先に結論:子宮頸がんのFIGO2018進行期とMRI

  • FIGO2018では、画像(MRI・CT・PET)や病理の所見も進行期の決定に使えるようになり、ⅠB期が2cm・4cmで3つ(ⅠB1〜ⅠB3)に分かれ、リンパ節転移があればⅢC期(骨盤リンパ節=ⅢC1、傍大動脈リンパ節=ⅢC2)となりました
  • MRI(T2強調像)では、腫瘍の大きさ、腟壁の黒い層(低信号)が途切れていないか(ⅡA期)、頸部間質の黒いリング(低信号)が保たれているか=子宮傍組織浸潤の有無(ⅡB期)を評価し、膀胱・直腸への浸潤(ⅣA期)も確認します
  • FIGO分類は国際産婦人科連合(FIGO)が定める進行期分類で、子宮体癌には別のFIGO分類(2023年改訂)があります
  • ⅡB期以上は手術より放射線化学療法が選ばれることが多く、MRIでの評価が治療方針を大きく左右します

子宮頸癌のFIGO2018進行期分類とMRI画像所見の対応

婦人科癌の進行期分類にはFIGO分類(International Federation of Gynecology and Obstetrics)が世界的に用いられています。

そのFIGO分類が2018年に改訂され、日本でもそれを踏まえ、取り扱い規約4版臨床編において、進行期分類の決定のためにCTやMRI,FDG-PETなど画像診断が追加されました。

今回は、2018年に改訂された子宮頸癌のFIGO2018進行期分類とそれに対応するMRI画像所見についてまとめました。

関連:子宮頸部の正常解剖についてはこちらにまとめました→子宮頸部のMRI画像における正常解剖

FIGO2018進行期分類の早見表(MRIで見るポイント付き)

まず全体像を表で確認しておきましょう(Bhatla 2019)。

進行期 定義 MRI(T2強調像)で見るポイント
ⅠA1/ⅠA2 顕微鏡的浸潤のみ(間質浸潤の深さ3mm未満/3mm以上5mm未満) 通常MRIでは腫瘍として見えない
ⅠB1/ⅠB2/ⅠB3 頸部に限局。最大径2cm未満/2cm以上4cm未満/4cm以上 腫瘍の最大径、stromal ringが保たれているか
ⅡA1/ⅡA2 腟壁上2/3まで浸潤、傍組織浸潤なし(4cm未満/4cm以上) 腟壁の低信号層の途絶
ⅡB 子宮傍組織浸潤あり(骨盤壁には達しない) stromal ringの全層断裂+傍組織への突出・辺縁不整
ⅢA 腟壁下1/3に達する 矢状断で腟の下1/3まで腫瘍が及ぶ
ⅢB 骨盤壁に達する、または水腎症・無機能腎 内外腸骨血管の内側ラインへの到達、水腎症・水尿管
ⅢC1/ⅢC2 骨盤リンパ節転移/傍大動脈リンパ節転移 リンパ節の腫大・形態(画像なら「r」を付記)
ⅣA 膀胱・直腸の粘膜に浸潤 膀胱・直腸壁の低信号の筋層が消え、粘膜に及ぶ
ⅣB 遠隔転移(小骨盤腔を越える) MRIの撮像範囲外も含めCT・PETで評価

 

Ⅰ期:頸部に限局

Ⅰ期の分類は以下の様に顕微鏡的なⅠAと画像で確認できるⅠBに分けられます。

ⅠA:顕微鏡的

  • ⅠA1:間質浸潤の深さ<3mm
  • ⅠA2:間質浸潤の深さ≧3mm、<5mm

なおFIGO2018では、ⅠA期の判定から水平方向の広がり(幅)の計測が削除され、間質浸潤の深さのみで分類します(Bhatla 2019)。画像については、欧州泌尿生殖器放射線学会(ESUR)がFIGO2018改訂後のMRIによる病期診断・再発・経過観察の指針をまとめています(Manganaro 2021)。

ⅠB:ⅠAを越える

腫瘍の最大径によって以下のように分類されます。

  • ⅠB1<2cm
  • ⅠB2≧2cm,<4cm
  • ⅠB3≧4cm

FIGO2018で2cmという項目が追加されました。

なぜ2cmという項目が追加されたのか?
  • 2cmというサイズが予後因子であるから(2cm未満の腫瘍は2cm以上の腫瘍より予後が良く、再発率が低いことがわかったから)
  • ⅠB1期は広汎子宮頸部摘出術と呼ばれる妊孕能温存手術の適応となるため。

関連:広汎子宮頸部摘出術(Radical trachelectomy)とは?

