
先に結論:SLEの脳MRIは「血管性」か「非血管性」かを分けて読む。正常でもNPSLEは否定できず、感染・薬剤・PRESなど別の原因を先に考える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| NPSLEとは | SLEに伴う中枢・末梢神経と精神の症状。米国リウマチ学会(1999)は19の症候群を定義 |
| MRIで多い所見 | 白質の小さな高信号。皮質の病変、梗塞・出血、萎縮もある。活動期でも約4割はMRI異常なしという報告 |
| 血管性の要注意点 | 抗リン脂質抗体があると脳梗塞・静脈洞血栓のリスクが上がる。DWIと静脈の確認が重要 |
| 鑑別 | PRES、感染、薬剤、高血圧、尿毒症など「SLE以外の原因」を先に除く。SLEの症状とは決めつけない |
神経精神ループス(NPSLE)とは
SLEは全身の臓器に炎症を起こす自己免疫疾患で、脳・脊髄・末梢神経・精神症状も起こります。これらをまとめて神経精神ループス(NPSLE)と呼びます。米国リウマチ学会(ACR)は1999年に、診断基準・除外すべき病態・検査の進め方を含む19のNPSLE症候群の定義を示しました。ただし、この定義は臨床診断の代わりにそのまま使うものではない、と明記されています(ACR 1999)。
どのくらい起こるかは、国際的な研究で調べられています。診断から15か月以内のSLE患者1,206人を追った研究では、経過中に40.3%が何らかの神経精神症状を経験しましたが、SLEが原因と判断されたのは13.0〜23.6%(2つの基準による)でした。個々の神経精神イベントでは頭痛が最も多く(47.1%)、SLE以外の原因によるものの方が多いという結果でした(Hanly 2010)。つまり、SLEの患者さんの頭の症状は、「ループスのせい」と決めつけず、別の原因も同じ重さで探す必要があります。
| 症状の頻度(EULAR 2010) | 代表例 |
|---|---|
| 多い(累積発生率5%超) | 脳血管障害、けいれん |
| 比較的まれ(1〜5%) | 重い認知機能障害、大うつ病、急性錯乱状態、末梢神経障害、精神病 |
EULARの推奨(2010)では、抗リン脂質抗体があると、脳血管障害・けいれん・舞踏病のリスクが5倍以上になる強い危険因子とされています(Bertsias 2010)。抗リン脂質抗体の病気そのものは抗リン脂質抗体症候群(APS)の症状、原因、検査は?で解説しています。
MRIで見える所見のパターン
NPSLEの初回の活動期74例のMRIを調べた研究では、所見は次の4つに整理されました(Luyendijk 2011)。
| パターン | 頻度 | 考えられる背景 |
|---|---|---|
| 白質の局所的な高信号(白質のみ、または皮質も含む) | 49%(白質と灰白質の両方が5%) | 血管障害や血管炎を示唆 |
| 広がった、癒合する白質高信号 | 頻度の記載なし | 慢性的な血流低下を示唆 |
| 皮質(灰白質)のびまん性病変 | 12% | 神経成分に対する免疫反応、けいれん後の変化など |
| MRIに異常なし | 42% | 症状・徴候があっても画像に出ない |
韓国の3施設で、1999年のACR定義に合う神経精神症状でMRIが撮られた133件を調べた研究でも、最も多い所見は白質の高信号(57.1%)でした。ほかに灰白質の高信号30.8%、脳実質の欠損(梗塞など)23.3%、萎縮15.0%が見られ、けいれんでは灰白質の高信号が、脳血管障害では灰白質の高信号・実質欠損・拡散強調像(DWI)の異常が多い傾向がありました(Jeong 2015)。
ここで大切なのは、白質の小さな高信号はSLEに特異的ではないという点です。加齢や高血圧など、SLE以外の原因でも見られます。白質高信号の見方は頭部MRIの読み方のFLAIRの項も参考にしてください。
血管性の病変を見落とさない
2018年の国際共同研究(1,826人)では、脳血管イベントはSLEの神経精神イベントの4番目に多く、82人に109件が起こりました(内訳は脳卒中60件、一過性脳虚血28件が中心)。その大半(109件中103件)はSLEによるものと判断され、ループスアンチコアグラントは、初回の脳卒中、静脈洞血栓、一過性脳虚血発作のリスクを高めていました(Hanly 2018)。このため、SLEの患者さんの急な神経症状では次を確認します。
| 見るもの | 理由・ポイント |
|---|---|
| DWIとADC | 急性の脳梗塞を最も早く拾える。梗塞が単一の血管領域か、複数の領域に散らばるかを見る |
| FLAIR | 白質・皮質の高信号と、陳旧性の梗塞や萎縮の確認 |
| T2*またはSWI | 出血や微小出血。抗凝固療法を考える前に確認が必要 |
| 静脈の評価(MRV・造影など) | 静脈洞血栓は、梗塞が血管領域に一致しない形で現れることがある |
| 造影T1 | 炎症や髄膜の異常、感染の鑑別(必要性は臨床で決める) |
