
先に結論:肺胞微石症は「画像は派手なのに症状は軽い」遺伝性の病気。CTは約1mmの石灰化粒状影が小葉辺縁・気管支血管束・胸膜下に集まる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 肺胞内にリン酸カルシウムの微小結石(微石)がたまる常染色体劣性遺伝の病気。原因遺伝子はSLC34A2 |
| 症状 | 診断時は軽いことが多い。年単位で労作時の息切れ→低酸素が進むことがある |
| レントゲン | 両肺の砂嵐(sandstorm)状の陰影。black pleural line |
| CT | 約1mmの石灰化粒状影が無数。下肺・背側優位、すりガラス影・浸潤影、小葉間隔壁・気管支血管束・胸膜に沿う石灰化、胸膜下の小嚢胞 |
| 治療 | 根本治療はなく、酸素療法などの対症療法。末期は肺移植 |
肺胞微石症とは
肺胞微石症(pulmonary alveolar microlithiasis:PAM)は、肺胞内にリン酸カルシウムの結晶(微石)が広くたまるまれな遺伝性の病気です。ナトリウム依存性リン輸送体(NaPi-IIb)をコードするSLC34A2遺伝子の機能喪失バリアントによる常染色体劣性遺伝で、血族婚との関連が強いとされます(Enemark 2021)。
リンの代謝に関連する独立した病気で、高カルシウム血症による異所性(転移性)肺石灰化や、肺の傷あとにできる異栄養性石灰化とは成り立ちが異なります(Toussie 2025)。肺の石灰化全般は肺の石灰化とは?異所性(転移性)肺石灰化のCT所見で解説しています。
症状と経過
最大の特徴は、胸部X線やHRCTの砂嵐(sandstorm)のような広い陰影に比べて、自覚症状が軽いこと(臨床と画像の解離)です(Enemark 2021)。
病気はゆっくり進行し、労作時の息切れが少しずつ強くなり、若年成人期に酸素の低下、中高年期に呼吸不全に至ることがあります(Saito 2016)。長期の経過をみると予後は良くないとされ(Tachibana 2009)。息切れなど気になる症状があれば、呼吸器内科を受診してください。
画像所見
胸部レントゲン:black pleural line
両肺に広がる細かい石灰化陰影で、肺が白く見えます。肺と肋骨の間に黒い線(black pleural line、black pleura sign)が見えることがあり、HRCTでは肋骨と石灰化した肺の間の脂肪濃度の層によるもので、胸膜下嚢胞によるものではなかったと報告されています(Hoshino 1998)。
CT所見
病理で確認された10例のCT(Sumikawa 2005)では、次の所見がみられました。
| CT所見 | 内容 |
|---|---|
| 石灰化粒状影 | 直径約1mmの無数の石灰化結節(全例) |
| すりガラス影・浸潤影 | 微石が密集してできる。全例で主な所見(肺の平均41%・30%) |
| 線状の石灰化 | 小葉間隔壁・気管支血管束・胸膜に沿う |
| その他 | 小葉間隔壁や気管支血管束の肥厚、胸膜下の小嚢胞(拡張した肺胞管) |
分布は下肺・背側優位(5例中4例)で、胸膜下と気管支血管束に沿って微石が特に多く、HRCTでは二次小葉の小葉辺縁(perilobular)と気管支血管束に沿う分布を示し、病理所見とよく対応しました(Cluzel 1991)。小葉辺縁の不整な肥厚と石灰化は特徴的なCT所見とされます(Tachibana 2009)。
MRI
MRIのT1強調像で両側下肺野がびまん性に高信号を示した症例が報告されています(Hoshino 1998)。
症例 50歳代男性 肺胞微石症

引用:Radiopaedia(Pulmonary alveolar microlithiasis)
両方の肺に砂をまいたような細かい白い粒(石灰化)が広がり、小葉間隔壁に沿った線状の高吸収も見えます。右肺は小さく、胸膜が厚くなっています。症例ページでは、胸膜直下が黒く抜ける「black pleura sign」もあると記載されています。
診断と治療
画像でPAMが疑われたら、遺伝子検査で確かめ、原因バリアントを特定します。遺伝子検査ができない場合は、経気管支生検やクライオ生検、外科的肺生検で診断します。家族歴がある場合は遺伝カウンセリングが勧められます(Enemark 2021)。血清のサーファクタント蛋白A・Dは病気の進行と相関し、経過の指標になりうるとされます(Tachibana 2009)。
