
先に結論:術後の「再発もどき」は、手術記録(何を使い、どこを吻合したか)と、過去画像との経時比較で見分ける
| もどき | 間違えやすいもの | 見分けの手がかり |
|---|---|---|
| 局所止血剤 | 膿瘍、腫瘍、リンパ節腫大、遺残異物 | 手術記録で使用部位を確認。術後早期の術野のガスを含む構造 |
| implantation cyst(吻合部の嚢胞) | 吻合部再発 | 吻合部に接する嚢胞。術後数か月〜数年で出る |
| 膵頭十二指腸切除後の動脈周囲軟部影(PVST) | 局所再発 | ほぼ全例に出る。増大するかを少なくとも2年追う |
| 術後脂肪壊死 | 腹膜播種・再発 | 脂肪を含む中心と高吸収の縁。経過で縮小する |
なぜ「再発もどき」が問題になるのか
術後のフォローCTでは、再発の拾い上げと同時に、術後変化を再発と取り違えないことが求められます。誤って再発と判断すると、不要な生検・ドレナージ・治療につながります。ここでは臓器をまたいで出会う4つを取り上げます。臓器ごとの術後変化は大腸癌術後のCT画像診断、膵癌治療後の局所再発・転移のCT画像所見、骨盤内手術後の合併症のCT画像診断も参照してください。
1. 局所止血剤
手術や経皮的手技で使われる局所止血剤・組織シーラントは、術後画像で膿瘍、腫瘍、リンパ節腫大、遺残異物に似ることがあります(Morani 2018)。エコーやCTでの見え方を知らないと、不要なインターベンションにつながりうるとされています(Heller 2017)。
代表例が酸化セルロースの止血剤で、術後に腹痛や発熱がある患者で術野にガスを含む構造があると膿瘍が心配になりますが、これは止血剤の正常な術後の見え方でもありえます(Arnold 2008)。胆嚢摘出術後の症例では、止血剤の使用を知っていたことで保存的に管理できました。
読影の要点は次のとおりです。
- 術野にガスを含む構造を見たら、膿瘍と決める前に止血剤の使用と部位を手術記録で確認する(Arnold 2008; Morani 2018)。
- 止血剤の可能性が高くても、発熱や炎症反応が続く場合は感染の合併を臨床経過と合わせて評価する。
症例 男性 膿瘍に見えた局所止血剤(胆嚢摘出後)

引用:Radiopaedia(Surgicel in gallbladder fossa mimicking abscess)
胆嚢を取ったあとの胆嚢床に、水に近い低吸収域とその中の黒い小さな空気の粒がいくつも見えます。症例ページでは、最初は膿瘍と報告されましたが、ドレナージ前にサージセル(止血剤)に典型的な見え方と気づかれ、執刀医にも確認されたと記載されています。
2. implantation cyst(吻合部の嚢胞)
直腸低位前方切除術(ダブルステープリング法)を受けた361例では、9例(2.5%)に吻合部のimplantation cystがみられ、術後9〜31か月(平均17.1か月)に出現しました(Katsumata 2010)。成因は、直腸断端を閉じるときに腸粘膜上皮が粘膜下に巻き込まれ、粘液を産生して嚢胞になると説明されています。
9例のうち1例は局所再発を合併していました。嚢胞性で吻合部に接することが手がかりですが、充実成分や壁の不整な肥厚があれば再発を除外できないため、内視鏡や経過観察と合わせて判断します。
3. 膵頭十二指腸切除後の動脈周囲軟部影(PVST)
膵頭十二指腸切除(PD)後には、総肝動脈や上腸間膜動脈の根部の周りに軟部濃度(perivascular soft tissue: PVST)がみられます。乳頭部周囲癌でPDを受けた44例では全例にPVSTがあり、良性疾患でPDを受けた21例でも12例(57.1%)にみられました(Ishigami 2008)。
| 項目 | 結果(Ishigami 2008) |
|---|---|
| 癌でPDを受けた例のPVST | 44例中44例 |
| 良性疾患でPDを受けた例のPVST | 21例中12例(57.1%) |
| 経時的に増大(悪性のPVST) | 44例中13例(29.5%)、うち12例は術後2年以内 |
| 悪性のPVSTが多かった群 | リンパ節転移あり、膵頭部癌 |
PVSTはPDの後には癌でも良性でもよくみられるため、少なくとも2年間は増大の有無を追うことが勧められています(Ishigami 2008)。膵癌術後の再発77例の検討でも、最も多いのは局所再発(65%)で、上腸間膜動脈周囲(28例)や肝動脈周囲(8例)に出ていました(Heye 2011)。直前の検査だけでなく、さらに前の画像とも比べて、ゆっくりした増大を見逃さないことが大切です。PD後の合併症は膵液瘻とは?膵切除後の合併症と術後変化のCT画像所見も参照してください。
4. 術後脂肪壊死
