より半球が強く小さい。CDGなど似た病気も多い

項目 ポイント
何か 橋と小脳の低形成・萎縮を共通点とする、出生前に始まる進行性の常染色体潜性の疾患群(Namavar 2011、van Dijk 2018)
分類 現在11型、OMIMに関連遺伝子17個(van Dijk 2018)
画像の型 虫部は相対的に保たれ、半球が強く小さい。PCH2Aはdragonfly(van Dijk 2018)
似た病気 CDG(PMM2-CDG)など。橋と小脳の低形成の組み合わせだけではPCHと決められない(van Dijk 2018)
診断の意味 治療は対症療法が中心。診断はケア・遺伝カウンセリング・出生前診断のため(van Dijk 2018)

橋小脳低形成(PCH)とは

橋小脳低形成(pontocerebellar hypoplasia、PCH)は、橋と小脳が小さい(低形成・萎縮)ことを共通の特徴とする、まれな遺伝性の病気のグループです。臨床像も遺伝子も多様なグループで(Rudnik-Schöneborn 2014)、ほとんどは出生前に始まり、進行する神経変性の経過をとります。共通の特徴は、小脳と橋の低形成または萎縮、進行する小頭症、大脳の障害の程度の差で、重い運動・認知の障害やけいれんを伴うことが多いと整理されています(Namavar 2011)。遺伝形式はすべて常染色体潜性(劣性)です(van Dijk 2018)。

型の数は、発見された遺伝子とともに増えてきました。2011年の総説ではPCH1〜7の7型でしたが(Namavar 2011)、2018年の総説では11型で、OMIMに載る関連遺伝子は17個になっています。多くはRNAの加工や、たんぱく質の合成に関わる遺伝子です(van Dijk 2018)。治療は症状を和らげるものが中心です。それでも診断は、適切なケア、予後の説明、遺伝カウンセリング、次の妊娠での出生前診断のために大切とされています(van Dijk 2018)。

型ごとの特徴(早見表)

型ごとに「画像+臨床の特徴」が違います。主なものを、van Dijk 2018の整理から抜き出します。

型 主な特徴
PCH1 脊髄の運動神経の変性(脊髄性筋萎縮症に似る)、筋力低下、呼吸不全、関節の拘縮
PCH2(特にPCH2A) 新生児期の全身のクローヌス、嚥下の協調不全、ジストニア・舞踏運動、進行する小頭症。TSEN54遺伝子
PCH4・5 PCH2の重症型。先天性の拘縮と羊水過多、新生児期から重い呼吸の障害
PCH6 筋緊張低下、けいれん、髄液の乳酸の上昇、進行する大脳の萎縮。RARS2遺伝子
PCH7 性分化疾患(DSD)、脳梁の菲薄化、脳室の拡大
PCH8・11 進行しない(非変性)型
PCH9 嚥下障害、脳梁欠損、脳幹の「8の字」の形。AMPD2遺伝子

非変性の型まで広く含めたため、現在の分類は混乱のもとにもなっている、と著者らは述べています(van Dijk 2018)。

画像の特徴:虫部に比べて半球が小さい

画像の最大のポイントは、小脳の虫部に比べて、小脳半球が強く小さいことです。PCHでは虫部の成長が半球に比べて相対的に保たれ、Joubert症候群やDandy-Walker奇形では逆に虫部が主に障害されます(van Dijk 2018)。

最も特徴がはっきりしているのは、PCH2A(TSEN54のp.A307S変異のホモ接合)で、小脳がトンボ(dragonfly)のように見える形です。強く障害された半球が「羽」、保たれた虫部が「胴体」にたとえられます(van Dijk 2018)。冠状断で見ると分かりやすい所見です。

断面 見える所見 メモ
正中矢状断 橋の腹側が平らで細い。虫部は小さい〜やや保たれる PCH2:平らな腹側の橋と虫部の低形成(Namavar 2011)
傍矢状断 小脳半球が小さく、後頭蓋窩に空間が目立つ 重症では半球がほとんど見えない
冠状断 半球が平たく、虫部は比較的保たれる(dragonfly) PCH2Aで典型(van Dijk 2018)
大脳 脳萎縮、脳室の拡大、髄鞘化の遅れ、脳梁 進行性なので撮像の時期で変わる

症例 PCH1・PCH2・PCH4のMRI

橋小脳低形成 PCH1 PCH2 PCH4 MRI 矢状断 冠状断 dragonfly
引用:Namavar Y, et al. Orphanet J Rare Dis 2011;6:50(Figure 1)。PMC、CC BY 2.0

引用元の図の説明では、A〜Cが生後2週の新生児のPCH1で、正中矢状断(T1)で虫部の低形成と著明な小脳の低形成、傍矢状断で小脳半球の高度の低形成、冠状断(T2)で平らな小脳半球があり、虫部は比較的保たれています。D〜Fは生後2か月(D・E)と9か月(F)のPCH2で、平らな橋腹側と虫部の低形成、非常に小さい小脳半球(矢印)、冠状断では平らな小脳半球と軽い虫部の低形成(dragonfly)があり、大脳皮質の萎縮もあります。G〜Iは在胎31週5日の新生児のPCH4で、重度の虫部の低形成と橋腹側の平坦化、小脳半球の高度の低形成、大脳皮質の未熟性と脳室の拡大が記載されています。