EULARの推奨では、疑わしいNPSLEのMRIにはT1・T2、FLAIR、DWI、造影T1を含めることが挙げられています(Bertsias 2010)。造影の使い分けは頭部CT・MRIで造影が必要なとき・いらないときにまとめています。
症例 30歳代女性 神経精神ループス(脳幹脳炎)

引用:Ueno T, Ochiai S. Cureus 2026;18(1):e101551 (Figure 1)。CC BY 4.0、PMC(図は無加工)
32歳女性で、意識の変化、発熱、汎血球減少をきたした神経精神ループスの報告です。上段(A〜D)と下段(E〜H)の2つの高さで、FLAIR(A・E)では橋から中脳にかけて腫れを伴う左右対称の高信号、DWI(B・F)では同じ範囲に散在する高信号があり、ADCマップ(C・G)で拡散制限を示しました。造影T1(D・H)で異常な造影効果はありませんでした。全身のリンパ節腫大とあわせて悪性リンパ腫に似た経過でしたが、病理で悪性腫瘍は否定され、ステロイドとシクロホスファミドで神経症状が改善しています。
MRIが正常でも、NPSLEは否定できない
先の74例の研究では、活動性のNPSLEで症状があっても42%はMRIに異常がありませんでした(Luyendijk 2011)。MRIが正常のときの読み方は次のとおりです。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 症状あり・MRI正常 | 「脳に炎症がない」という意味ではない。脳脊髄液検査、血液検査、脳波などを合わせて判断する |
| 症状あり・MRIに小さな白質高信号 | SLEに特異的ではない。年齢・高血圧・過去の梗塞も考える |
| 症状あり・MRIに明らかな病変 | 血管性か炎症性かを分け、感染・薬剤・PRESなどの鑑別を進める |
EULARの推奨は、「NPSLEが疑われる症状は、まずSLEのない人と同じように評価し、そのあとでSLEとの関係を判断する」という順番です。精査は、感染の除外(脳脊髄液検査)、脳波、神経心理検査、神経伝導検査、MRIなど、SLE以外の原因を除くことを目的とします(Bertsias 2010)。
SLEの患者さんで間違えやすい病気
SLEの患者さんでは、高血圧、腎不全、免疫抑制薬による感染など、脳に変化を起こす別の原因が重なります。次のものを念頭に置きます。
| 鑑別 | MRIのヒント |
|---|---|
| PRES(可逆性後白質脳症症候群) | 後頭葉・頭頂葉を中心とした左右対称のFLAIR高信号(血管原性浮腫)。高血圧・腎障害・免疫抑制薬が背景にあることが多い。詳しくはPRES(可逆性後白質脳症症候群)とは |
| 感染(髄膜炎・脳炎・膿瘍) | 免疫抑制中は日和見感染を考える。造影や拡散強調像、脳脊髄液で確認 |
| 薬剤性・代謝性 | ステロイドや他の薬剤による精神症状、尿毒症、電解質異常。MRIは正常のこともある |
| 脳梗塞・出血・静脈洞血栓 | NPSLEの血管性との区別は難しい。抗リン脂質抗体の有無を確認する |
症例 10歳代女性 SLE(ループス腎炎)に合併したPRES

引用:De Clercq C, et al. Cureus 2026;18(4):e107244 (Figure 1)。CC BY 4.0、PMC(図は無加工)
18歳女性が、高血圧、急性腎不全、けいれん、視覚の異常で入院した報告の図です。FLAIRで、後方の脳(後頭葉・頭頂葉)に左右対称の高信号(赤矢印)があり、血管原性浮腫に合致する所見とされています。精査で抗核抗体と抗dsDNA抗体が陽性となり、ループス腎炎と診断されました。血圧管理、抗てんかん薬、ステロイド・免疫抑制療法で神経症状は回復し、フォローアップの画像でも改善しています。
この症例のように、PRESはSLEの初発症状として現れることもあります。脳症状を見たときは、SLEの活動性だけでなく、血圧と腎機能も確認することが大切です。
読影のチェックリスト
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 臨床情報:SLEの活動性、血圧、腎機能、抗リン脂質抗体、使用中の薬、感染のリスク |
| 2 | DWI/ADC:急性梗塞の有無と、分布(単一領域か、多発・複数領域か) |
| 3 | FLAIR:白質・皮質の高信号の分布。後方優位で左右対称ならPRESを考える |
| 4 | T2*/SWI:出血・微小出血 |
| 5 | 静脈洞:血栓の有無(必要ならMRV・造影) |
| 6 | 造影T1:髄膜や病変の造影効果(感染・炎症の鑑別) |
| 7 | 過去画像との比較:新しい病変か、以前からあるか |
よくある疑問(Q&A)
Q1. SLEで頭のMRIが「異常なし」でした。神経精神ループスではないということですか。
いいえ、MRIが正常でもNPSLEは否定できません。活動期のNPSLE 74例では42%にMRIの異常がありませんでした(Luyendijk 2011)。症状が続く場合は、MRI以外の検査を含めて主治医に相談してください。
Q2. MRIの白質の小さな点は、ループスによるものですか。