Ⅱ期:頸部をこえるが骨盤壁や腟壁下1/3には達さない

Ⅱ期の分類は以下の様になります。

  • ⅡA:腟壁浸潤が膣壁上2/3に限局していて、子宮傍組織への浸潤を認めないもの。
  • ⅡB:子宮傍組織浸潤あり

ⅡA期はさらに腫瘍のサイズによってⅡA1期とⅡA2期に分けられます。

  • ⅡA1<4cm
  • ⅡA2≧4cm

MRIでは、膣壁のT2WI低信号が腫瘤によって消失してしまう所見を多方向から捉えます。

腟内に突出していても、膣壁のT2WI低信号が保たれていれば、ⅠB期となります。

 

ⅡB期に相当する傍組織浸潤の有無は治療法選択に大きく影響があります。

この部位を評価する際には、頸管に対して垂直な斜断面が有用です。MRIによる傍組織浸潤の診断能は、2012〜2016年の14研究(1,028例)をまとめたメタ解析で感度0.76・特異度0.94と報告されており、3テスラ装置や拡散強調像の使用で診断能が上がる可能性が示されています(Woo 2018)。

傍組織浸潤の有無の判断には、頚部間質のドーナツ型の低信号(=Stromal ring)に着目することが重要です。

こちらがStromal ringです。

腫瘍とこのStromal ringとの関係で深達度が決まります。

まず、腫瘍がStromal ringに浸潤しているが、全層性の断裂はない場合は、definitive ⅠBとなります。(full stromalと呼ばれる。)

次に、全層性の断裂を認めるが、辺縁は整であり、傍組織への突出がない場合は、suggestive ⅠBとなります。

これは、顕微鏡的浸潤がある場合があります。

最後に、傍組織への突出もしくは辺縁に不整を認めた場合、これは傍組織浸潤があると判断でき、ⅡBとなります。

ただし、傍組織と頚部間質の境界がわかりにくい症例もあるので注意が必要です。

その場合、傍組織は動静脈が走行しておりT2WI高信号の静脈や動脈のflow voidなども参考にしながら境界を考えます。つまり、太い血管に腫瘍が進展している所見を認めた場合は少なくとも傍組織浸潤ありと判断できます。

Ⅲ期:骨盤壁または腟壁下1/3に達する

次にⅢ期の分類は以下の様になります。

  • ⅢA:下1/3に達する腟壁浸潤
  • ⅢB:骨盤壁浸潤、水腎症・無機能腎 ※骨盤壁とは内・外腸骨血管の内側のラインを指す。
  • ⅢC:リンパ節転移
  • ⅢC1:骨盤内リンパ節転移
  • ⅢC2:傍大動脈リンパ節転移

ⅢAかどうかの評価:腟壁浸潤の程度について

まず腟壁に浸潤しているかどうか、そしてそれが腟の下1/3まで達しているかどうかで分類します。

腟壁浸潤があるけれど、腟壁下1/3に到達していない場合はⅡAとなります。

一方で、腟壁浸潤があり、腟壁下1/3に到達してる場合はⅢAとなります。

ⅢBかどうかの評価:骨盤壁浸潤の有無について

腫瘍が外側に進展して骨盤壁に達するかどうかでⅢBか否かが決定されます。

傍組織への進展を認めるが、骨盤壁に及ばない場合は、ⅡBとなります。

一方で骨盤壁に到達している場合は、ⅢBとなります。

では、骨盤壁に到達するとはどういった画像所見から判断すればいいのでしょうか?

子宮頸癌取り扱い規約では、内外腸骨血管の内側のラインに達する場合に骨盤壁浸潤と判断すると記載があります。

骨盤壁浸潤は、臨床的に内診によって腫瘍と骨盤壁の間にcancer free spaceを触知できるかによって、決定されます。

MRIでは、

  • 骨盤骨や骨盤壁の筋に直接浸潤がある
  • 腫瘍が傍組織を置換している
  • 腫瘍から索状構造が伸びており、内腸骨動静脈に達している
  • 水腎症や水尿管がある

場合に、骨盤壁浸潤がありと判断されます。

ⅢC:リンパ節転移について

リンパ節転移についてはFIGO2018進行期分類から定義されました。なおⅢC期では、判定の根拠を記号で付記します。画像で判定した場合は「r」(例:ⅢC1r)、病理で確認した場合は「p」(例:ⅢC1p)とします。

子宮頸癌の領域リンパ節には、

基靭帯(傍組織)、閉鎖、外腸骨、内腸骨、総腸骨、仙骨、鼠径上(鼠径靭帯の頭側にある骨盤のリンパ節)

そして傍大動脈が含まれます。

リンパ行性転移の経路としては、原発巣から傍組織、閉鎖リンパ節、総腸骨リンパ節、傍大動脈リンパ節といく経路が重要です。

傍大動脈リンパ節転移は以下のようにⅢC2期と分類されます。

  • ⅢC1:骨盤内リンパ節転移
  • ⅢC2:傍大動脈リンパ節転移
※閉鎖リンパ節とは?

