
先に結論:fMRIは「神経活動そのもの」ではなく「そのあとの血流の変化」を見る検査。腫瘍の近くでは見え方が変わることがある
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| しくみ | 脳が働くと局所の血流が増え、静脈血中のデオキシヘモグロビンが相対的に減って、T2*強調像の信号が上がる(BOLD効果) |
| 撮り方 | 安静と課題を交互に行い、同じ場所を短い間隔で繰り返し撮って、信号が課題で有意に上がる場所を統計で求める |
| 手術前の使いみち | 運動野・言語野と腫瘍の位置関係を知り、切除の計画を立てる。言語の優位半球の判定にも使う |
| 画像の色 | 信号の強さではなく、統計の結果(しきい値次第で広さが変わる) |
| 注意点 | 腫瘍により血流の反応が弱まる「神経血管解離」で、本来あるはずの賦活が出ない(偽陰性)ことがある |
fMRIとは:BOLD効果のしくみ
脳の神経細胞が活動すると、その部分に血液が多く流れ込みます。このとき酸素の消費量の増え方より血流の増え方が大きいため、血液中のデオキシヘモグロビン(酸素を手放したヘモグロビン)の割合が相対的に減ります。デオキシヘモグロビンは、MRIでは磁場をわずかに乱して信号を下げる、いわば体内にある造影剤のような働きをします(Ogawa 1990)。これが減ると、T2*強調像(グラディエントエコー法)の信号がほんの少し上がります。この信号の変化がBOLD効果(blood oxygenation level-dependent contrast)で、fMRIの基本です。T2*強調像そのものについてはT2*強調像・磁化率強調像(SWI)とはを参照してください。
ここで大切なのは、fMRIが見ているのは神経細胞の電気活動ではなく、その後の血流の反応だという点です。サルの視覚野を使った研究では、BOLD信号は神経細胞が出力した発火そのものより、その領域への入力や領域内の処理を反映する局所電場電位とよく対応しました(Logothetis 2001)。
| 段階 | 起きていること |
|---|---|
| 1 | 課題(手を握る、言葉を思い浮かべる)で神経細胞が活動する |
| 2 | 数秒遅れて、その場所の血流が増える |
| 3 | 静脈血のデオキシヘモグロビンが相対的に減る |
| 4 | T2*強調像の信号がわずかに上がる。課題中と安静中で比べる |
血流の反応は神経の活動より遅れるため、課題と信号の変化の間にはずれがあります。また信号の上がり方はごくわずかで、画像を見ただけでは判別できません。そこで統計処理が必要になります。
どうやって撮るか:安静と課題のくり返し
撮像は、安静(目を閉じてじっとしている)と課題(手を握る・言葉を思い浮かべるなど)を一定の間隔で交互に行い、その間に脳全体の画像を短い間隔で何十〜何百回も撮ります。T2*強調の高速撮像法を使い、撮った画像を位置ずれを補正したうえで、1つの小さな区画(ボクセル)ごとに、課題中の信号が安静中より有意に高いかを統計で調べます。結果は、有意だったボクセルを色で塗って、解剖画像(T1強調像など)に重ねて表示します。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ブロックデザイン | 安静と課題を数十秒ずつ交互に繰り返す。検出しやすく、手術前の検査で広く使われる |
| 賦活(ふかつ) | 課題で信号が有意に上がった領域のこと。賦活マップ(activation map)として色で表示する |
| しきい値 | どの程度の統計的な差を「賦活」とみなすかの基準。厳しくすると賦活は小さく、ゆるくすると広くなる |
| パラダイム | 課題の種類と順序の組み合わせ |
手術前に何を調べるか
脳腫瘍の手術では、できるだけ腫瘍を取りながら、手足を動かす運動野や、言葉にかかわる言語野を傷つけないことが求められます。fMRIは、これらの位置を、腫瘍との関係で手術前に画像で示す方法です。運動野は、手を握る・指をたたく・舌を動かすなどの課題で調べます。言語野は、文章の続きを考える、頭の中で単語を出す、物の名前を言うなどの課題を使います。
言語課題の標準化
施設ごとに課題や解析のやり方がまとまらず、データの比較がしにくいという問題がありました。米国機能神経放射線学会(ASFNR)は、成人の言語の評価で推奨する課題として、文章完成、声を出さない単語想起、韻踏み、物の呼称、物語の聞き取り(受け身の課題)のうち、いずれか(または複数)を挙げています(Black 2017)。語想起や言語の場所と働きについてはブローカ野・ウェルニッケ野はどこ?で解説しています。
言語の優位半球の判定
多くの人は左の大脳半球に言語の中心がありますが、右や両側にある人もいます。以前は、片側の脳血管に麻酔薬を入れて言語を調べるWadaテストで確認していました。fMRIとWadaテストを比べた23研究(442人)のメタ解析では、非典型的な言語優位(右または両側)を見つける感度が83.5%、特異度が88.1%でした。著者らは、fMRIが言語の優位側を調べる非侵襲的な代替手段になるとしています(Dym 2011)。