白質の小さな高信号はNPSLEで最も多い所見ですが(Jeong 2015、Luyendijk 2011)、SLEに特異的ではなく、年齢や高血圧などでも出ます。画像だけで原因は決められないため、症状や他の検査と合わせて判断します。
Q3. 抗リン脂質抗体が陽性だと、脳梗塞になりやすいのですか。
EULAR推奨では、抗リン脂質抗体は脳血管障害、けいれん、舞踏病の強い危険因子とされています(Bertsias 2010)。ループスアンチコアグラントは、初回の脳卒中や静脈洞血栓、一過性脳虚血発作のリスクを高めたと報告されています(Hanly 2018)。予防や治療の方針は主治医とよく相談してください。
Q4. PRESとNPSLEは、どう見分けますか。
PRESは後方優位で左右対称のFLAIR高信号(血管原性浮腫)が典型で、高血圧・腎障害・免疫抑制薬が背景にあります。ただし、SLEの活動性が高い状態でPRESが起こることもあり、両者が重なる場合もあります。診断は臨床経過と画像を合わせて行います。気になる症状があるときは、早めに医療機関で相談してください。
あわせて読みたい:統合失調症・うつ病で脳MRIを撮る意味
参考文献
- The American College of Rheumatology nomenclature and case definitions for neuropsychiatric lupus syndromes. Arthritis Rheum. 1999;42(4):599-608. PubMed
- Bertsias GK, Ioannidis JP, Aringer M, et al. EULAR recommendations for the management of systemic lupus erythematosus with neuropsychiatric manifestations: report of a task force of the EULAR standing committee for clinical affairs. Ann Rheum Dis. 2010;69(12):2074-82. PubMed
- Hanly JG, Urowitz MB, Su L, et al. Prospective analysis of neuropsychiatric events in an international disease inception cohort of patients with systemic lupus erythematosus. Ann Rheum Dis. 2010;69(3):529-35. PubMed
- Hanly JG, Li Q, Su L, et al. Cerebrovascular Events in Systemic Lupus Erythematosus: Results From an International Inception Cohort Study. Arthritis Care Res (Hoboken). 2018;70(10):1478-1487. PubMed
- Luyendijk J, Steens SC, Ouwendijk WJ, et al. Neuropsychiatric systemic lupus erythematosus: lessons learned from magnetic resonance imaging. Arthritis Rheum. 2011;63(3):722-32. PubMed
- Jeong HW, Her M, Bae JS, et al. Brain MRI in neuropsychiatric lupus: associations with the 1999 ACR case definitions. Rheumatol Int. 2015;35(5):861-9. PubMed
- Ueno T, Ochiai S. Brainstem Encephalitis in Neuropsychiatric Systemic Lupus Erythematosus Mimicking Malignant Lymphoma: A Case Report and Literature Review. Cureus. 2026;18(1):e101551. PubMed
- De Clercq C, Ego A, Heenen S, et al. Posterior Reversible Encephalopathy Syndrome (PRES) as the Initial Presentation of Systemic Lupus Erythematosus With Lupus Nephritis: A Case Report. Cureus. 2026;18(4):e107244. PubMed
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