先に結論:meniscus sign(アスペルギローマ)
- meniscus signは肺の空洞の中にある球状の塊(菌球など)の上に、三日月状の空気が見える所見で、アスペルギローマの代表的なサインです
- アスペルギローマは結核後などの既存の空洞にできることが多く、体位で菌球が動くことが診断の助けになり、喀血が重要な合併症です
- 似た言葉のair crescent signは、侵襲性肺アスペルギルス症の回復期に壊死組織の周りにできる三日月状の空気を指すことが多く、区別して使います
- メニスカス(meniscus)は「三日月形・半月形のもの」を表す言葉で、医学では膝の半月板も同じ meniscus です。胸部X線で胸水の上縁が三日月状に見えることを「メニスカスサイン」と呼ぶこともあります
meniscus sign(メニスカスサイン)とは、主に胸部CT画像において、肺の空洞内に球状病変(fungus ballなど)が存在し、その病変と空気との間に半月状のガス像(crescent-shaped air)を認める所見です。
特にアスペルギローマ(aspergilloma)で典型的にみられる所見であり、感染性空洞病変の鑑別において非常に重要な指標です。
meniscus sign(メニスカスサイン)の日本語訳と名前の由来

- meniscus signを日本語にすると「半月状空気像」または「三日月状ガス像」となります。
- 「meniscus(メニスカス)」 は、ラテン語・ギリシャ語に由来する言葉で、「半月」「弯曲した円弧」という意味があります。理科や化学の世界では、「水の表面がガラス管の内側に沿って湾曲している状態(メニスカス)」を指します。
- 空洞の中に沈んだ球状物(例:菌球や血栓)の上に、空気がたまって形成された“弧状の空気像”が、まるで半月のように見える
この形状が「meniscus(半月)」に似ているため、meniscus signと名付けられました。 -
胸部CTにおいては空洞の下に球状の影(fungus ballなど)が沈み、その上にくっきりとした半月形の黒い(空気の)帯が現れる。この半月の形=meniscusという発想が、非常に視覚的で覚えやすい理由です。
「メニスカス」の意味:膝の半月板・液面との違い
- meniscus(メニスカス)は、ギリシャ語で「小さな月(三日月)」を意味する言葉に由来し、三日月形・半月形のものを広く指します。
- 医学で単に「メニスカス」というと、多くは膝の半月板(内側半月板・外側半月板)のことです。肺のmeniscus signとは関係がなく、形が似ているので同じ言葉が使われています。
- 理科では、細い管の中の水面が壁に沿って曲がる液面の曲線をメニスカスと呼びます。胸部X線で胸水の上縁が側胸壁に沿って三日月状に上がる像も「meniscus sign」と呼ばれることがあり、肺の空洞のmeniscus signとは別の所見です。
meniscus signの定義と画像所見
- 肺の空洞内にfungus ball(菌球)や血塊、異物などが存在
- その周囲に半月状の空気像(meniscus)が認められる
- 単純CTで十分に認識できる
症例 30歳代男性 慢性的な咳と息切れ

引用:Radiopaedia
左上肺野に肺空洞を認め、空洞内には軟部組織濃度の構造物が充満しており、その上部にはmeniscus signが認められます。
アスペルギローマを疑う所見です。
また、小葉中心性結節影(tree-in-bud appearance)を伴う限局性陰影、すりガラス様陰影、牽引性気管支拡張、一部空洞形成を伴う浸潤影がみられ、活動性の結核も合併していた症例です。
アスペルギローマ(肺アスペルギルス腫)の危険因子のひとつは、基礎に空洞性肺疾患が存在することです。その中でも結核(TB)は最も一般的な素因疾患とされています。
meniscus signを呈する代表疾患:アスペルギローマ
アスペルギルス属の真菌が既存の空洞に二次感染し、菌球(fungus ball)を形成した状態をアスペルギローマと呼びます。代表的な合併症として喀血があります。欧州呼吸器学会などの慢性肺アスペルギルス症ガイドラインでは、単純性アスペルギローマは技術的に可能であれば外科的切除(できれば胸腔鏡下)が推奨されています。喀血に対しては、トラネキサム酸や気管支動脈塞栓術で制御を図ります。
- 背景に肺結核後遺症、サルコイドーシス、壊死性肺炎などの既存空洞が存在
- 空洞内に球状陰影と、その上方に半月状のガス像(meniscus sign)
- 体位変換により陰影が移動する(可動性)ことが診断の補助所見
アスペルギローマの胸部X線(レントゲン)とCTの見え方
- 胸部X線では、上肺野の空洞の中に丸い影があり、その上に三日月状の透亮像(meniscus sign)が見えます。体位を変えて撮ると、丸い影が低い側へ移動します。
- CTでは空洞内の軟部組織濃度の塊と、塊と空洞壁の間の空気に加え、空洞壁や隣接する胸膜の肥厚を伴うことが多いとされます(Franquet 2001)。
- 診断には画像に加えて血液検査も使われ、慢性肺アスペルギルス症ではアスペルギルス抗体(沈降抗体)が90%以上の患者で陽性と報告されています(Denning 2016)。
関連記事:肺アスペルギルス症の分類は?CT画像診断の特徴は?
