先に結論:乳癌治療と乳房画像診断の総論

  • 乳癌の手術は乳房温存手術とセンチネルリンパ節生検が広く行われ、サブタイプ(ホルモン受容体・HER2・Ki-67)に応じた薬物療法が治療の中心になっています
  • 乳房の画像診断の主な役割は、マンモグラフィ・超音波でのカテゴリー判定と、画像ガイド下の生検での確定診断です
  • 乳房MRIは良悪性の判定より、術前の広がり診断・対側乳房の評価・術前化学療法の効果判定に主に使われます

乳癌の現在の治療

・stage0-Ⅱ(早期):手術±補助療法(術前化学療法(NAC))

・stageⅢ(局所進行):術前化学療法→手術±術後補助療法
→これらは治癒が目的

・stageⅣ(進行・再発):薬物療法±放射線治療±手術
→延命と症状の緩和が目的。

※手術の意義は腫瘤摘出+リンパ節摘出。局所の治療および薬物療法に対する情報入手のため。

乳癌治療の変遷

  • 1890年代 胸筋合併乳房切除(Halstedら)
    (1920-30年代 拡大乳房切除)
  • その後 胸筋温存乳房切除(非定型)
  • さらに 乳房温存手術 Oncoplastic breast surgery

・乳房切除術と乳房温存療法に生存率に有意な差がないことが確認されており、今では乳房温存術が広く行われている。

・最近は乳房温存手術は横ばい〜やや減少。その背景には乳房再建手術。

・センチネルリンパ節生検が普及している。
※センチネルリンパ節=がん細胞が最初に到達するリンパ節の転移の有無が所属リンパ節全体の転移の有無を反映するという考え方。

・乳癌サブタイプ分類に応じた薬物治療が普及している。特に術前化学療法の発展が著しい。

StageⅠ、Ⅱ乳癌の乳房温存療法の適応

1,局所コントロールの安全性と整容性が重要。

2,以前は腫瘍の大きさに上限の目安が設けられていた。

3,現在は腫瘍が大きくても、切除断端陰性かつ整容性が保たれる場合は適応。

※切除断端陽性は局所再発の危険因子。NSABP B-06試験の20年追跡では、乳房部分切除後の温存乳房内再発は照射ありで14.3%、照射なしで39.2%であり、乳房温存療法は術後照射を前提とする(全生存率は乳房切除と同等)。

StageⅠ、Ⅱ乳癌の乳房温存療法の適応外

1,多発巣を異なる腺葉に認める場合。

2,広範囲に乳癌の進展を認める場合。

3,温存療法への照射を行えない場合。
・絶対的禁忌:患側上肢の挙上が不可能、妊娠中、患側乳房の照射の既往。
・相対的禁忌:強皮症、SLEの合併。 

4,温存乳房の整容性が保てない場合。

5,患者が温存を希望しない場合。

※年齢、組織型、腫瘍占拠部位、全身再発のリスクは禁忌因子ではない。

乳房画像診断の特徴

・個人差が大きい:大きさ、乳腺の量。

・女性ホルモンの影響をうける。:月経周期、閉経、ホルモン補充療法。

・表在臓器である。:日本では超音波検査の役割が大きい。画像ガイド下生検の重要性が高い。

・乳腺疾患は多彩で、画像により良性と悪性と 2つに鑑別することが難しい場合が多い。

乳腺疾患の診断の進め方

・治療方針決定のため、組織学的診断が必須:良悪性鑑別、Intrinsic subtypeの検索(HR、HER2、NG、Ki67)。

・診療方針の決定にカテゴリー判定が用いられている。:悪性の可能性の程度を表す。診療方針の標準化と情報の共有化。不必要な生検の回避。

・組織学的診断には画像ガイド下針生検が主に用いられる。臨床所見、画像所見、病理所見の対比が重要。針生検(細胞診)は病変の一部のみを採取しているので。

画像ガイド下細胞診・生検

・画像診断の役割は良悪性の決定より、むしろ生検の適応の決定や画像ガイド下のinterventionにある。

・病変に応じて、どのような方法を使用するか考慮する必要がある。同定されるモダリティ。推定される病理組織像。

使用する画像診断法
  • ステレオガイド下
  • USガイド下
  • MRIガイド下
種類
  • 穿刺吸引細胞診(Fine needle aspiration cytology:FNAC)
  • 針生検(Core needle biopsy:CNB)
  • 吸引式組織生検(Vacuum assisted biopsy:VAB)

