
先に結論:皮質で丸く縁取られた骨片・裂け目は変異のことが多い。ただし変異でも不安定性は評価する
| 変異 | 骨折と間違えやすい場面 | 見分けの手がかり | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 歯突起骨(os odontoideum) | 歯突起骨折(Anderson Ⅱ型) | 軸椎と離れた独立した小骨で、全周がなめらかな皮質 | 環軸椎不安定性・脊柱管狭窄を伴うことがある |
| 終末小骨(ossiculum terminale persistens) | 歯突起先端の骨折(Ⅰ型) | 歯突起先端の骨化中心が癒合しなかったもの | 多くは良性。ダウン症候群・不安定性と関連することがある |
| 環椎弓の裂・split atlas | ジェファーソン骨折 | 前弓・後弓の正中付近の裂け目(先天性) | 後弓の形によっては脊柱管を狭くする |
| 小児のC2/C3偽亜脱臼 | 靱帯損傷による亜脱臼 | 年少児に多い生理的な前方へのずれ | 外傷の重さや予後と関連しなかった |
| 小児の椎間板石灰化 | 外傷・感染 | 椎間板中央の石灰化、頸部痛 | 自然に消えることが多い |
上位頸椎の変異はなぜ骨折と紛らわしいか
頭蓋頸椎移行部の先天変異として、環椎では前弓・後弓の無形成・低形成・裂と、後弓の裂に前弓の裂を伴う「split atlas」が、軸椎では終末小骨の遺残、歯突起無形成、歯突起骨が挙げられています(Smoker 1994)。いずれも外傷後のCTで偶然見つかると骨折との区別が問題になります。正常の解剖は環椎(第1頸椎)とは?、軸椎(第2頸椎)とは?解剖と歯突起骨折のAnderson分類をご覧ください。
歯突起骨(os odontoideum)
歯突起骨は、大きさはさまざまで、全周をなめらかな皮質に囲まれ、軸椎から離れた独立した小骨と定義されます(Wang 2020)。
24例の検討では、軸椎の上方の正常位置にある型(orthotopic)が4例、位置がずれた型(dystopic)が20例でした。前環軸間隙の開大が14例、歯突起後方の軟部組織肥厚が19例、脊柱管狭窄が21例、頸髄症が10例、頭蓋頸椎移行部の奇形の合併が9例にあり、16例が固定術を受けていました(Wang 2020)。
つまり「骨折ではない」と判断できても、それで終わりではありません。環軸椎の不安定性、脊柱管狭窄、頸髄の信号変化を評価する必要があります(Wang 2020)。環軸椎の不安定性の評価は環軸椎亜脱臼の原因と画像診断|ADI(環椎歯突起間距離)にまとめています。
歯突起骨折との違い
- 骨片の辺縁:歯突起骨は全周がなめらかな皮質(Wang 2020)。
- 過去画像があれば、以前から同じ形かを確認する。
症例 30歳代男性 歯突起骨(os odontoideum)

引用:Radiopaedia(Os odontoideum)
首のけがでC2の骨折を調べるために撮ったCTです。歯突起の先が軸椎の体部から離れた丸い骨片になっていて、ふちは全周が白い皮質で縁取られています。症例ページでは歯突起骨とされ、歯突起骨折や終末小骨との区別が必要と記載されています。
終末小骨(ossiculum terminale persistens)
終末小骨(Bergmann小骨)は、歯突起の先端をつくる骨化中心が軸椎の本体と癒合しないまま残った発生上の変異です。多くは良性ですが、まれに頸部痛や神経症状を起こすことがあり、ダウン症候群に合併して環軸椎不安定性に関与することがあります(Johal 2016)。歯突起先端の小骨片を見たら、骨折(Anderson Ⅰ型)とこの変異を鑑別に挙げます。
環椎弓の裂(split atlas)
環椎の変異の多くは頭蓋頸椎移行部の位置関係の異常を伴いません(Smoker 1994)。ただし、後弓の正中裂の両端が内側に曲がって頸髄を圧迫し、進行する神経症状を起こした8歳児の報告があり、この形は他の頭蓋頸椎の骨奇形を伴うことが多いとされます(Connor 2001)。外傷のない裂を見ても、脊柱管の広さは確認しておきます。
小児のC2/C3偽亜脱臼
C2のC3に対する偽亜脱臼は、正常小児の上位頸椎X線で見られる生理的な変異です。重症多発外傷で搬送された16歳未満138例の側面X線では、30例(21.7%)にC2/C3偽亜脱臼があり、偽亜脱臼の群は有意に年少でした。挿管の有無、外傷の重症度、転帰とは関連がなく、多発外傷の場面でも良性の変異と考えられると結論されています(Shaw 1999)。
小児の頸椎X線では、C2-C3間の可動性の大きさ、環椎の軸椎に対する見かけ上の開大、偽亜脱臼、前弯の消失、椎体の前方楔状化、椎体前軟部組織の見かけ上の肥厚、軟骨結合の未骨化などが外傷と誤られやすい特徴として挙げられています(Adib 2016)。成人の頸椎X線の見方は頸椎レントゲンの見方|正常像の読影方法をご覧ください。
小児の椎間板石灰化
小児の頸椎椎間板の石灰化はまれな病態です。17例の経過観察では、診断時の平均年齢は7.7歳で、1例を除き頸部痛があり、X線で石灰化は椎間板の中央部に見られました。対症療法のみで全例が症状と石灰化の両方とも消失し、消失までの期間は症状が平均34.3日、石灰化が平均15か月でした(Dai 2004)。
椎体前縁の骨片
椎体の前上縁・前下縁の三角形の骨片(隅角解離)も骨折と紛らわしい所見です。隅角解離(limbus vertebra)の画像所見|椎体前縁の三角形の骨片と骨折との違いで解説しています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 歯突起骨とわかれば経過観察でよいですか?
歯突起骨では前環軸間隙の開大や脊柱管狭窄、頸髄症を伴う例があり、固定術が行われることもあります(Wang 2020)。不安定性や神経症状の評価が必要で、方針は主治医・脊椎の専門医と相談してください。
Q. 小児の頸椎でC2がC3より前にずれていたら損傷ですか?
重症多発外傷の小児でも約2割にC2/C3偽亜脱臼があり、外傷の重さとは関連しませんでした(Shaw 1999)。ただし年齢・受傷機転・ほかの所見とあわせて判断します。
Q. 子どもの首の痛みで椎間板が石灰化していたら?
小児の頸椎椎間板石灰化は自然に軽快することが多いとされます(Dai 2004)。気になる症状があれば医療機関を受診し、経過は主治医と相談してください。
参考文献
- Smoker WR. Craniovertebral junction: normal anatomy, craniometry, and congenital anomalies. Radiographics. 1994;14(2):255-77. PubMed
- Wang Q, Dong S, Wang F. Os odontoideum: diagnosis and role of imaging. Surg Radiol Anat. 2020;42(2):155-160. PubMed
- Johal J, Loukas M, Fisahn C, et al. Bergmann’s ossicle (ossiculum terminale persistens): a brief review and differentiation from other findings of the odontoid process. Childs Nerv Syst. 2016;32(9):1603-6. PubMed
- Connor SE, Chandler C, Robinson S, et al. Congenital midline cleft of the posterior arch of atlas: a rare cause of symptomatic cervical canal stenosis. Eur Radiol. 2001;11(9):1766-9. PubMed
- Shaw M, Burnett H, Wilson A, et al. Pseudosubluxation of C2 on C3 in polytraumatized children–prevalence and significance. Clin Radiol. 1999;54(6):377-80. PubMed
- Adib O, Berthier E, Loisel D, et al. Pediatric cervical spine in emergency: radiographic features of normal anatomy, variants and pitfalls. Skeletal Radiol. 2016;45(12):1607-1617. PubMed
- Dai LY, Ye H, Qian QR. The natural history of cervical disc calcification in children. J Bone Joint Surg Am. 2004;86(7):1467-72. PubMed
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