鑑別診断
| 疾患 | meniscus signの有無 | 特徴 |
|---|---|---|
| アスペルギローマ | 陽性 | 球状陰影と半月状空気、体位で移動する |
| 血腫・異物 | 陽性 | 非感染性、移動性あり、出血の既往あり |
| 腫瘍性空洞 | 陰性または不明瞭 | 空洞壁不整、内腔内に腫瘍組織 |
| 壊死性肺膿瘍 | なし | 粘液栓・液体貯留、非可動性 |
臨床的意義と診断のポイント
- meniscus signは真菌球が存在する既存空洞の指標として有用
- 免疫不全では侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)に進展することがあるため注意
- 典型例ではX線単純写真でも認識されるが、CTでの精査が推奨
meniscus signとair crescent signの違い
meniscus signとair crescent signは文献によっては同一のものとして記載されているものもあります(特にアスペルギローマに関しては)が、厳密には分けて書かれている文献が多いです。
| 用語 | 本来の定義 | 主な疾患 | 出現時期 |
|---|---|---|---|
| meniscus sign | pre-existing cavityに沈着した菌球や血腫などの周囲のcrescent air | アスペルギローマ | 安定期(非侵襲性) |
| air crescent sign | IPA(侵襲性肺アスペルギルス症)の回復期、壊死組織と空気の分離像 | IPA(回復期) | 好中球回復後に出現 |
meniscus signでよくある疑問
Q. meniscus signがあればアスペルギローマと決まりますか?
A. いいえ。空洞内の血腫、壊死した腫瘍、異物などでも似た像になります。既存の空洞があるか、塊が体位で動くか、抗体検査や経過を合わせて判断します。
Q. 咳や血痰があり、肺に空洞があると言われました。
A. アスペルギローマは喀血を起こすことがあります。血痰や喀血、続く咳があるときは、呼吸器内科などの医療機関を受診してください。
まとめ
- meniscus signはアスペルギローマの重要な診断所見
- 空洞+球状陰影+半月状空気像+移動性がポイント
- CTでの詳細評価と臨床背景(既存空洞、免疫状態)を加味して診断を行う
参考文献:
- Gefter WB, et al. Invasive pulmonary aspergillosis and acute leukemia. Limitations in the diagnostic utility of the air crescent sign. Radiology. 1985;157(3):605-610. PubMed
- Kuhlman JE, Fishman EK, Siegelman SS. Invasive pulmonary aspergillosis in acute leukemia: characteristic findings on CT, the CT halo sign, and the role of CT in early diagnosis. Radiology. 1985;157(3):611-614. PubMed
- Franquet T, Müller NL, Giménez A, et al. Spectrum of pulmonary aspergillosis: histologic, clinical, and radiologic findings. Radiographics. 2001;21(4):825-837. PubMed
- Denning DW, Cadranel J, Beigelman-Aubry C, et al. Chronic pulmonary aspergillosis: rationale and clinical guidelines for diagnosis and management. Eur Respir J. 2016;47(1):45-68. PubMed
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