婦人科、泌尿器科術後(骨盤内手術後)合併症
- 出血
- 腹腔内膿瘍
- リンパ嚢腫(lymphocele)
- 腹腔内リンパ漏
- 尿路損傷、urinoma(尿嚢腫)
- 尿路閉塞、尿路感染
- 腸管損傷
- 瘻孔形成
- BCG注入療法後変化
などがある。
出血
- 主に術後早期に生じる。
- 特に腎部分切除後は仮性動脈瘤の形成に注意。
リンパ嚢腫(lymphocele)
- リンパ嚢腫は上皮の裏打ちがない局所的なリンパ液の貯留のこと。
- 骨盤部手術中にリンパ節郭清を受けた患者の30%に発生すると報告されている。
- 骨盤壁に沿った嚢胞構造として同定され、多くが自然消退する。
- 感染を伴う場合やサイズが増大し周囲臓器への圧排所見がある場合は治療対象であり、経皮的ドレナージや外科的治療が考慮される。
腹腔内リンパ漏
- リンパ漏が閉鎖腔に限局して貯留した場合上述のリンパ嚢腫となるが、腹腔内へ漏出すると大量腹水を生じ腹腔内リンパ漏を起こす。
- 保存的加療にて軽快しない場合、リンパ管造影による診断的治療が適応となる。
- 漏出部位の同定にはリンパ管シンチグラフィが有用。
尿路損傷、urinoma(尿嚢腫)
- 下部尿管や膀胱、膣など剥離を要する広汎子宮全摘術では、尿管損傷の頻度は比較的高い。
- 腎部切除後のurinoma(尿嚢腫)発生率は3~10%。
- 治療の基本はドレナージとなり、診断においてはCT urographyによる尿路外への造影剤漏出の確認が有用。
尿路閉塞、尿路感染
- 尿路閉塞は尿管-回腸導吻合部で好発。
- 術後早期では血流障害に伴う吻合部狭窄のほか、血腫などによる圧迫が原因となり、晩期では血流障害を背景とする繊維化のほか、吻合部再発による圧迫も考慮する必要がある。
- 画像診断の役割は尿路拡張の指摘と、閉塞起点の同定。
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瘻孔形成
- 瘻孔形成は術中の尿管、腸管損傷に続発して術後早期に生じるものと、再発腫瘍の浸潤や放射線治療に続発して術後晩期に生じるものがある。
- 広汎子宮全摘術では特に膀胱膣瘻、直腸膣瘻の頻度が高い。
- 膀胱全摘術および尿路変更術後には回腸導管腸管瘻、もしくは代用膀胱腸管瘻を生じる頻度が高いとされる。
- 稀ではあるが動脈との間に瘻孔を形成する場合がある。
- 画像診断では多方向から観察が重要。
BCG注入療法後変化
- 中ないし高リスク筋層非浸潤性膀胱癌に対するTUR-BT後の術後補助治療としてBCG膀胱内注入療法が行われる。
- 治療後には膀胱壁のびまん性肥厚を認めるほか、BCG膀胱内注入療法を行なった患者の0.1%に腎肉芽腫症は乏血性腫瘤構造として確認され乳頭状腎細胞癌などと鑑別を要するが、多巣性・両側性に発生することが多く鑑別点になりうる。
参考文献:
- 臨床画像 Vol.38 No.7 増刊号2022 P101-5