
先に結論:縦隔の浸潤性の軟部影と、血管・気道の狭窄を見る。石灰化は手がかりだが、ないこともある
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 縦隔に線維組織が増える、まれな良性の病気。局所型とびまん型がある(Rossi 2001) |
| CTの特徴 | 石灰化を伴うこともある浸潤性の縦隔の軟部影と、血管・気道の圧排・閉塞(Garrana 2019) |
| 狭窄しやすい所 | 上大静脈、肺動脈、肺静脈、気管・気管支、食道(Rossi 2001) |
| 原因 | ヒストプラズマ感染への免疫反応、結核、IgG4関連疾患、原因不明(特発性) |
| 注意 | 悪性腫瘍と症状が似るため、初回と経過観察の画像で悪性の除外が大切(Garrana 2019) |
縦隔線維症とは
縦隔線維症(fibrosing mediastinitis)は、縦隔に細胞成分の乏しい膠原線維と線維組織が増える、まれな良性の病気です(Rossi 2001)。「硬化性縦隔炎」とも呼ばれ、炎症のあとに縦隔が線維に置き換わっていきます(Unterman 2026)。良性ですが、重要な構造を圧迫・閉塞して命にかかわることもあります(Garrana 2019)。縦隔の区分は縦隔とは?どこにある?で確認できます。
画像からは、広がり方で「局所型」と「びまん型」に分けて考えます。
| 項目 | 局所型 | びまん型 |
|---|---|---|
| 頻度 | 多い | 少ない |
| CT・MRIの見え方 | 気管周囲、気管分岐部下、肺門の限局した腫瘤。石灰化を伴うことが多い | 複数の縦隔区画に広がる浸潤性の影。石灰化は少ない |
| 背景 | ヒストプラズマ感染への異常な免疫反応 | 特発性や自己免疫が背景のことがある |
| 年齢・性別 | 若い人が多く、性差はない | 中年〜高齢に多く、男性に多い |
(Rossi 2001、Garrana 2019)
症状は、咳、息切れ、繰り返す肺炎、喀血、胸痛など、圧迫される構造に応じたものです(Garrana 2019)。12例の検討では、最も多い症状は息切れでした(Devaraj 2007)。息切れの画像の見方は息切れ・呼吸困難の胸部画像も参考になります。
原因:何が縦隔を線維化させるのか
| 原因 | ポイント |
|---|---|
| ヒストプラズマ | 米国では、ヒストプラズマ菌への異常な免疫反応が原因の多数を占めると考えられています(Rossi 2001)。主に流行地域の問題で、地域によって原因の頻度は異なります |
| 結核 | ヒストプラズマが最も多い原因とされる一方、結核との関連は報告が少ない(Wu 2017) |
| IgG4関連疾患 | IgG4関連疾患の一病型として縦隔線維症を来すことがある(Zhang 2020) |
| 特発性 | 原因がつかめない例。12例の検討では7例が特発性でした(Devaraj 2007) |
ヒストプラズマ症や肉芽腫性疾患が背景にある縦隔線維症15例の手術検体を調べた研究では、3例がIgG4関連疾患の病理基準を満たし、IgG4関連疾患に似た病理所見も多く(渦巻き状の線維化11例、リンパ球と形質細胞の浸潤7例)、約3分の1がIgG4関連疾患の範囲に入る所見を示しました(Peikert 2012)。感染後の変化かIgG4関連疾患の一部かは、はっきりしていません(Peikert 2012)。
施設による原因の違いもあります。12例を検討した施設では、以前は多くが結核によるとされていたのに対し、この検討では原因不明が多数でした(Devaraj 2007)。原因は国や施設で変わるため、画像だけで決めつけず、感染歴や血液検査、必要なら病理を合わせて考えます。背景に肺の感染や肉芽腫の所見がないかも確認します(免疫不全の肺炎の画像診断も参考になります)。
CTの読み方:見る順番
| 順番 | 見る所 | 所見 |
|---|---|---|
| 1 | 縦隔の影の広がり | 気管周囲・気管分岐部下・肺門の局所か、複数区画に広がるびまん型か |
| 2 | 石灰化 | あれば縦隔線維症を支持する所見だが、ないことも多い |
| 3 | 血管 | 上大静脈、肺動脈、肺静脈の壁の不整や狭窄・閉塞 |
| 4 | 気道・食道 | 気管・気管支の狭窄、食道の圧排 |
| 5 | 肺野 | 狭窄に伴う肺の変化と、原因となる肺の病変(Devaraj 2007) |
| 6 | 経過 | 前の画像と比べて広がっていないか、悪性を疑う変化はないか |
(Rossi 2001、Garrana 2019、Devaraj 2007)