※吸引式組織生検が最近は多い。一度でいろんな方向から採取できる利点あり。

FNAC・CNB・VABの違い
穿刺吸引細胞診(FNAC) 針生検(CNB) 吸引式組織生検(VAB)
採れるもの 細胞 組織(細長い検体) 組織(より多くの量)
分かること 良悪性の推定 組織型・浸潤の有無・ホルモン受容体やHER2など CNBと同様。石灰化病変や小さい病変に向く
研究結果 直接比較12研究のメタ解析で、感度はCNB 87%、FNAC 74%、特異度はCNB 98%、FNAC 96%(Wang 2017) CNBに比べ、DCIS・異型乳管過形成の過小評価と再生検が少ない(Sharma 2026)

FNACは細い針で負担が少ない一方、浸潤癌か非浸潤癌かや、治療方針に必要なサブタイプの検索はできません。治療前の診断には組織が採れるCNBやVABが主に使われます。

乳腺疾患の診断のアルゴリズム

乳腺疾患の診断のアルゴリズム

放射線科医はどこで関与するのでしょうか?

実は、乳腺疾患の診断において、

・質的診断にMRやCTが用いられる事は少ない。

ため、質的診断に放射線科医が関与することが少ないのです。

質的診断に基本的には使えず、乳房MRIの役割は

・ほとんどは術前の広がり診断。(19研究のメタアナリシスでは、術前MRIで通常の画像検査では指摘されない病変が16%に見つかり、部分切除から乳房切除への変更は8.1%であった。陽性的中率は66%で、病理で悪性でなかったMRI所見による乳房切除への変更も1.1%あり、偽陽性を減らすことが課題とされている。)
・最近は薬物療法の効果判定(効果予測)
・対側乳房の評価
>>質的診断 

という風に使います。

適応については、乳房MRIの適応を参照してください。

 

乳癌の画像診断・治療でよくある疑問

Q. カテゴリー3と言われたら手術になりますか?
A. カテゴリー3は「良性と思われるが悪性を否定できない」段階で、すぐに手術になるのではなく、超音波などの追加検査や針生検で確かめるのが一般的です。

Q. 乳房の全摘と部分切除(温存)で、生存率に差はありますか?
A. 20年追跡のランダム化試験で、乳房切除と、部分切除+放射線照射の全生存率に差はありませんでした(Fisher 2002、Veronesi 2002)。部分切除では術後照射を組み合わせるのが前提です。しこりなど気になる症状があれば、乳腺外科を受診してください。

参考文献

  1. Fisher B, Anderson S, Bryant J, et al. Twenty-year follow-up of a randomized trial comparing total mastectomy, lumpectomy, and lumpectomy plus irradiation for the treatment of invasive breast cancer. N Engl J Med. 2002;347(16):1233-1241. PubMed
  2. Veronesi U, Cascinelli N, Mariani L, et al. Twenty-year follow-up of a randomized study comparing breast-conserving surgery with radical mastectomy for early breast cancer. N Engl J Med. 2002;347(16):1227-1232. PubMed
  3. Mann RM, Kuhl CK, Kinkel K, et al. Breast MRI: guidelines from the European Society of Breast Imaging. Eur Radiol. 2008;18(7):1307-1318. PubMed
  4. Houssami N, Ciatto S, Macaskill P, et al. Accuracy and surgical impact of magnetic resonance imaging in breast cancer staging: systematic review and meta-analysis in detection of multifocal and multicentric cancer. J Clin Oncol. 2008;26(19):3248-58. PubMed
  5. Sardanelli F, Boetes C, Borisch B, et al. Magnetic resonance imaging of the breast: recommendations from the EUSOMA working group. Eur J Cancer. 2010;46(8):1296-316. PubMed
  6. Wang M, He X, Chang Y, et al. A sensitivity and specificity comparison of fine needle aspiration cytology and core needle biopsy in evaluation of suspicious breast lesions: A systematic review and meta-analysis. Breast. 2017;31:157-166. PubMed
  7. Sharma N, Theis S, Vogelmann T, et al. Vacuum-assisted breast biopsy vs core needle biopsy: a systematic review and meta-analysis. Eur Radiol. 2026;36(6):4449-4466. PubMed

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