腹部CTを読影していると、消化管内に非常に高吸収な物質を認めることがあります。
一見すると、消化管出血、石灰化、異物、糞石などを疑いたくなる所見ですが、実際には胃透視や注腸検査後に残存したバリウムであることがあります。
本記事では、バリウム検査後のCTで見える高吸収について、出血・石灰化・異物と誤らないための画像診断ポイントをまとめます。
先に結論:バリウム検査後のCTで白く見えるもの
- 胃のバリウム検査(胃透視)や注腸検査のあとは、バリウムが数日〜数週間、腸や虫垂・憩室の中に残ることがあり、CTで金属のように真っ白(非常に高吸収)に写ります。周りに筋状のアーチファクトが出て、近くの評価がしにくくなることもあります
- 出血・石灰化(糞石)・異物・薬の残り・造影剤と間違えないよう、最近のバリウム検査歴を確認し、腸の中に沿った分布・とても高いCT値で見分けます。出血はバリウムほど白くなく、造影で広がる点が違います
- バリウムは便秘で固まると腸閉塞や穿孔の原因になることがあり、虫垂に残ると虫垂炎の原因になることもあります。
- MRIでは、バリウムはCTとは逆に黒っぽく(低信号)写ります
※バリウム検査後に便が出ない・お腹が痛いときは、早めに受診してください。
CTの「高吸収」「高吸収域」とは
CTの高吸収とは、X線を多く吸収する物質がCT値の高い白い色で写ることです。周りより白く見える範囲を高吸収域と呼びます。反対に、黒く写るものは低吸収(低吸収域)と呼びます。
腸管の中で白く見えるものには、バリウム、血液のかたまり、石灰化・糞石、異物、薬の残り、造影剤などがあります。白さの程度(CT値)にも違いがあり、虫垂の中の高吸収物の検討では、バリウムは中央値約10,000HU、通常の糞石は中央値約393HUと大きく異なっていました(Katagiri 2016)。
バリウムはCTでどのように見えるか
バリウムはX線吸収が高く、CTでは非常に高吸収に描出される。
胃透視や注腸検査後に消化管内へ残存したバリウムは、胃内、小腸内、大腸内、虫垂内などに高吸収物として認められることがある。濃度が高い場合には、周囲にビームハードニングアーチファクトやストリークアーチファクトを伴い、近接する腸管壁や周囲脂肪織の評価が難しくなることがある。
したがって、消化管内に強い高吸収を見た場合には、まず直近の胃透視、注腸検査、バリウム検診歴を確認することが重要である。
残存バリウムの見え方
残存バリウムは以下のような形で認められる。
- 胃内・腸管内に沈殿する強い高吸収
- 大腸内に連続して分布する高吸収便
- 虫垂内に限局する線状・結節状高吸収
- 高吸収物の周囲にストリークアーチファクトを伴う所見
- 憩室内や虫垂内に残存する高吸収物
特に虫垂内にバリウムが残存すると、虫垂結石のように見えることがあり、まれに虫垂炎の原因となることが報告されている。国内の単施設検討では、急性虫垂炎396例中12例(3.0%)がバリウム虫垂炎であり、虫垂内高吸収物のCT値は中央値約10,000HU(3,066〜23,423HU)と、通常の糞石(中央値約393HU)より著明に高かった(Katagiri 2016)。
症例 60歳代男性 前日に注腸透視検査

結腸内を中心にアーチファクトを伴う非常に高吸収なバリウムが残存しており、腹部の評価が困難になっていることがわかります。
バリウムはMRIでどう見える?
バリウムはMRIでは、CTのように白くはならず、濃いほど信号が下がり黒っぽく(低信号)写ります(Ballinger 1992)。この性質を利用して、バリウムで便を黒く染めて腸の壁を見やすくするMRコロノグラフィーの方法も報告されています(Lauenstein 2002)。そのため、バリウム検査のあとにMRIを撮ると、腸の中に黒い部分が見えたときは、残ったバリウムの可能性も考えます。
鑑別すべき所見
消化管内の高吸収を見た場合、以下を鑑別に挙げる。
- 残存バリウム
- 消化管出血
- 石灰化・糞石
- 異物
- 内服薬残渣
- 造影剤残存
- 透析患者におけるリン吸着薬由来の高吸収
単に「白く見える」だけで診断するのではなく、分布、形状、検査歴、内服歴、単純相と造影相の変化を確認する必要がある。
出血との鑑別
消化管出血でも、単純CTで腸管内に高吸収内容物を認めることがある。また、造影CTでは活動性出血が造影剤の血管外漏出として描出される。
一方、残存バリウムは単純CTの時点ですでに非常に高吸収であり、造影相で新たに出現するものではない。したがって、活動性出血との鑑別では、単純相から存在するか、造影相で新たに出現・増加するかを確認することが重要である。
バリウム検査歴がある場合、消化管内の強い高吸収を安易に出血と判断しない。
石灰化・異物との鑑別
残存バリウムは、虫垂内、憩室内、腸管内に限局していると、石灰化や異物のように見えることがある。
石灰化や異物との鑑別では、以下を確認する。
- 消化管内腔に沿って分布しているか
- 過去に胃透視・注腸検査を受けていないか
- 同様の高吸収物が大腸内に多発していないか
- 虫垂内に限局している場合、虫垂腫大や周囲脂肪織濃度上昇を伴うか
- 穿孔、膿瘍、腹水、遊離ガスを伴うか
高吸収物があるだけでは病的とは限らないが、虫垂炎、腸閉塞、穿孔などの臨床症状を伴う場合には注意が必要である。バリウム検査後72時間を超えて虫垂内に残存することはまれとされるが、急性虫垂炎の所見がなければ、残存バリウムだけを理由に虫垂切除を行う意義はないと報告されている(Sinha 2015)。固まったバリウム(barolith)による腸閉塞で手術が必要になった例(Noor 2024)や、胃のバリウム検査後の大腸穿孔の報告(Kidogawa 2024)もある。また、高カリウム血症の薬であるジルコニウムシクロケイ酸ナトリウムも消化管内で高吸収を示し、出血と紛らわしいことがあるため(Hines 2025)、単純相から存在するかの確認と内服歴の聴取が重要である。
バリウム虫垂炎に注意
バリウムが虫垂内に長期間残存すると、虫垂内腔の閉塞や炎症の原因となり、バリウム虫垂炎を来すことがある。
CTでは、虫垂内に非常に高吸収なバリウムを認め、虫垂腫大、壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇、膿瘍形成などを伴う場合がある。
胃透視後やバリウム検診後に右下腹部痛を訴える患者では、虫垂内バリウム残存と虫垂炎の可能性を考える。
透析患者の消化管内高吸収とは別に考える
透析患者では、消化管内に高吸収物を認めることがある。代表的な原因の一つが、リン吸着薬である炭酸ランタンである。
炭酸ランタンは慢性腎臓病のリン吸着薬であり、CTで胃内や腸管内に高吸収物として描出されることが報告されている。系統的レビューでは腸管(73%)、胃(21%)の順に多く報告され、異物や造影剤と誤られることが多かった(Kampmann 2022)。
この所見は、バリウム検査後の残存バリウムとは別の機序である。つまり、透析患者で消化管内高吸収を見た場合には、バリウム検査歴だけでなく、炭酸ランタンなどの内服歴も確認する必要がある。
特に透析患者では、残存バリウム、リン吸着薬、内服薬残渣、石灰化などが鑑別に入るため、問診と薬剤歴の確認が重要である。
関連記事:透析患者のCT画像における消化管高吸収!炭酸ランタン(リン吸着薬)の影響を理解する
出典
- Shen G, et al. Barium Appendicitis 6 Weeks After Upper Gastrointestinal Imaging: A Case Report. Frontiers in Pediatrics. 2020.
- Kampmann J, Hansen NP, Ørsted Schultz AN, et al. Lanthanum Carbonate Opacities-A Systematic Review. Diagnostics (Basel). 2022;12(2):464. PubMed
- 浪江 智, 浜辺 定徳, 川冨 正治, ほか. 炭酸ランタン服用患者の胃粘膜へのランタン沈着の検討. 日本透析医学会雑誌. 2015;48(3):169-177. J-STAGE
- Katagiri H, et al. Barium appendicitis: A single institution review in Japan. World Journal of Gastrointestinal Surgery. 2016;8(9):651-655.
あわせて読みたい:胃内の高吸収索状構造の正体は?CTで見える麺類・食物残渣の画像診断ポイント、糞石とは?虫垂のバリウム糞石(盲腸に残るバリウム)とバリウム虫垂炎、CT画像所見と鑑別
参考文献
- Katagiri H, Lefor AK, Kubota T, et al. Barium appendicitis: A single institution review in Japan. World J Gastrointest Surg. 2016;8(9):651-655. PubMed
- Shen G, Sun K, Fan Z. Barium Appendicitis 6 Weeks After Upper Gastrointestinal Imaging. Front Pediatr. 2020;8:535. PubMed
- Kidogawa H, Nonomura R, Uehara T, et al. Two Cases of Colonic Perforation Following Upper Gastrointestinal Barium Examinations. Cureus. 2024;16(12):e74892. PubMed
- Sinha MK, Sinha RK, Gaurav K. Retained barium in the appendix or right ureteric colic? A case report of surgeons dilemma. Int J Surg Case Rep. 2015;7C:23-5. PubMed
- Hines JJ, Roberts J, Katz DS. Sodium Zirconium Cyclosilicate in the Gastrointestinal Tract Mimicking an Acute Gastrointestinal Bleed on CT. Reports (MDPI). 2025;8(2). PubMed
- Noor MS, Liu H, Joutovsky B, et al. Surgical Management of Intestinal Obstruction Secondary to Barium Impaction: Two Exemplary Cases. Cureus. 2024;16(12):e76301. PubMed
- Ballinger JR, Ros PR. High density barium sulfate suspension for MRI: optimization of concentration for bowel opacification. Magn Reson Imaging. 1992;10(4):637-40. PubMed
- Lauenstein TC, Goehde SC, Debatin JF. Fecal tagging: MR colonography without colonic cleansing. Abdom Imaging. 2002;27(4):410-7. PubMed
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