12例のCTの検討では、縦隔の影が局所だったのは7例、びまん性は5例で、石灰化があったのは2例だけでした。11例に縦隔の構造の狭窄があり、肺動脈5例、上大静脈5例、気管支4例、気管3例、肺静脈1例でした。8例には肺野の変化もあり、原因が分かっている例では全例にありました(Devaraj 2007)。この検討でも、局所の縦隔の影が多く、前縦隔の関与が最も多いと報告されています(Devaraj 2007)。
症例 成人男性 縦隔線維症

引用:Unterman K, et al. Cureus. 2026;18(1):e101085 (Figure 2). PubMed/CC BY 4.0(図は加工していません)
造影CTの横断像で、縦隔にびまん性に浸潤する軟部組織があり、石灰化を伴っています(矢印)。症例の報告では、この所見と症状から縦隔線維症と診断され、肺がんは生検で除外されたと記載されています。
血管と気道の狭窄を拾う
狭窄は、軸位断だけでは見落としやすいため、造影CTの冠状断・矢状断の再構成(MPR・MIP・MinIP・VR)で血管と気道の連続性を確認します。
| 狭窄する構造 | 起こること |
|---|---|
| 上大静脈 | 顔や腕のむくみ、頸部や胸壁の静脈の拡張(上大静脈症候群) |
| 肺動脈・肺静脈 | 血流が妨げられ、肺高血圧につながる |
| 気管・気管支 | 咳、繰り返す肺炎、喀血 |
| 食道 | 飲み込みにくさ |
(Rossi 2001、Garrana 2019)
肺の血管の狭窄は、思っているより広がっていることがあります。縦隔線維症56例の検討では、二相の造影CT血管撮影で、85.7%が肺動脈と肺静脈の両方に病変があり、肺静脈では上肺静脈の関与が下肺静脈より多く、右下肺静脈が最も少ないという結果でした。多くは中等度〜高度の狭窄で、狭窄の程度を点数化すると、肺動脈圧や肺血管抵抗と相関していました(Wang 2024)。
症例 成人男性 上大静脈の狭窄と石灰化

引用:Unterman K, et al. Cureus. 2026;18(1):e101085 (Figure 1). PubMed/CC BY 4.0(図は加工していません)
造影CTの冠状断で、縦隔の線維化による外からの圧迫のために、上大静脈の狭窄と石灰化がみられます(矢印)。症例の報告では、上大静脈症候群で受診した患者さんの画像とされています。
CT・MRIの使い分けとレポートに書く項目
局所型も、びまん型も、診断と管理にCTとMRIが重要な役割を果たします(Rossi 2001)。石灰化の確認はCTが得意で、血管の内腔を見るには造影CTが必要です(Unterman 2026)。造影剤が使えない場合や、CTだけでは判断が難しい場合はMRIが選択肢になります。
| レポートに書く項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 広がり | 局所型かびまん型か、関与している縦隔の区画 |
| 石灰化 | あり・なし、分布 |
| 狭窄・閉塞 | 上大静脈、肺動脈、肺静脈、気管・気管支、食道のどれが、どの程度か |
| 肺の所見 | 狭窄に伴う変化、背景となる肺の病変 |
| 悪性の除外 | 悪性を疑う所見の有無と、追加検査の提案 |
| 経過 | 前回との比較(進行、合併症、治療への反応) |
(Garrana 2019)
IgG4関連の縦隔線維症
IgG4関連疾患の縦隔線維症(IgG4-RFM)20例を、IgG4関連疾患で縦隔線維症のない60例と比べた研究では、研究したコホートでの縦隔線維症の割合は2.8%で、平均年齢は51.7歳、男性が60%でした。画像の特徴は、大動脈周囲の腫瘤(75%)と脊椎傍らの腫瘤(35%)で、縦隔線維症のない群と比べて、血清IgG4は低く、赤沈やCRPは高いという違いがありました(Zhang 2020)。この研究では、治療後に94.7%で縦隔軟部組織が30%を超えて縮小しています(Zhang 2020)。治療の選択は専門医の判断になります。
悪性腫瘍との区別
縦隔線維症は、悪性腫瘍と症状が似て見えることがあり、まず悪性を除外する必要があります(Unterman 2026)。初回の画像と経過観察の画像の両方で、悪性腫瘍の除外、進行の有無、合併症、治療への反応を確かめることが大切です(Garrana 2019)。腫瘤か浸潤性の変化か迷うときは、腫瘤の由来臓器の見分け方の考え方も役立ちます。
画像だけでは確定できないことが多く、生検が必要かどうかは、臨床経過や他の検査と合わせて主治医が判断します。
見落としやすいポイント
| 場面 | 注意すること |
|---|---|
