「肝硬変で門脈圧亢進に伴う副血行路の発達が・・」などの会話で出てくる門脈(portal vein, PV)とはCTやMRI画像でどこに相当するのでしょうか?

今回は門脈の基本解剖について今回は見ていきましょう。

門脈の基本解剖と走行

  • 門脈は膵頸部の背側で上腸間膜静脈(SMV)と脾静脈が合流して形成され、肝十二指腸間膜内を総胆管・固有肝動脈の背側で肝門へ向かう。
  • 肝門で右・左門脈(門脈右枝、左枝)に分岐し、肝内へ放射状に分布する。

左門脈:横行部と臍部

左門脈(門脈左枝)は横行部(pars transversa)→臍部(pars umbilicalis)と連続し、臍裂に沿って II・III・IV 区域へ枝を送る。臨床現場では「臍部からの左内側枝(IV)」と「左外側枝(II/III)」と表現されることが多い。

右門脈:前後区域枝

右門脈(門脈右枝)は前枝(RAPV)と後枝(RPPV)に分かれ、前区域(V・VIII)、後区域(VI・VII)へ分布する。

症例 20歳代男性 スクリーニング

膵頸部の背側でSMVと脾静脈が合流して形成され、肝門部に向かいます。

肝門部で右・左門脈(門脈右枝、門脈左枝)に分岐し、肝内へ放射状に分布します。

自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→門脈(portal vein, PV)のCT画像解剖

門脈の分岐バリアント(頻度と実践上の注意)

MDCT研究では分岐バリアントが 20–30%に認められる。代表例は以下。

  • 三分岐(Type 2):主幹から L、RAPV、RPPV が同レベルで分岐(約 11%)。
  • 右後枝先行(Type 3):主幹からまず RPPV が分岐し、その後 L と RAPV(約 10%)。

Tip:MIP/VRで「主幹→分岐→末梢」を一筆書きで確認しておくと、PVE/TIPS/肝切除の計画や塞栓範囲の見積もりで迷いにくい。

 門脈圧亢進と副血行路(臍傍静脈など)

  • 鎌状間膜内には臍傍静脈(Sappey 静脈群)が走行し、門脈圧亢進で開大して肝円索沿いの造影管状影としてCTで描出される。成人で「再疎通する」のは臍静脈そのものではなく、主として臍傍静脈と理解されることが多い。腹壁の怒張静脈(caput medusae)はこの経路と対応する。
  • 胃冠状静脈・短胃静脈、胃腎シャント、脾腎シャントなど他の副血行路も併存しうる。

関連記事:

参考文献

  1. Carneiro C, et al. All about portal vein: a pictorial display to anatomy, variants and physiopathology. Insights into Imaging. 2019.
  2. 一般的な肝造影CTプロトコールの総説(例:肝疾患におけるCTテクニックレビュー、門脈相は概ね60–90秒)。
  3. Stamm ER, et al. Normal main portal vein diameter measured on CT is larger than the widely referenced upper limit of 13 mm. Abdominal Radiology. 2016.
  4. The Radiology Assistant. Liver — Segmental anatomy.(Couinaud 区分と門脈レベルの整理に有用)
  5. Koç Z, et al. Portal vein variations: evaluation with MDCT. Diagnostic and Interventional Radiology. 2007.
  6. 標準解剖学・画像解剖の成書および門脈圧亢進における臍傍静脈(Sappey 静脈群)の解説記事。
  7. 門脈圧亢進の診断と管理に関するレビュー(HVPG の位置づけ)。

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