CDG(PMM2-CDG)も橋と小脳が小さい

橋小脳低形成を思わせる画像は、PCH以外にも見られます。代表がCDG(congenital disorder of glycosylation、先天性グリコシル化異常症)のIa型で、PMM2遺伝子の変異(常染色体潜性)によります。CDG1aでは、橋と小脳全体の低形成に、さらに萎縮が重なった像が見られ、大脳の萎縮、脳室の拡大、髄鞘化の遅れを伴うことがあります(van Dijk 2018)。臨床像の幅が広く、新生児期の多臓器不全から、中等度の知的障害と運動失調にとどまる安定した経過まであります。乳頭が内側に引っ込む、脂肪のつき方が特殊といった特徴的な外見の所見があり、血液のトランスフェリンの等電点電気泳動で診断の絞り込みができます(van Dijk 2018)。

PMM2-CDGは最も多いCDGで、26人の検討では、画像の大きさの指標のうち橋の中央の径が、日常生活の障害の重さを最もよく予測しました。小脳の虫部・半球・脳幹が小さいほど、障害が重い傾向がありました(Pettinato 2021)。

鑑別の考え方:どこが小さいか、何を伴うか

橋の低形成と小脳の低形成が合わさっても、いつもPCHの診断になるわけではありません(van Dijk 2018)。Accogli 2021は、小脳低形成(小脳の容積が小さいが形は保たれる状態)の読み方を、次のように整理しています。

画像のグループ(Accogli 2021) 例
単独の小脳低形成 小脳だけが小さい
後頭蓋窩の髄液の異常を伴う Dandy-Walker奇形、Blake嚢胞など
特定の脳幹・小脳の奇形を伴う Joubert症候群(臼歯徴候)など
脳幹の低形成+皮質の移動異常を伴う 脳幹低形成に脳の皮質形成異常が加わる型
小脳の形成異常(dysplasia) 小脳の構造そのものの異常

また、橋の低形成があると鑑別がかなり絞られます(van Dijk 2018)。α-ジストログリカンの異常による筋ジストロフィー(Walker-Warburg症候群など)でも、小脳と橋の低形成があります(van Dijk 2018)。

初心者向け:見る順番

  1. 年齢と症状(新生児期の嚥下障害、クローヌス、ジストニア、けいれん、小頭症)を確認する。
  2. 正中矢状断で、橋の腹側が平らか、虫部が小さいかを見る。
  3. 傍矢状断・冠状断で、小脳半球と虫部のどちらが強く小さいかを比べる(半球>虫部ならPCH寄り)。
  4. 後頭蓋窩に嚢胞や髄液腔がないか(Dandy-Walker奇形など)を見る。
  5. 臼歯徴候がないか(Joubert症候群)を見る。
  6. 大脳の萎縮・脳室・髄鞘化・脳梁・皮質の形成異常を見る。
  7. 過去の画像があれば比べる(PCHは進行する病気で、萎縮が後から目立つ型もある)。

PCH2Eのように、最初のMRIが正常で、生後1年以内に小脳の萎縮がはっきりしてくる型もあります(van Dijk 2018)。

見落としやすい点

  • 橋と小脳が小さい=PCHではない。CDGや筋ジストロフィーなど、ほかの病気でも見られます(van Dijk 2018)。
  • 低形成と萎縮は重なる。PCHは「低形成/萎縮」と並べて表され、経過で進行します(Namavar 2011)。可能なら過去の画像と比べます。
  • 虫部と半球のどちらが主かをいつも比べます。JoubertやDandy-Walkerは虫部が主です(van Dijk 2018)。
  • 大脳も見る。脳梁や脳室の異常は型の手がかりです(PCH7・PCH9)。
  • 成人の小脳萎縮は別の考え方になります。成人の小脳萎縮の鑑別疾患を参照してください。小脳脚の見え方は小脳脚のMRI解剖、脳幹の区分は中脳被蓋・橋被蓋・橋底部で確認できます。

お子さんの診断・見通しの説明は、小児神経科・臨床遺伝の担当医に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. PCHとはどんな病気ですか?
A. 橋と小脳が小さい、まれな遺伝性の神経の病気の一群です。ほとんどは出生前に始まり、進行する経過をとり、型は現在11に分けられています(Namavar 2011、van Dijk 2018)。

Q. 治りますか?
A. 治療は症状を和らげるものが中心で、多くの型で重い運動・認知の障害があり、予後は型で異なります(Namavar 2011、van Dijk 2018)。診断は、ケアや遺伝カウンセリング、出生前診断のために大切です。

Q. 家族に遺伝しますか?
A. すべての型が常染色体潜性遺伝です(van Dijk 2018)。ご家族の再発の確率や検査は、臨床遺伝の専門医に相談してください。

Q. CDGと言われました。PCHとは別ですか?
A. 別の病気ですが、画像で橋と小脳が小さく、よく似ることがあります。PMM2-CDGは最も多いCDGで、PMM2遺伝子の変異で起こります(van Dijk 2018、Pettinato 2021)。

あわせて読みたい:Dandy-Walker連続体とは、HGPPSとは

参考文献

  1. Namavar Y, Barth PG, Poll-The BT, et al. Classification, diagnosis and potential mechanisms in pontocerebellar hypoplasia. Orphanet J Rare Dis. 2011;6:50. PubMed
  2. van Dijk T, Baas F, Barth PG, et al. What’s new in pontocerebellar hypoplasia? An update on genes and subtypes. Orphanet J Rare Dis. 2018;13(1):92. PubMed
  3. Accogli A, Addour-Boudrahem N, Srour M. Diagnostic Approach to Cerebellar Hypoplasia. Cerebellum. 2021;20(4):631-658. PubMed
  4. Pettinato F, Mostile G, Battini R, et al. Clinical and radiological correlates of activities of daily living in cerebellar atrophy caused by PMM2 mutations (PMM2-CDG). Cerebellum. 2021;20(4):596-605. PubMed
  5. Rudnik-Schöneborn S, Barth PG, Zerres K. Pontocerebellar hypoplasia. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2014;166C(2):173-83. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →