
先に結論:GTNは「hCGで見つけ、画像で広がりを測る」
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 侵入奇胎・絨毛癌・胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)・類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT)の総称 |
| 見つけ方 | 奇胎後のhCGの停滞・再上昇。正期産や流産のあとにも起こりうる |
| 子宮の評価 | ドプラを併用した経腹・経腟エコーが基本。MRIは問題解決・筋層浸潤の評価 |
| 転移の評価 | 最も多いのは肺。病期決定にはCT・MRI、再発例ではPETも |
| リスク分類 | FIGO病期とWHO修正スコア。6点以下が低リスク、7点以上が高リスク |
| 予後 | 低リスクの生存率はほぼ100%、高リスクで約90% |
妊娠性絨毛性腫瘍(GTN)とは?
妊娠性絨毛性疾患(GTD)のうち、悪性のものを妊娠性絨毛性腫瘍(gestational trophoblastic neoplasia:GTN)と呼びます。侵入奇胎、絨毛癌、PSTT、ETTが含まれ、絨毛癌・PSTT・ETTはどの種類の妊娠のあとにも起こりえます(Ngan 2021)。GTNは胞状奇胎の約20%に続発しますが、奇胎でない妊娠のあとにも生じます(Chawla 2023)。
絨毛癌は出血と壊死を伴う大きな腫瘍を作ります(Ngan 2021)。また、異型胎盤部結節(APSN)の10〜15%はPSTT/ETTと共存するか、PSTT/ETTに進展するとされ、GTDの範囲に加えられています(Ngan 2021)。PSTTとETTはhCGの産生が少なめで化学療法が効きにくく、子宮摘出が治療の中心になります(Ngan 2021)。
奇胎後のGTNは、主にhCGの停滞や再上昇で診断されます(Shaaban 2017)。一方で、肝・脾・腸・肺・脳などの転移巣からの出血、呼吸器症状、神経症状で見つかることもあり、原因のはっきりしない出血や神経症状では血中hCGの測定が勧められています(Ngan 2021)。
エコー(ドプラ)所見
経腹・経腟エコーとドプラは、GTDでもGTNでも、また治療後の経過観察でも通常適切な検査とされています(Dudiak 2019)。GTNが疑われたときの確認はドプラエコーが中心です(Chawla 2023)。
ドプラで測る子宮動脈の拍動指数(UAPI)は腫瘍の血流の多さを反映します。低リスクGTN 286例の前向き研究では、メトトレキサート抵抗例のUAPI中央値は0.8で、感受性例の1.4より低く(血流が多い)、UAPI 1以下はFIGOスコアと独立して抵抗性を予測しました。FIGOスコア6点でUAPI 1以下の例は全例が抵抗性でした(Agarwal 2012)。
治療の前後では、子宮や肺の動静脈瘻といった合併症の検出も画像の大切な役割です(Shaaban 2017)。子宮動脈の走行は内腸骨動脈の分岐と子宮動脈の解剖・走行で確認できます。
MRI所見
MRIは子宮外への広がり、腫瘍の血流、病期の評価に有用です(Allen 2006)。GTD 13例の骨盤MRIでは、次の所見がみられました(Preidler 1996)。
- 子宮のびまん性腫大(9例)、または限局性の腫瘤(4例)
- 子宮の層構造(zonal anatomy)の消失(全例で少なくとも一部)
- 拡張した異常な腫瘍血管(全例)
治療後に経過をみた4例では、子宮の大きさ・信号・層構造・血管がいずれも正常に戻りました。一方、MRI所見とhCG値や組織型との相関はみられませんでした(Preidler 1996)。子宮の正常な層構造は子宮体部の正常解剖とMRI|内膜・junctional zoneを参照してください。
症例 30歳代女性 侵入奇胎
子宮筋層の信号がびまん性に乱れ、子宮体部の筋層を中心に、小さな嚢胞を含む不均一な信号の病変が広がっています。病変内や筋層の周りには、血流の多さを示す蛇行した信号の抜け(flow void)が見られます。
同じ症例 造影後T1強調像(脂肪抑制)
子宮体部の病変は強く不均一に造影され、子宮の周り(傍子宮組織)にも拡張した血管が多数見えます。両側の卵巣にはルテイン嚢胞もあると症例ページに記載されています。
CT・PETと転移の評価:FIGO病期とスコア
転移する場合、最初に広がる部位は肺が最も多いとされます(Dudiak 2019)。病期決定や予後の評価、再発時にはCT・MRI・PET/CTを組み合わせます(Chawla 2023)。PETとCTは再発や転移のある病変の評価で役割をもち、血管造影は病変や合併症の管理に用いられることがあります(Allen 2006)。CTの被ばくについてはレントゲン・CTの被ばく量は大丈夫?も参照してください。
FIGO 2000の病期分類とWHO修正スコア(FIGO 2021年版レポートに掲載)のうち、画像がかかわる部分は次のとおりです(Ngan 2021)。
| FIGO病期 | 範囲 |
|---|---|
| Ⅰ | 子宮体部に限局 |
| Ⅱ | 付属器・腟に及ぶが生殖器に限局 |
| Ⅲ | 肺に転移(生殖器病変の有無を問わない) |
| Ⅳ | その他の転移 |
| スコア項目(画像) | 0点 | 1点 | 2点 | 4点 |
|---|---|---|---|---|
| 最大腫瘍径(子宮を含む) | - | 3〜4cm | 5cm以上 | - |
| 転移部位 | 肺 | 脾・腎 | 消化管 | 脳・肝 |
| 転移の個数 | - | 1〜4 | 5〜8 | 8超 |
このほか年齢、先行妊娠、先行妊娠からの期間、治療前hCG、化学療法の失敗歴を加算し、合計6点以下を低リスク、7点以上を高リスクとします。表記は「Ⅱ:4」のように病期とスコアを並べます(Ngan 2021)。なお、先行妊娠から48か月を超える間隔や病期Ⅳは、とくに強い予後不良因子とされています(Ngan 2021)。画像では、転移の部位と個数、子宮を含めた最大腫瘍径を漏れなく記載することがスコア算出に直結します。
心配な場合と次にすること
GTNは適切に治療すれば、ほぼすべての患者さんで治癒が期待できる腫瘍です(Ngan 2021)。低リスクは単剤化学療法、高リスクは多剤併用療法が基本で、治療後も少なくとも12か月は毎月hCGを測って再発を監視します(Ngan 2021)。
画像検査は、hCGの経過と組み合わせて治療方針を決めるために行います。不正出血が続く、せきや血痰、頭痛など気になる症状があれば婦人科を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 画像で子宮に病変が見えないのに、GTNと言われることはありますか?
あります。奇胎後のGTNは主にhCGの推移で診断され、画像は広がりの評価や合併症の確認が中心です(Shaaban 2017)。
Q2. 胞状奇胎でなくても絨毛癌になりますか?
はい。絨毛癌・PSTT・ETTは正期産や流産など、どの妊娠のあとにも起こりえます(Ngan 2021)。
Q3. 治療が終わったあとも画像検査は続きますか?
経過観察の中心はhCGの測定ですが、ドプラを含むエコーは治療後の監視にも用いられます(Dudiak 2019)。検査の間隔は主治医に相談してください。
あわせて読みたい:胞状奇胎のエコー・MRI所見
参考文献
- Ngan HYS, Seckl MJ, Berkowitz RS, et al. Diagnosis and management of gestational trophoblastic disease: 2021 update. Int J Gynaecol Obstet. 2021;155 Suppl 1:86-93. PubMed
- Shaaban AM, Rezvani M, Haroun RR, et al. Gestational Trophoblastic Disease: Clinical and Imaging Features. Radiographics. 2017;37(2):681-700. PubMed
- Chawla T, Bouchard-Fortier G, Turashvili G, et al. Gestational trophoblastic disease: an update. Abdom Radiol (NY). 2023;48(5):1793-1815. PubMed
- Dudiak KM, Maturen KE, Akin EA, et al. ACR Appropriateness Criteria® Gestational Trophoblastic Disease. J Am Coll Radiol. 2019;16(11S):S348-S363. PubMed
- Agarwal R, Harding V, Short D, et al. Uterine artery pulsatility index: a predictor of methotrexate resistance in gestational trophoblastic neoplasia. Br J Cancer. 2012;106(6):1089-94. PubMed
- Preidler KW, Luschin G, Tamussino K, et al. Magnetic resonance imaging in patients with gestational trophoblastic disease. Invest Radiol. 1996;31(8):492-6. PubMed
- Allen SD, Lim AK, Seckl MJ, et al. Radiology of gestational trophoblastic neoplasia. Clin Radiol. 2006;61(4):301-13. PubMed
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