根本的な治療はまだなく、ワクチン接種や必要に応じた酸素療法などの予防・対症療法を行い、末期には肺移植が検討されます(Enemark 2021、Saito 2016)。具体的な方針は主治医と相談してください。
異所性(転移性)肺石灰化・異栄養性石灰化との違い
| 病気 | 成り立ち | CTの特徴 |
|---|---|---|
| 肺胞微石症 | リン代謝にかかわる遺伝子(SLC34A2)の異常 | 約1mmの石灰化粒状影が無数。小葉辺縁・気管支血管束・胸膜下に集まる |
| 転移性肺石灰化 | 高カルシウム血症など全身の異常 | びまん性の石灰化結節。淡く不明瞭なこともあり、砂のような・淡いすりガラス影や浸潤影を伴う |
| 異栄養性肺石灰化 | 感染・線維化など局所の肺の傷害 | 結節状で、傷害のあった部位に限られる |
上の表はToussie 2025とEnemark 2021をもとにしています。胸膜の石灰化をきたす病気は胸膜石灰化の原因・鑑別診断も参考にしてください。
読影のチェックポイント
- 粒状影が石灰化しているか(縦隔条件で確認)
- 下肺・背側優位か
- 小葉間隔壁・気管支血管束・胸膜に沿った線状の石灰化があるか
- 胸膜下の小嚢胞、肋骨と肺の間の脂肪層(black pleural line)があるか
- 画像の広がりに比べて症状や呼吸機能の低下が軽くないか
よくある疑問(Q&A)
Q. 家族にも遺伝しますか?
A. 常染色体劣性遺伝の病気で、家族歴がある場合は遺伝カウンセリングが勧められています(Enemark 2021)。
Q. 症状がないのに治療は必要ですか?
A. 根本治療はなく、症状や呼吸機能に応じた対症療法と経過観察が中心です(Enemark 2021)。
Q. 他の「肺の粒状影」とどう違いますか?
A. 粒が石灰化していること、小葉辺縁・気管支血管束・胸膜下に集まることが手がかりです。粒状影全般の見分け方はびまん性粒状影の鑑別診断、石灰化結節は石灰化を伴う肺結節の鑑別診断をご覧ください。
参考文献
- Enemark A, Jönsson ÅLM, Kronborg-White S, et al. Pulmonary Alveolar Microlithiasis – A Review. Yale J Biol Med. 2021;94(4):637-644. PubMed
- Saito A, McCormack FX. Pulmonary Alveolar Microlithiasis. Clin Chest Med. 2016;37(3):441-8. PubMed
- Tachibana T, Hagiwara K, Johkoh T. Pulmonary alveolar microlithiasis: review and management. Curr Opin Pulm Med. 2009;15(5):486-90. PubMed
- Sumikawa H, Johkoh T, Tomiyama N, et al. Pulmonary alveolar microlithiasis: CT and pathologic findings in 10 patients. Monaldi Arch Chest Dis. 2005;63(1):59-64. PubMed
- Cluzel P, Grenier P, Bernadac P, et al. Pulmonary alveolar microlithiasis: CT findings. J Comput Assist Tomogr. 1991;15(6):938-42. PubMed
- Hoshino H, Koba H, Inomata S, et al. Pulmonary alveolar microlithiasis: high-resolution CT and MR findings. J Comput Assist Tomogr. 1998;22(2):245-8. PubMed
- Toussie D, Azour L, Garrana S, et al. Pulmonary Calcification and Ossification: Pathogenesis, CT Appearance, and Specific Disorders. Radiographics. 2025;45(6):e240110. PubMed
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