
先に結論:心臓の軸に合わせた断面で、シネ(動き)・T2(浮腫)・遅延造影(瘢痕)を重ねて読む
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 断面 | 心臓は体の軸に対して斜めに位置するため、心臓の軸に合わせた短軸・四腔・二腔・三腔の断面で見る |
| シネ | 心臓の動きを動画で見る。壁の動き、心室の大きさ、駆出率(EF)を評価する |
| T2強調像 | 心筋の浮腫(むくみ)を見る。急性の障害や炎症で高くなる |
| 遅延造影(LGE) | 造影剤が長く残る部位を見る。心筋の壊死・線維化(瘢痕)の分布と広がりを評価する |
| 場所の表し方 | 左室を17の領域に分けて、冠動脈の支配域と対応させる |
なぜ心臓の軸に合わせた断面で見るのか
CTやMRIの通常の横断像は、体の軸に対して垂直に切った断面です。ところが心臓は、体の中で斜めに傾いて位置しているため、横断像のままでは、左室の壁を正しい角度で見られません。そこで心臓MRIでは、左室の軸に合わせて断面を決め直します。最初に体軸・冠状・矢状の位置決め画像(スカウト)を撮り、その上で二腔、四腔、短軸の順に断面を設定していくのが標準的な流れです(Kramer 2020)。
心臓MRIの4つの基本断面
| 断面 | どう切るか | 何が見えるか |
|---|---|---|
| 短軸像 | 左室の長軸に垂直に、基部(弁の側)から心尖部まで連続して切る | 左室がドーナツ状に見える。壁全周の厚さと動き、右室との位置関係 |
| 二腔像(垂直長軸像) | 左室の長軸に沿い、前壁と下壁を通る | 左房・左室の2つの腔。前壁と下壁の動きと瘢痕 |
| 四腔像(水平長軸像) | 心尖と、僧帽弁・三尖弁の中心を通る | 左右の心房と心室の4つの腔。心室中隔と側壁、右室、心尖部 |
| 三腔像 | 心尖、僧帽弁の中心、左室流出路から大動脈弁を通る | 左室、左房、大動脈基部。流出路や大動脈弁の評価 |
撮像のとき、二腔像を最初に決め、そこから四腔像を設定します。短軸像は、二腔像と四腔像の両方を使って、左室の長軸に垂直になるよう設定します。三腔像は、基部の短軸像を見ながら左室流出路に合わせて決めます(Kramer 2020)。実際の画面では、それぞれの断面の向きと見える構造を、いつも対応させて確認します。
17分割で場所を表す
左室の場所は、米国心臓協会(AHA)の17分割モデルで表します(Cerqueira 2002)。短軸像で、基部(弁に近い側)を6、中部を6、心尖部寄りを4分割し、心尖の先端(心尖キャップ)を1として、合計17とします。心臓MRIの読影の標準化に関する文書でも、病変の場所と広がりはこの17分割で示すとされています(Schulz-Menger 2020)。冠動脈の支配域とおおまかに対応するため、「どの冠動脈の病変か」を考える手がかりになります。冠動脈や心臓の正常な解剖は心臓CTの正常解剖で確認できます。
撮像の役割:シネ・T2・遅延造影
| 撮像 | 何を見るか | 読み方の例 |
|---|---|---|
| シネ | 形と動き | 壁が厚いか薄いか、動きが低下(壁運動低下)した部位はないか、左室の大きさとEF |
| T2強調像(またはT2マッピング) | 心筋の浮腫 | 高信号の領域が、壁運動の低下した場所と一致するか |
| 遅延造影(LGE) | 壊死・線維化(瘢痕) | 白く光る部位の分布(心内膜下か、中層か、心外膜側か)と、壁の厚みに対する広がり |
シネ:動きと大きさを見る
シネは、息を止めている間に、心周期を通して連続して撮る動画です。短軸を基部から心尖まで重ねて撮り、左室の容積と駆出率を測ります。二腔・三腔・四腔の長軸像を足すと、前壁・下壁・中隔・側壁の動きを別々の方向から確認できます。壁運動の低下は、冠動脈の閉塞だけでなく、心筋炎、心筋症、たこつぼ心筋症などでも見られるので、シネだけでは原因を決めません(たこつぼ心筋症の画像診断)。
T2:浮腫は「2方向で確認」
T2強調像(STIRなど)やT2マッピングで、心筋の高信号が浮腫を示します。ただし、見た目の高信号がすべて浮腫とは限りません。標準化の文書では、浮腫と判断する条件として、解剖学的な境界を守る明らかな高信号領域であること、想定される分布(貫壁性、心内膜下、心外膜下、局所)に合うこと、直交する2つの断面で確認できることが示されています。表面コイルの感度のムラで、コイルに遠い部位の信号が低く、近い部位が高く見えることがあるので、注意が必要です(Schulz-Menger 2020)。
遅延造影:瘢痕の「形」を読む
遅延造影は、造影剤を入れてから10分ほど待って撮ります(Kramer 2020)。正常な心筋は暗く、造影剤が残る壊死・線維化の部分が明るく写ります。標準化の文書では、遅延造影のパターンを次の2つに分けて評価するとされています(Schulz-Menger 2020)。
| 型 | 見え方 | 考える病気 |
|---|---|---|
| 冠動脈疾患型 | 心内膜下を含み、冠動脈の支配域に一致する | 心筋梗塞 |
| 非冠動脈疾患型 | 多くは心内膜下を避け、中層または心外膜側にある | 心筋炎、心筋症、サルコイドーシスなど |
ただし、心内膜下の病変が全周に及ぶ場合は、冠動脈疾患とは別の病気も考えます(Schulz-Menger 2020)。壁の厚みに対する遅延造影の広がりは、各領域で0%、1〜25%、26〜50%、51〜75%、76〜100%の5段階で見積もります。パターンごとの病気の見分け方は心臓MRIの遅延造影(LGE)とは、サルコイドーシスの所見は心サルコイドーシスのMRIで解説しています。
なぜ遅延造影の広がりを測るのか
心筋梗塞では、遅延造影が壁のどこまで及ぶかが、血行再建後の動きの回復を予測する手がかりになります。冠動脈疾患で左室の動きが悪い50人を、血行再建の前に造影MRIで調べた研究では、動きが悪かった804領域のうち、遅延造影がなかった329領域の78%(256領域)で血行再建後に収縮が改善しました。一方、壁の75%を超えて遅延造影があった58領域では、改善したのは1領域だけでした(Kim 2000)。このため、シネで動きが悪い部位が、遅延造影でどのくらい瘢痕かを重ねて見ることに意味があります。
症例 40歳代男性 心筋梗塞(亜急性期)

引用:Radiopaedia(Myocardial infarction)
心臓MRIの短軸像です。左室が輪切りになり、環状の心筋の内側に血液が見えています。症例ページでは、同じ症例で下壁・下側壁の心内膜下に、壁厚の50%未満の遅延造影を認め、下乳頭筋にも及ぶと記載されています。

引用:Radiopaedia(Myocardial infarction)
同じ症例のT2-STIR像(四腔像)です。症例ページでは、遅延造影のあった下壁・下側壁に一致して、T2-STIRで高信号(心筋の浮腫)を認め、その部位の壁運動低下があり、左室全体の収縮は保たれている(LVEF 60%)と記載されています。心内膜下の遅延造影と、同じ場所の浮腫の組み合わせが、心筋梗塞を示唆します。
T2とT1で炎症を考える(心筋炎)
心筋炎などの炎症では、T2とT1の両方の手がかりを重ねます。2018年の専門家の提言(Lake Louise基準の更新)では、T2に基づく指標(T2の延長やT2強調像の高信号)が少なくとも1つ、T1に基づく指標(T1の延長、細胞外容積、遅延造影)が少なくとも1つあれば、心筋の炎症を強く示唆するとされています。どちらか一方だけでも、臨床の状況によっては炎症を支持しますが、特異度は下がります(Ferreira 2018)。
読影の流れ(まとめ)
- 短軸像で左室の厚さ・大きさ・動きを、基部から心尖まで順に見る
- 四腔・二腔・三腔像で、壁運動の低下した場所を長軸方向でも確認する
- T2強調像で、同じ場所に浮腫があるか(2方向で確認)
- 遅延造影で、瘢痕の有無と型(心内膜下か、中層・心外膜側か)、広がりを見る
- 場所を17分割で表し、冠動脈の支配域と合うかを考える
胸痛や息切れ、動悸などの症状がある場合は、医療機関に相談してください。検査前に控える薬や、造影剤の使い方は、主治医と検査施設の指示に従ってください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 短軸像だけでも評価できますか?
A. 左室全体の動きと厚さは短軸像で評価できますが、心尖部や、弁・流出路に近い部分は、長軸像のほうが見やすいことがあります。短軸と長軸を組み合わせて、同じ場所を別の方向からも確かめるのが基本です。
Q. T2強調像で高信号なら、いつも浮腫ですか?
A. そうとは言い切れません。コイルの感度のムラなどが原因で、高信号に見えることがあります。直交する2つの断面で確認し、壁運動の低下や遅延造影の場所と合うかを見ます(Schulz-Menger 2020)。
Q. 遅延造影が心内膜下にあれば、心筋梗塞と決められますか?
A. 冠動脈疾患型のパターンですが、冠動脈の支配域に一致するか、臨床経過と合うかを確認します。全周性の心内膜下の遅延造影は、冠動脈疾患とは別の病気も考えます(Schulz-Menger 2020)。
Q. 初心者は、どこから練習するとよいですか?
A. 正常の短軸像を、基部・中部・心尖部の3つの高さで見分けられるようにするところから始めます。そのうえで、二腔・四腔・三腔の長軸像と対応させて、17分割のどの場所かを言えるようにします。
あわせて読みたい:心エコーの正常値
参考文献
- Kramer CM, Barkhausen J, Bucciarelli-Ducci C, et al. Standardized cardiovascular magnetic resonance imaging (CMR) protocols: 2020 update. J Cardiovasc Magn Reson. 2020;22(1):17. PubMed
- Schulz-Menger J, Bluemke DA, Bremerich J, et al. Standardized image interpretation and post-processing in cardiovascular magnetic resonance – 2020 update: Society for Cardiovascular Magnetic Resonance (SCMR): Board of Trustees Task Force on Standardized Post-Processing. J Cardiovasc Magn Reson. 2020;22(1):19. PubMed
- Cerqueira MD, Weissman NJ, Dilsizian V, et al. Standardized myocardial segmentation and nomenclature for tomographic imaging of the heart. A statement for healthcare professionals from the Cardiac Imaging Committee of the Council on Clinical Cardiology of the American Heart Association. Circulation. 2002;105(4):539-42. PubMed
- Kim RJ, Wu E, Rafael A, et al. The use of contrast-enhanced magnetic resonance imaging to identify reversible myocardial dysfunction. N Engl J Med. 2000;343(20):1445-53. PubMed
- Ferreira VM, Schulz-Menger J, Holmvang G, et al. Cardiovascular Magnetic Resonance in Nonischemic Myocardial Inflammation: Expert Recommendations. J Am Coll Cardiol. 2018;72(24):3158-3176. PubMed
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