手術計画への影響
手術が検討された脳腫瘍の患者39人の前向き研究では、fMRIの前後で治療計画が変わったのは19人で、そのうち18人でより積極的な方針に変わりました。脳神経外科医は、手術時間が15〜60分短くなると見積もった患者が22人、切除をより積極的に行った患者が6人、開頭を小さくした患者が2人と回答しています(Petrella 2006)。著者らは、機能上のリスクのために見送られていたかもしれない積極的な方針を、fMRIで選べるようになると結論しています。
脳腫瘍以外と安静時fMRI
fMRIの手術前の言語の評価は、脳腫瘍のほか、てんかん、血管奇形などでも使われています(Black 2017)。また、課題を行わずに安静にしている間のBOLD信号のゆらぎから脳の機能的なつながりを見る安静時fMRIが、課題が難しい患者さんへの補助的な方法として注目されています(Agarwal 2023)。
読むときの注意点:偽陰性と偽陽性
fMRIは便利ですが、そのまま鵜呑みにはできません。腫瘍の周りの脳は、血流の反応そのものが弱くなることがあるからです。
| 落とし穴 | 起きること | 読み方 |
|---|---|---|
| 神経血管解離(NVU) | 腫瘍により血管の反応が低下し、神経が働いていてもBOLD信号が上がらない(偽陰性) | 健側の賦活が良好なのに患側で欠如していれば、NVUを疑う |
| 患者の協力不足 | 麻痺で運動課題ができない、言語課題が理解できないなどで、賦活が出ない | 課題が実行できたか、検査中の様子を確認する。受け身の課題への変更も考える |
| 体の動き | 頭のわずかな動きが偽の賦活を作る。脳の縁やすき間に沿った輪状の賦活は特に疑う | 賦活が脳の辺縁や静脈・脳溝に沿っていないかを見る |
| しきい値の設定 | 同じデータでも、しきい値で賦活の広さが変わる | 1つのしきい値だけでなく、複数の設定で見て安定しているかを確認する |
| 血管の信号 | 太い静脈の近くで信号が変動し、偽の賦活になりやすい | 賦活が静脈に重なっていないかを、造影T1強調像などで確認する |
神経血管解離は、血管の反応が障害されて、神経活動が血流の増加につながらなくなる状態です。BOLD fMRIの偽陰性を生み、重要な皮質を誤って切除するおそれがあるため、臨床のfMRIでは評価が欠かせないとされています(Pillai 2012)。神経血管解離の可能性は、息止めのときの脳血管反応性(CVR)をBOLD信号で調べて評価する方法があります(Agarwal 2023)。
症例 左中心溝周囲の膠芽腫と神経血管解離

引用:Agarwal S, Welker KM, Black DF, et al. Detection and Mitigation of Neurovascular Uncoupling in Brain Gliomas. Cancers (Basel). 2023;15(18):4473 (Figure 1). CC BY 4.0(PMC)
58歳男性、左の中心溝周囲の膠芽腫(WHO grade 4)です。手や舌の運動課題を行った賦活マップを、造影T1強調像に重ねています。右半球では手と顔の運動野に賦活がはっきり見えますが、腫瘍のある左半球の相当部位には賦活がありません。実際には両側の運動機能は保たれており、課題もできていました。この食い違いは、腫瘍による神経血管解離として説明されています。
同じ論文の別の図 補正の前後

引用:Agarwal S, Welker KM, Black DF, et al. Cancers (Basel). 2023;15(18):4473 (Figure 4). CC BY 4.0(PMC)
同じ論文のFigure 4では、58歳男性の左前頭葉の膠芽腫の運動課題の賦活マップを示しています。補正前(上段)では、左の中心前回の手の領域に期待される賦活がほとんど見えません(黄色矢印)。安静時fMRIの低周波振幅(ALFF)を用いた補正後(中段)は、同じ場所に新たな賦活が見えるようになり、下段が補正で新しく現れた賦活です。偽陰性を減らす工夫が、研究として進められています(Agarwal 2023)。
読影の手順(研修医向け)
fMRIの画像を渡されたら、色のついた部分だけを見るのではなく、次の順に確認すると読み違いを減らせます。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | どの課題の賦活マップか(運動・言語・視覚など)と、課題の内容・色分けの凡例を確認する |
| 2 | 解剖画像で、中心溝・中心前回・腫瘍の位置を自分で確認する。運動課題の賦活が中心前回付近に出ているかを見る |
| 3 | 左右の向き(画像の左が患者さんの右か)を確認する |
| 4 | 健側と患側の賦活を比べる。運動機能が保たれているのに患側だけ賦活がなければ、神経血管解離を疑う |
| 5 | 賦活の位置が脳の辺縁・脳溝・太い静脈に沿っていないか(動きや血管のアーチファクト)、しきい値で広さが変わらないかを確認する |
| 6 | 賦活と腫瘍の距離・位置関係を、手術で守る領域の候補として記載する |
まとめ:結果は「地図の1つ」として使う
fMRIは、手術前に運動野や言語野の位置を知る有力な手がかりですが、賦活した場所は「その課題にかかわる領域」であって、切除してよいかを直接決めるものではありません。腫瘍の影響や課題の実施状況を踏まえ、他の検査や術中の確認とあわせて使うのが基本です。脳腫瘍の手術後の画像については脳腫瘍の治療後MRI、MRIの各シーケンスについてはMRIの基本シーケンスをご覧ください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. fMRIは痛みや被ばくがありますか?
通常のMRIと同じ装置で撮るため、放射線の被ばくはありません。検査中は大きな音が出るため、聞こえにくい課題では工夫が必要です。体内の金属など、MRIが受けられない条件は通常のMRIと同じです。
Q2. 課題がうまくできなかったらどうなりますか?
課題が十分に実行できないと、賦活が出にくくなります。麻痺などで運動課題が難しい場合や、言語課題が理解できない場合は、受け身の課題に変えることがあります。うまくできたかどうかも読影の際に確認します。
Q3. 画像の赤や黄色は何の色ですか?
信号の強さそのものではなく、課題中と安静中の差が統計的に有意だった場所を、有意性の大きさなどで色分けしたものです。しきい値によって広さが変わります。
Q4. 検査を勧められたら不安です。どうすればよいですか?
fMRIは、手術でできるだけ安全に腫瘍を取るための検査です。検査の内容や、なぜ必要かは、担当の医師や検査担当者に確認してください。
あわせて読みたい:パラレルイメージング(SENSE・GRAPPA)とは
参考文献
- Ogawa S, Lee TM, Kay AR, et al. Brain magnetic resonance imaging with contrast dependent on blood oxygenation. Proc Natl Acad Sci U S A. 1990;87(24):9868-72. PubMed
- Logothetis NK, Pauls J, Augath M, et al. Neurophysiological investigation of the basis of the fMRI signal. Nature. 2001;412(6843):150-7. PubMed
- Petrella JR, Shah LM, Harris KM, et al. Preoperative functional MR imaging localization of language and motor areas: effect on therapeutic decision making in patients with potentially resectable brain tumors. Radiology. 2006;240(3):793-802. PubMed
- Dym RJ, Burns J, Freeman K, et al. Is functional MR imaging assessment of hemispheric language dominance as good as the Wada test?: a meta-analysis. Radiology. 2011;261(2):446-55. PubMed
- Black DF, Vachha B, Mian A, et al. American Society of Functional Neuroradiology-Recommended fMRI Paradigm Algorithms for Presurgical Language Assessment. AJNR Am J Neuroradiol. 2017;38(10):E65-E73. PubMed
- Agarwal S, Welker KM, Black DF, et al. Detection and Mitigation of Neurovascular Uncoupling in Brain Gliomas. Cancers (Basel). 2023;15(18):4473. PubMed
- Pillai JJ, Zacà D. Comparison of BOLD cerebrovascular reactivity mapping and DSC MR perfusion imaging for prediction of neurovascular uncoupling potential in brain tumors. Technol Cancer Res Treat. 2012;11(4):361-74. PubMed
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