
先に結論:腟癌・外陰癌のMRIは「局所の広がり」と「リンパ節」を見る検査
| 項目 | 腟癌(原発性) | 外陰癌 |
|---|---|---|
| 頻度 | 女性生殖器悪性腫瘍の1〜2%(Adams 2025) | 婦人科悪性腫瘍の5〜8%(Virarkar 2022) |
| 主な組織型 | 扁平上皮癌(約85〜90%) | 扁平上皮癌が最多 |
| 病期分類 | FIGO分類(臨床病期。画像で病期は変更しない) | FIGO 2021年版(断層画像の所見を病期に反映できる) |
| MRIで見る点 | 腟壁を越えるか、骨盤壁・膀胱・直腸への浸潤、骨盤・鼠径リンパ節 | 尿道・腟・肛門への進展が下1/3か上2/3か、鼠径・大腿リンパ節 |
腟にできる悪性腫瘍は、子宮頸部・子宮体部・直腸などからの直接浸潤や転移(二次性)のほうがずっと多いため、原発性と判断する前に他の原発巣を除外します。
腟癌・外陰癌とは
原発性腟癌
原発性腟癌は、子宮頸癌・外陰癌の臨床的・組織学的な証拠がなく、腟に見つかるがんと定義されます。女性生殖器悪性腫瘍の1〜2%と稀で、腟の悪性腫瘍の約80%は転移性あるいは二次性です(Adams 2025)。
組織型は扁平上皮癌が多く(約85%とする報告(Parikh 2008)、90%とする報告(Adams 2025)があります)、残りは腺癌・悪性黒色腫・肉腫などです。従来は高齢・閉経後の女性に多いがんでしたが、高リスク型HPVの持続感染に関連して若い女性での診断が増えています(Adams 2025)。
外陰癌
外陰癌は婦人科悪性腫瘍の5〜8%を占め、組織型は扁平上皮癌が最も多いとされます(Virarkar 2022)。外陰癌は視診でわかることが多いものの、腫瘍の広がりや治療計画の評価に画像が大切な役割を持ちます(Virarkar 2022)。
MRIでどう見えるか
腟癌のMRI所見
- 扁平上皮癌はT2強調像で中間信号、T1強調像で低信号を示します(Parikh 2008)。
- 典型的には腟上部1/3の後壁から発生します(Parikh 2008、Adams 2025)。
- 形は、潰瘍形成・隆起(fungating)する腫瘤と、全周性に狭窄させる病変が主なパターンです(Parikh 2008)。
- 扁平上皮癌以外の組織型は、体の他の部位にできる同じ組織型と似た信号を示し、転移性腫瘍は原発巣と似た所見になります(Parikh 2008)。
腟周囲組織(paravaginal tissue)・子宮傍組織・尿道・膀胱・直腸への直接進展があり得るため(Adams 2025)、腫瘍と周囲の脂肪組織・隣接臓器との境界を矢状断と横断のT2強調像で確認します。
外陰癌のMRI所見
病変の大きさはMRIで83%の症例で正確に評価され、原発外陰癌の病期診断の正診率は単純MRIで69.4%でした。造影MRIを加えると病変の検出が増え、正診率は75%から85%に上がったと報告されています(Kataoka 2010)。
リンパ節の見方
| 腫瘍の部位 | 主なリンパ流 |
|---|---|
| 腟の上1/3 | 骨盤リンパ節(閉鎖・内腸骨・外腸骨)。傍大動脈リンパ節への転移は稀 |
| 腟の下1/3 | 鼠径・大腿リンパ節 |
| 腟の中部 | 骨盤・鼠径の両方に流れることがある |
(Adams 2025をもとに作成)
外陰癌の鼠径リンパ節転移の予測では、短径と長径の比を用いた評価で85%、読影者の総合判断で87%の正診率でした(Kataoka 2010)。別の研究では、MRIの感度85.7%、特異度82.1%、陰性的中率93.9%で、臨床診察(感度35%)より優れていました(Singh 2006)。骨盤のリンパ節の名前と場所は骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ節の場所と名前で確認できます。
症例 30歳代女性 腟癌(扁平上皮癌)

引用:Radiopaedia(Primary vaginal cancer)
腟内のゼリーで高信号に広がった腟の前方で、腟の前壁が中等度信号の腫瘍で厚くなり、膀胱の後壁に接しています。症例ページでは膀胱への浸潤、骨盤・鼠径リンパ節転移、右坐骨への転移も報告されています。
病期分類(FIGO)の考え方
腟癌:臨床病期で、画像では病期を変えない
腟癌は子宮頸癌と同じく臨床的に病期を決めます。CT・MRI・PETは治療方針の参考として使うことが勧められていますが、初回の臨床病期を変更するためには用いません(Adams 2025)。FIGO Cancer Report 2025に示された病期の概要は以下のとおりです。
| FIGO病期 | 概要 |
|---|---|
| Ⅰ | 腟に限局 |
| Ⅱ | 腟壁を越えて進展するが、骨盤壁には達しない |
| Ⅲ | 骨盤壁に達する・腟の下1/3に及ぶ・水腎症をきたす、または骨盤・鼠径リンパ節転移あり |
| ⅣA | 膀胱または直腸への浸潤、あるいは骨盤外への進展 |
| ⅣB | 肺・骨などへの遠隔転移 |
(Adams 2025の表を要約。同じ表でAJCC分類はⅠ・Ⅱ期を腫瘍径2.0cmでA・Bに分けています)
外陰癌:FIGO 2021年版
2021年の改訂は、米国National Cancer Databaseの12,063例の解析にもとづいて作られました。浸潤の深さの定義が新しくなり、リンパ節転移の定義は子宮頸癌と同じになり、断層画像の所見を病期に組み込めるようになったのが特徴です(Olawaiye 2021)。
| FIGO病期(2021) | 定義 |
|---|---|
| ⅠA | 外陰に限局。腫瘍径2cm以下かつ間質浸潤1mm以下 |
| ⅠB | 外陰に限局。腫瘍径2cm超または間質浸潤1mm超 |