| 単純CTだけ | 血管の内腔が分かりにくい。血管の評価には造影CTが必要(Unterman 2026) |
| 縦隔の影だけを見る | 肺静脈・肺動脈・気管支の狭窄を拾い忘れない |
| 石灰化がない | びまん型では石灰化がないことが多い。石灰化がなくても否定しない |
| IgG4関連を知らない | 大動脈周囲や脊椎傍らの腫瘤、他臓器病変を探す |
| 1回きりの評価 | 前の画像と比べて増大していないか確認する |
よくある疑問(Q&A)
Q. 縦隔線維症はがんですか?
A. 良性の病気で、縦隔に線維組織が増える状態です(Rossi 2001)。ただし症状や画像が悪性腫瘍に似ることがあるため、悪性の除外が大切です(Unterman 2026)。
Q. 石灰化がないと縦隔線維症ではないのですか?
A. そうとは限りません。局所型は石灰化を伴うことが多い一方、びまん型は石灰化を伴わないことが多いと報告されています(Rossi 2001)。
Q. IgG4関連の縦隔線維症は、普通の縦隔線維症と何が違いますか?
A. 大動脈周囲や脊椎傍らの腫瘤が多く、血清IgG4が低めで赤沈やCRPが高いなどの特徴が報告されています(Zhang 2020)。診断は画像、血液、病理を合わせて行います。
Q. 息切れや顔のむくみが続くときは?
A. 縦隔の血管や気道が圧迫されている可能性があります。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
あわせて読みたい:重複大動脈弓(血管輪)とは
参考文献
- Rossi SE, McAdams HP, Rosado-de-Christenson ML, et al. Fibrosing mediastinitis. Radiographics. 2001;21(3):737-57. PubMed
- Devaraj A, Griffin N, Nicholson AG, Padley SP. Computed tomography findings in fibrosing mediastinitis. Clin Radiol. 2007;62(8):781-6. PubMed
- Garrana SH, Buckley JR, Rosado-de-Christenson ML, et al. Multimodality Imaging of Focal and Diffuse Fibrosing Mediastinitis. Radiographics. 2019;39(3):651-667. PubMed
- Peikert T, Shrestha B, Aubry MC, et al. Histopathologic Overlap between Fibrosing Mediastinitis and IgG4-Related Disease. Int J Rheumatol. 2012;2012:207056. PubMed
- Zhang P, Han X, Li J, et al. IgG4-related fibrosing mediastinitis: clinical presentation, treatment efficacy and comparison with IgG4-RD without fibrosing mediastinitis. Clin Exp Rheumatol. 2020;38(6):1206-1214. PubMed
- Wu Z, Jarvis H, Howard LS, et al. Post-tuberculous fibrosing mediastinitis: a review of the literature. BMJ Open Respir Res. 2017;4(1):e000174. PubMed
- Wang Y, Bu C, Zhang M, et al. Pulmonary vascular stenosis scoring in fibrosing mediastinitis. Eur Heart J Imaging Methods Pract. 2024;2(1):qyae034. PubMed
- Unterman K, Gamard C, Dorr A, et al. Presentation of Superior Vena Cava Syndrome as a Consequence of Fibrosing Mediastinitis. Cureus. 2026;18(1):e101085. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
