
先に結論:皮膚の青い腫瘤と原因不明の貧血・下血が組み合わさったら、消化管の静脈奇形も考える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 皮膚と消化管などに静脈奇形が多発する、まれな病気(Bean症候群ともよばれる) |
| 原因 | 病変の細胞にあるTEK(TIE2)遺伝子の体細胞変異が17人中15人に見つかった(Soblet 2017) |
| 症状 | 貧血と黒色便(下血)が多い。成人の報告では貧血50.5%、黒色便26.5%(Kozai 2023) |
| 画像・内視鏡 | 皮膚・軟部はMRIで静脈奇形、消化管は内視鏡・カプセル・造影CT。腸重積などの合併症にも注意 |
| 治療 | 鉄補充や輸血、内視鏡治療、手術、sirolimusなどの薬物療法から、病変の広がりと出血量で選ぶ |
青色ゴムまり様母斑症候群とは
皮膚に青みを帯びた柔らかい結節(ゴム乳首のような感触と表現されます)が多発し、消化管にも同じような血管の病変ができる病気です。英語ではblue rubber bleb nevus syndrome(BRBNS)、考案者の名前からBean症候群ともよばれます。皮膚・消化管のほか、中枢神経、肝臓、脾臓、肺、甲状腺などにも病変が報告されています(Lasso Andrade 2021、Jin 2014)。
「母斑」「血管腫」という名前が使われてきましたが、病変の本体は静脈奇形(静脈が異常に集まってできる血管の奇形)です。静脈奇形は、血管の内側の細胞が増えて大きくなる腫瘍(乳児血管腫など)とは違う仲間として、血管異常の国際分類(ISSVA分類)で整理されています。分類は2018年の改訂のあと、2025年に更新版が公表されました(Goldenberg 2025)。静脈奇形の画像の基本は、体表の血管腫と血管奇形の記事や軟部組織の静脈奇形のMRIの記事にまとめています。
原因については、2017年の研究で、BRBNSの17人中15人の病変にTEK(TIE2)遺伝子の体細胞変異(生まれたあとに病変の細胞で起きた変異)が見つかりました。同じ人のすべての病変に同じ変異があったと報告されています(Soblet 2017)。診断は主に臨床像で行われ、遺伝子検査で診断された例は成人の報告の1%でした(Kozai 2023)。
症状と、どこに病変ができるか
成人の症例報告・症例集積99論文(101例)をまとめた報告では、次のような頻度でした(Kozai 2023)。
| 項目 | 報告された割合 |
|---|---|
| 貧血 | 50.5% |
| 黒色便(メレナ) | 26.5% |
| 口腔内の血管奇形 | 55.9% |
| 小腸の血管奇形 | 49.5% |
| 大腸・直腸の血管奇形 | 35.6% |
| 胃の血管奇形 | 26.7% |
| 皮膚の血管奇形が確認されていた人 | 57.4% |
最後の項目が重要です。皮膚の病変が目立たない成人も少なくなく、「皮膚に何もないから違う」とは言えません。この論文は、難治性の小球性貧血や原因不明の消化管出血の背景に、成人のBRBNSが隠れている可能性を指摘しています(Kozai 2023)。
消化管病変は、慢性の出血と鉄欠乏性貧血が主な問題です。そのほか、病変の破裂、腸のねじれ、腸重積といった重い合併症を起こしえます(Jin 2014)。皮膚の病変は症状が少なく、通常は治療を必要としないとされます(Jin 2014)。
画像で見える所見
皮膚・軟部組織のMRI
静脈奇形は血流が遅い病変で、MRIのT2強調像で明るい(高信号)、内部に石灰化した小さな塊である静脈石(phlebolith)を伴うことがある、というのが基本の見え方です。複数の袋がぶどうの房のように集まって見えることもあります。詳しくは軟部組織の血管腫・静脈奇形のMRIを参照してください。BRBNSでは、これが体のあちこちに多発します。
消化管の病変と造影CT
消化管の病変は、粘膜下に青紫色の隆起として内視鏡で見つかります。小腸は内視鏡が届きにくいため、小腸の評価には造影CTやカプセル内視鏡、小腸内視鏡を組み合わせます。腸重積を起こした症例では、造影CTで腸が筒状に重なる像として見つかります(Hu 2020)。出血が続く場面では、CTで出血源を探す流れになります(下部消化管出血の原因と造影CT)。
画像診断では、粘膜下腫瘍のような壁の突出が多発していないか、腸重積を示す同心円の像がないかを確認します。
他の臓器
肝臓や脾臓にも血管腫様の病変が見られることがあります(Lasso Andrade 2021)。腸重積を起こした症例の造影CTでも、肝臓に血管腫または血管奇形が疑われる病変が指摘されています(Hu 2020)。脾臓の血管病変の見え方は、脾血管腫のCT・MRIの記事が参考になります。中枢神経にも病変が起こりえます(Lasso Andrade 2021)。
症例 30歳代男性 腸重積を起こした青色ゴムまり様母斑症候群

引用:Hu Z et al. Medicine (Baltimore) 2020;99(28):e21199(Figure 2)、CC BY 4.0。PMC
造影CTで肝臓に血管腫または血管奇形が疑われる所見(A)があり、腹部から骨盤にかけて、腸が筒状に重なるsleeve sheath signと同心円状の像(B〜D)から腸重積と診断されています。論文では、33歳男性で、緊急手術で腸重積が治療されたと記載されています。
症例 同じ症例の皮膚の青い結節

引用:Hu Z et al. Medicine (Baltimore) 2020;99(28):e21199(Figure 1)、CC BY 4.0。PMC
頭頸部(A)、胸部(B)、腹部(C)、足底(D)に、赤い矢印で示した青みがかった結節が多発しています。このように皮膚の病変が散らばって見えるのが、診断の手がかりになります。
見分ける病気
皮膚や軟部に血管の病変が多発する病気はほかにもあります。皮膚の所見と骨・四肢の変化、消化管出血の有無で整理すると考えやすくなります。
| 病気 | 特徴 |
|---|---|
| 青色ゴムまり様母斑症候群 | 皮膚と消化管の静脈奇形が多発。消化管出血・貧血 |
| Klippel-Trenaunay症候群 | 四肢の片側の肥大に、皮膚の血管奇形・静脈瘤を伴う |
| Maffucci症候群 | 多発する内軟骨腫に血管奇形(静脈石を伴うことが多い)を伴う |
| Kasabach-Merritt現象 | 大きな血管病変に血小板減少・凝固異常を伴う |
| Osler病(HHT) | 鼻出血と、肺・肝・脳などの動静脈奇形。消化管の毛細血管拡張による出血 |
治療の考え方
貧血が軽い場合は、鉄の補充や輸血などの支持療法で経過を見ます。出血が多い、合併症があるときは、内視鏡での硬化療法や焼灼、手術による切除などが検討されます(Jin 2014)。
治療法を整理した系統的レビュー(76報告・106例)では、臨床的な成功率は92.4%でした。再発や前の治療が効かなかった場合は、内視鏡よりも全身の薬物療法が第2選択として選ばれる傾向がありましたが、薬では副作用の報告が手術や内視鏡より多くなっていました。内視鏡治療は、病変をなくすのに手術より多くの回数を要しました(Rimondi 2024)。
薬物療法の代表はmTOR阻害薬のsirolimusです。症例報告のレビュー(23例)では、消化管病変の改善を報告した18例中17例、皮膚病変の改善を報告した22例中21例で改善が見られ、1例を除き忍容性は良好でした(Wong 2019)。ただし対象は少数の症例報告で、使い方や適した人は今後の検討課題です(Kozai 2023)。治療は専門施設で決めます。
画像診断で気をつけること
- 原因不明の鉄欠乏性貧血や黒色便では、皮膚・口の中・舌の青い結節の有無を確認する(口腔内病変は55.9%、Kozai 2023)
- 皮膚の病変が目立たない人もいる(皮膚病変が確認されたのは57.4%、Kozai 2023)
- 小腸の評価は内視鏡だけでは届かないので、造影CT・カプセル・小腸内視鏡を組み合わせる
- 腸に突出する腫瘤は、腸重積の先進部として見落とさない(Hu 2020)
- 造影CTで肝臓・脾臓の血管腫様の病変も拾い、他臓器の病変のヒントにする
- 皮膚・軟部のMRIで静脈奇形(T2高信号・静脈石)を確かめる
よくある疑問(Q&A)
Q. どんな合併症に注意が必要ですか?
A. 消化管の病変の破裂、腸のねじれ、腸重積などが報告されています(Jin 2014)。強い腹痛や嘔吐、腹部の張りが急に出たときは、早めに受診してください(腸重積の症例報告では、続く疝痛(さし込むような痛み)・吐き気・腹部膨満が受診のきっかけでした、Hu 2020)。
Q. 皮膚に病変がなければ、この病気ではありませんか?
A. 成人の報告では、皮膚の血管奇形が確認されていたのは57.4%で、皮膚が目立たないこともあります(Kozai 2023)。貧血や消化管出血があれば、口の中や消化管も調べる価値があります。
Q. 治療で薬を使うのは一般的ですか?
A. 内視鏡治療や手術で効果が出ない・再発した場合に、sirolimusなどの薬物療法が選ばれることがあります(Rimondi 2024)。少数の症例報告に基づく治療で、副作用もあるため、専門施設で相談してください。
Q. 気になる症状があれば?
A. 皮膚の青い結節に加えて、黒い便や強い貧血、激しい腹痛がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
あわせて読みたい:Cronkhite-Canada症候群の画像
参考文献
- Kozai L, Nishimura Y. Clinical characteristics of blue rubber bleb nevus syndrome in adults: systematic scoping review. Scand J Gastroenterol. 2023;58(10):1108-1114. PubMed
- Soblet J, Kangas J, Nätynki M, et al. Blue Rubber Bleb Nevus (BRBN) Syndrome Is Caused by Somatic TEK (TIE2) Mutations. J Invest Dermatol. 2017;137(1):207-216. PubMed
- Rimondi A, Sorge A, Murino A, et al. Treatment options for gastrointestinal bleeding blue rubber bleb nevus syndrome: Systematic review. Dig Endosc. 2024;36(2):162-171. PubMed
- Wong XL, Phan K, Rodríguez Bandera AI, et al. Sirolimus in blue rubber bleb naevus syndrome: A systematic review. J Paediatr Child Health. 2019;55(2):152-155. PubMed
- Hu Z, Lin X, Zhong J, et al. Blue rubber bleb nevus syndrome with the complication of intussusception: A case report and literature review. Medicine (Baltimore). 2020;99(28):e21199. PubMed
- Jin XL, Wang ZH, Xiao XB, et al. Blue rubber bleb nevus syndrome: a case report and literature review. World J Gastroenterol. 2014;20(45):17254-9. PubMed
- Lasso Andrade FA, Cadena Arteaga JA, Echeverry Morillo VL, et al. Blue rubber bleb nevus syndrome: Presentation of a case and review of the literature. Radiol Case Rep. 2021;16(8):2003-2006. PubMed
- Goldenberg DC, Vikkula M, Penington A, et al. Updated Classification of Vascular Anomalies. A living document from the International Society for the Study of Vascular Anomalies Classification Group. J Vasc Anom (Phila). 2025;6(2). PubMed
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