| Ⅱ | 尿道・腟・肛門の下1/3に進展、リンパ節転移なし |
| ⅢA | 尿道・腟の上2/3、膀胱粘膜、直腸粘膜への進展、または5mm以下の領域リンパ節転移 |
| ⅢB | 5mmを超える領域リンパ節転移 |
| ⅢC | 被膜外進展を伴う領域リンパ節転移 |
| ⅣA | 骨盤骨への固定、または固定・潰瘍化した領域リンパ節転移 |
| ⅣB | 遠隔転移 |
(Olawaiye 2021より。領域リンパ節=鼠径・大腿リンパ節。浸潤の深さは、最も深い隣接した異形成のある腫瘍のない上皮突起の基底膜から浸潤の最深部まで)
Ⅱ期とⅢA期の境目は「下1/3か上2/3か」なので、MRIでは尿道・腟・肛門への進展がどの高さまで及ぶかを記載することが病期に直結します。
読影で注意したい点
- 二次性腫瘍の除外:腟の転移の多くは子宮頸部・子宮・直腸からの直接進展です(Parikh 2008)。子宮頸部の解剖は子宮頸部の正常解剖(腟円蓋)、子宮頸癌の病期は子宮頸癌のFIGO2018進行期分類とMRI画像所見も参照してください。
- 子宮体癌術後の腟再発:子宮体癌の腟再発は腟断端(apex)に多く(36例中27例、75%)、ベースラインMRIで辺縁のリング状造影効果がある腫瘍は無再発生存が長かったと報告されています(Steiner 2020)。子宮体癌については子宮体癌のMRI画像診断にまとめています。
- 水腎症:腟癌では水腎症の有無が病期に関わるため(Adams 2025)、骨盤MRIでも尿管・腎の拡張を見落とさないようにします。
次にすること
レポートには、腫瘍の大きさ、腟の高さ(上・中・下1/3)と壁の位置、腟壁を越える進展の有無、尿道・膀胱・直腸・肛門・骨盤壁との関係、骨盤・鼠径リンパ節の部位と大きさ、水腎症の有無を書いておくと、治療方針の検討に役立ちます。リンパ節転移や遠隔転移の評価ではPET-CTが他の画像より優れているとされます(Adams 2025)。
腟癌は出血や悪臭のあるおりものなどで見つかることが多いとされます(Adams 2025)。気になる症状があれば婦人科を受診してください。診断や治療の方針は、検査結果をふまえて主治医に相談しましょう。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 腟癌はMRIの結果で病期が決まりますか?
いいえ。腟癌は臨床病期で、画像は治療方針の参考に使いますが、初回の病期を変更するためには用いません(Adams 2025)。
Q2. 外陰癌ではCTやMRIの所見を病期に使えますか?
FIGO 2021年版では、断層画像の所見を病期に組み込めるようになりました(Olawaiye 2021)。尿道・腟・肛門への進展の高さやリンパ節の所見が病期を左右します。
Q3. MRIで鼠径リンパ節に転移がないと言えますか?
MRIの陰性的中率は93.9%と高い一方、陽性的中率は64.3%にとどまります(Singh 2006)。最終的な評価はセンチネルリンパ節生検などの病理診断と組み合わせて行います。
参考文献
- Parikh JH, Barton DP, Ind TE, et al. MR imaging features of vaginal malignancies. Radiographics. 2008;28(1):49-63. PubMed
- Adams TS, Maluleke JC, Cuello MA. Cancer of the vagina: 2025 update. Int J Gynaecol Obstet. 2025;171 Suppl 1:48-59. PubMed
- Olawaiye AB, Cotler J, Cuello MA, et al. FIGO staging for carcinoma of the vulva: 2021 revision. Int J Gynaecol Obstet. 2021;155(1):43-47. PubMed
- Virarkar M, Vulasala SS, Daoud T, et al. Vulvar Cancer: 2021 Revised FIGO Staging System and the Role of Imaging. Cancers (Basel). 2022;14(9):2264. PubMed
- Kataoka MY, Sala E, Baldwin P, et al. The accuracy of magnetic resonance imaging in staging of vulvar cancer: a retrospective multi-centre study. Gynecol Oncol. 2010;117(1):82-7. PubMed
- Singh K, Orakwue CO, Honest H, et al. Accuracy of magnetic resonance imaging of inguinofemoral lymph nodes in vulval cancer. Int J Gynecol Cancer. 2006;16(3):1179-83. PubMed
- Steiner A, Alban G, Cheng T, et al. Vaginal recurrence of endometrial cancer: MRI characteristics and correlation with patient outcome after salvage radiation therapy. Abdom Radiol (NY). 2020;45(4):1122-1131. PubMed
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