腹部手術後の脂肪壊死44例のFDG-PET/CTの検討では、CTで全例が脂肪を含む不均一な中心を、高吸収の境界明瞭な縁が囲む形でした(Davidson 2018)。術式は開腹術が37例(84.1%)、腹腔鏡が3例です。部位は腹膜34例、大網19例、皮下脂肪8例などで、長径の平均は33.6mm、SUVmaxの平均は2.6(0.6〜5.1)でした。
経過のCTでは病変は縮小し、経過のPETでもFDG集積は増えませんでした。PETで集積があっても、形が典型的で経時的に大きくならないことが、再発と取り違えないための手がかりです。
読影のコツ
- 手術記録を確認する:止血剤の使用部位、吻合の方法と位置、術式。
- 術前・術直後・直前のCTを並べ、いつ出現し、どう変化したかを見る。
- 「増大」「充実成分」「周囲への浸潤」は再発を考えるサイン。迷う場合は短い間隔での再検や他の検査を提案する。
よくある疑問(Q&A)
Q. 術後のCTで術野にガスがあれば膿瘍ですか?
限りません。局所止血剤もガスを含む構造に見えることがあります(Arnold 2008)。手術記録と臨床経過を合わせて判断します。
Q. PD後の動脈周囲の軟部影はいつまで追えばよいですか?
悪性のPVSTの大半が術後2年以内に増大したことから、少なくとも2年間の観察が勧められています(Ishigami 2008)。
Q. PETで集積がある脂肪の塊は再発ですか?
術後脂肪壊死でもFDG集積はみられます。典型的な形で、経過で大きくならなければ脂肪壊死を考えます(Davidson 2018)。
術後のCTで指摘された所見については、経過の画像も含めて主治医に相談してください。
あわせて読みたい:ガーゼオーマとは?CT、MRI画像所見のポイントは?
参考文献
- Morani AC, Platt JF, Thomas AJ, et al. Hemostatic Agents and Tissue Sealants: Potential Mimics of Abdominal Abnormalities. AJR Am J Roentgenol. 2018;211(4):760-766. PubMed
- Heller HT, Walker BS, Sadow CA, et al. Imaging appearance of topical haemostatic agents: pictorial review. Br J Radiol. 2017;90(1070):20160664. PubMed
- Arnold AC, Sodickson A. Postoperative Surgicel mimicking abscesses following cholecystectomy and liver biopsy. Emerg Radiol. 2008;15(3):183-5. PubMed
- Katsumata K, Mori Y, Kawakita H, et al. A study of the incidence of implantation cyst at anastomotic sites after low anterior resection of the rectum with the double stapling technique. Langenbecks Arch Surg. 2010;395(4):465-9. PubMed
- Ishigami K, Yoshimitsu K, Irie H, et al. Significance of perivascular soft tissue around the common hepatic and proximal superior mesenteric arteries arising after pancreaticoduodenectomy: evaluation with serial MDCT studies. Abdom Imaging. 2008;33(6):654-61. PubMed
- Heye T, Zausig N, Klauss M, et al. CT diagnosis of recurrence after pancreatic cancer: is there a pattern? World J Gastroenterol. 2011;17(9):1126-34. PubMed
- Davidson T, Lotan E, Klang E, et al. Fat necrosis after abdominal surgery: A pitfall in interpretation of FDG-PET/CT. Eur Radiol. 2018;28(6):2264-2272. PubMed
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