腹部CTを読影していると、消化管内に非常に高吸収な物質を認めることがあります。

一見すると、消化管出血、石灰化、異物、糞石などを疑いたくなる所見ですが、実際には胃透視や注腸検査後に残存したバリウムであることがあります。

本記事では、バリウム検査後のCTで見える高吸収について、出血・石灰化・異物と誤らないための画像診断ポイントをまとめます。

バリウムはCTでどのように見えるか

バリウムはX線吸収が高く、CTでは非常に高吸収に描出される。

胃透視や注腸検査後に消化管内へ残存したバリウムは、胃内、小腸内、大腸内、虫垂内などに高吸収物として認められることがある。濃度が高い場合には、周囲にビームハードニングアーチファクトやストリークアーチファクトを伴い、近接する腸管壁や周囲脂肪織の評価が難しくなることがある

したがって、消化管内に強い高吸収を見た場合には、まず直近の胃透視、注腸検査、バリウム検診歴を確認することが重要である。

残存バリウムの見え方

残存バリウムは以下のような形で認められる。

  • 胃内・腸管内に沈殿する強い高吸収
  • 大腸内に連続して分布する高吸収便
  • 虫垂内に限局する線状・結節状高吸収
  • 高吸収物の周囲にストリークアーチファクトを伴う所見
  • 憩室内や虫垂内に残存する高吸収物

特に虫垂内にバリウムが残存すると、虫垂結石のように見えることがあり、まれに虫垂炎の原因となることが報告されている。

症例 60歳代男性 前日に注腸透視検査

結腸内を中心にアーチファクトを伴う非常に高吸収なバリウムが残存しており、腹部の評価が困難になっていることがわかります。

鑑別すべき所見

消化管内の高吸収を見た場合、以下を鑑別に挙げる。

  • 残存バリウム
  • 消化管出血
  • 石灰化・糞石
  • 異物
  • 内服薬残渣
  • 造影剤残存
  • 透析患者におけるリン吸着薬由来の高吸収

単に「白く見える」だけで診断するのではなく、分布、形状、検査歴、内服歴、単純相と造影相の変化を確認する必要がある。

出血との鑑別

消化管出血でも、単純CTで腸管内に高吸収内容物を認めることがある。また、造影CTでは活動性出血が造影剤の血管外漏出として描出される。

一方、残存バリウムは単純CTの時点ですでに非常に高吸収であり、造影相で新たに出現するものではない。したがって、活動性出血との鑑別では、単純相から存在するか、造影相で新たに出現・増加するかを確認することが重要である。

バリウム検査歴がある場合、消化管内の強い高吸収を安易に出血と判断しない。

石灰化・異物との鑑別

残存バリウムは、虫垂内、憩室内、腸管内に限局していると、石灰化や異物のように見えることがある。

石灰化や異物との鑑別では、以下を確認する。

  • 消化管内腔に沿って分布しているか
  • 過去に胃透視・注腸検査を受けていないか
  • 同様の高吸収物が大腸内に多発していないか
  • 虫垂内に限局している場合、虫垂腫大や周囲脂肪織濃度上昇を伴うか
  • 穿孔、膿瘍、腹水、遊離ガスを伴うか

高吸収物があるだけでは病的とは限らないが、虫垂炎、腸閉塞、穿孔などの臨床症状を伴う場合には注意が必要である。

バリウム虫垂炎に注意

バリウムが虫垂内に長期間残存すると、虫垂内腔の閉塞や炎症の原因となり、バリウム虫垂炎を来すことがある。

CTでは、虫垂内に非常に高吸収なバリウムを認め、虫垂腫大、壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇、膿瘍形成などを伴う場合がある。

胃透視後やバリウム検診後に右下腹部痛を訴える患者では、虫垂内バリウム残存と虫垂炎の可能性を考える。

透析患者の消化管内高吸収とは別に考える

透析患者では、消化管内に高吸収物を認めることがある。代表的な原因の一つが、リン吸着薬である炭酸ランタンである。

炭酸ランタンは慢性腎臓病・透析患者の高リン血症に用いられる薬剤であり、CTで胃内や腸管内に高吸収物として描出されることが報告されている。

この所見は、バリウム検査後の残存バリウムとは別の機序である。つまり、透析患者で消化管内高吸収を見た場合には、バリウム検査歴だけでなく、炭酸ランタンなどの内服歴も確認する必要がある。

特に透析患者では、残存バリウム、リン吸着薬、内服薬残渣、石灰化などが鑑別に入るため、問診と薬剤歴の確認が重要である。

関連記事:透析患者のCT画像における消化管高吸収!炭酸ランタン(リン吸着薬)の影響を理解する

出典

  1. Shen G, et al. Barium Appendicitis 6 Weeks After Upper Gastrointestinal Imaging: A Case Report. Frontiers in Pediatrics. 2020.
  2. Ko S, et al. Barium Peritonitis Following Upper Gastrointestinal Series. Journal of the Korean Society of Radiology. 2017.
  3. Kampmann J, et al. Lanthanum Carbonate Opacities—A Systematic Review. Diagnostics. 2022.
  4. 小林修三ほか. 炭酸ランタン内服中の血液透析患者における腹部CT胃内高吸収域の検討. 日本透析医学会雑誌. 2015;48(3):169-176.
  5. Yoshida T, et al. Barium appendicitis: A single institution review in Japan. World Journal of Gastrointestinal Surgery. 2016;8(9):651-655.

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