血瘤腫/器質化血腫(organized hematoma)とは?
- 鼻副鼻腔内(特に上顎洞内)での繰り返す出血や炎症により、器質化した血腫が腫瘤状となり、緩徐に増大する。
- 日本では血瘤腫(blood boil)、欧米では器質化血腫とよぶことが多い。
- 線維性被膜に包まれ、内腔に時相の異なる血腫が混在。
- 年齢は11歳から78歳、男性優位(3:1)、約70%で繰り返す鼻出血や鼻閉がある。悪性腫瘍と紛らわしい。
- 背景に血管腫やangiomatous polypが存在したり、外傷が関与しているともされているがいまだに原因は不明。
- 初期は上顎洞自然孔付近に好発し、上顎洞・鼻腔にダンベル状の分布を示すことあり。
- 病理学的には新旧の出血や壊死、炎症性肉芽腫、硝子変性などを主体としている。上顎洞内壁に基部をもっていることが多い。
上顎洞血瘤腫のCT,MRI画像所見
- 上顎洞自然口付近に発生することが多い。
- 単純CTで不均一な高濃度を示し、大きくなると膨張性発育による上顎洞の菲薄化(骨びらん、骨欠損)を伴い、悪性腫瘍との鑑別が問題となる。鼻中隔側への偏位を伴うことが多い。
- MRIではT1強調像およびT2強調像で、ともに新旧の出血の混在により、低信号域と高信号域が混在する。診断的価値が高い所見として、T2強調像で辺縁部に線維性偽被膜やヘモデジリン沈着を反映した低信号帯を認めることが特徴的である。
- 造影CTやMRIでは、慢性炎症や出血により生じた新生血管の影響で、内部に結節状あるいは斑状、乳頭状の増強効果を認める。経時的に造影域が拡大し、辺縁の被膜も造影されるがまったく造影されない領域もある。粘膜の増強効果が保たれることが悪性腫瘍との鑑別の一助となりうる。
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参考文献:
- 新 頭部画像診断の勘ドコロ P355-6
- 頭頸部 画像診断の勘ドコロNEO P154