閉鎖リンパ節は「外腸骨血管の背側で、閉鎖孔及び閉鎖神経、閉鎖動静脈周囲にあるもの」と定義されます。

目安としては、外腸骨血管、内腸骨血管の間にある脂肪織の領域と考えればOKです。

Ⅳ期:膀胱・直腸粘膜浸潤または小骨盤腔を越えた広がり

最後にⅣ期については以下の通りです。

  • ⅣA:膀胱・直腸粘膜への浸潤
  • ⅣB:小骨盤腔を越えた広がり

膀胱もしくは直腸粘膜への浸潤

子宮の前方には膀胱があり、後方には直腸があります。

これらの粘膜に浸潤した場合にⅣAと診断できます。

粘膜への浸潤と定義されていますので、膀胱や直腸の筋層が残っている場合は、粘膜への浸潤とは判定できない点に注意が必要です。

小骨盤腔を越えた広がり

血行性転移としては、肺・肝・骨、腰椎に多いです。

またリンパ行性転移をしやすい腫瘍とされており、骨盤内から傍大動脈のリンパ節転移を越えて進むと遠隔転移とみなされ、左鎖骨上窩が好発部位、そして逆行性に縦隔リンパ節への転移が起こることもあります。

 

FIGO2018進行期分類と治療法の関係

FIGO2018進行期分類と治療法の関係は以下の通り。

  • ⅠA期:子宮頸部円錐切除術、単純/準広汎子宮全摘出術±PEN、放射線治療
  • ⅠB期、Ⅱ期:広汎子宮全摘出術+PEN±PAN(NACを考慮)±術後補助療法、放射線治療、同時化学放射線治療
  • Ⅲ期:同時化学放射線治療(※ただしⅢC期は上のⅠB,Ⅱ期の治療がされることがある)
  • Ⅳ期:化学療法など(※ただし同時化学放射線治療がなされることがある。)

関連記事:婦人科手術用語のまとめ AT,ATH,BSO,LSO,RSO,PAN,PEN,OM

子宮頸癌のFIGO分類でよくある疑問(Q&A)

Q1. FIGO分類とは何ですか?

A. 国際産婦人科連合(FIGO)が定める婦人科癌の進行期分類です。子宮頸癌では2018年に改訂され、画像や病理の所見も進行期の決定に使えるようになりました(Bhatla 2019)。

Q2. TNM分類とはどう違いますか?

A. TNM分類は、T(原発巣の広がり)・N(リンパ節転移)・M(遠隔転移)を別々に記載する分類です。T分類はFIGOのⅠ〜ⅣA期の広がりにおおむね対応しますが、FIGO2018ではリンパ節転移があると原発巣の大きさにかかわらずⅢC期になる点が、Nを別に書くTNMと異なります。

Q3. 子宮体癌のFIGO分類と同じですか?

A. 別の分類です。子宮体癌のFIGO分類は2023年に改訂され、組織型や分子分類も取り入れた内容になっています(Berek 2023)。子宮頸癌のFIGO2018をそのまま当てはめないよう注意します。

Q4. MRIで子宮傍組織浸潤はどのくらい正確にわかりますか?

A. メタ解析では感度0.76・特異度0.94と報告されています(Woo 2018)。「浸潤なし」の判断は比較的信頼できますが、微小な浸潤は見逃しうるため、stromal ringの断裂の形や辺縁の性状を丁寧に評価します。

 

関連記事:子宮頸癌のMRI画像診断|T2強調像での頸部間質の評価と進行期(旧FIGO2008)

あわせて読みたい:腟癌・外陰癌のMRI所見とは?FIGO病期(外陰癌2021年版)の考え方とリンパ節の見方

あわせて読みたい:子宮頸癌の放射線治療後のMRI

参考文献:

  1. 画像診断 Vol.40 No.13 2020 P1289-1298
  2. 画像診断 Vol.41 No.10 2021 P1067-1075
  3. 症例から学ぶ産婦人科疾患の画像診断P110
  4. 婦人科MRIアトラス改訂第2版 P65
  5. 子宮頸癌治療ガイドライン2017版
  6. Bhatla N, Berek JS, Cuello Fredes M, et al. Revised FIGO staging for carcinoma of the cervix uteri. Int J Gynaecol Obstet. 2019;145(1):129-135. PubMed
  7. Manganaro L, Lakhman Y, Bharwani N, et al. Staging, recurrence and follow-up of uterine cervical cancer using MRI: Updated Guidelines of the European Society of Urogenital Radiology after revised FIGO staging 2018. Eur Radiol. 2021;31(10):7802-7816. PubMed
  8. Woo S, Suh CH, Kim SY, et al. Magnetic resonance imaging for detection of parametrial invasion in cervical cancer: An updated systematic review and meta-analysis of the literature between 2012 and 2016. Eur Radiol. 2018;28(2):530-541. PubMed
  9. Berek JS, Matias-Guiu X, Creutzberg C, et al. FIGO staging of endometrial cancer: 2023. Int J Gynaecol Obstet. 2023;162(2):383-394. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →