先に結論:上顎洞の血瘤腫(器質化血腫)
- 血瘤腫は、上顎洞の中で出血をくり返した血のかたまりが、膜に包まれて少しずつ大きくなる良性の病変で、片側の鼻出血・鼻づまりで見つかります
- CTでは骨を押し広げて薄くする(ときに骨が欠ける)腫瘤で、悪性腫瘍と間違えやすいのが問題です。MRIでは新しい・古い出血が混ざってまだらな信号、T2強調像で周囲に黒い縁(ヘモジデリン)、まだらな造影が手がかりになります
- 治療は内視鏡手術による摘出で、取りきれれば再発は少ないです
- 術前の診断にはMRIが最も役立ち、CTや生検だけでは診断がつきにくいとされます(Park 2024)
※片側だけの鼻出血や鼻づまりが続くときは、耳鼻咽喉科を受診してください。
血瘤腫/器質化血腫(organized hematoma)とは?
- 鼻副鼻腔内(特に上顎洞内)での繰り返す出血や炎症により、器質化した血腫が腫瘤状となり、緩徐に増大する。
- 日本では血瘤腫(blood boil)、欧米では器質化血腫とよぶことが多い。
- 線維性被膜に包まれ、内腔に時相の異なる血腫が混在。
- 幅広い年齢にみられ、112例の検討では年齢の中央値44歳、男性58%で、年齢・性別・出血傾向・外傷の有無を問わずみられた(Park 2024)。繰り返す鼻出血や鼻閉で受診することが多い。悪性腫瘍と紛らわしい。
- 病変のそばに血管奇形や小さな血管腫がみられた例も報告されている(Wu 2013)が、原因はいまだ不明。
- 初期は上顎洞自然孔付近に好発し、上顎洞・鼻腔にダンベル状の分布を示すことあり。
- 病理学的には新旧の出血や壊死、炎症性肉芽腫、硝子変性などを主体としている。上顎洞内壁に基部をもっていることが多い。
「血瘤」「血瘤腫」という言葉の意味
血瘤腫は「血のかたまりでできたこぶ(瘤)」という意味の呼び名で、がん(腫瘍)ではありません。英語では organized hematoma、organizing hematoma と呼ばれます。
上顎洞血瘤腫のCT,MRI画像所見
- 上顎洞自然口付近に発生することが多い。
- 単純CTで不均一な高濃度を示し、大きくなると膨張性発育による上顎洞壁の菲薄化(骨びらん、骨欠損)を伴い、悪性腫瘍との鑑別が問題となる。手術例20例の検討では、主訴は鼻出血が70%と最多で、CTでは片側性の膨張性陰影と不均一な造影効果を示し、骨破壊は25%、局所石灰化は15%にみられた。内視鏡を中心とした手術で全例再発はなかった。
- MRIではT1強調像およびT2強調像で、ともに新旧の出血の混在により、低信号域と高信号域が混在する。診断的価値が高い所見として、T2強調像で辺縁部に線維性偽被膜やヘモジデリン沈着を反映した低信号帯を認めることが特徴的である。
- 造影CTやMRIでは、慢性炎症や出血により生じた新生血管の影響で、内部に乳頭状・葉状(frond-like)の増強効果を認め、辺縁の被膜も造影される(Hur 2015)。
- 骨壁のなめらかな菲薄化・びらん、非常に不均一な信号、乳頭状・葉状の造影が、悪性腫瘍と区別する手がかりとされる(Hur 2015)。
どの検査で診断がつきやすいか
112例の検討で、手術前に「血瘤腫(器質化血腫)が最も考えやすい」と正しく判断できた割合は次のとおりでした(Park 2024)。
| 検査 | 正しく診断できた割合 |
|---|---|
| 造影MRI | 87% |
| 造影CT | 53% |
| 生検(パンチ生検) | 49% |
| 単純CT | 16% |
生検では診断がつかないことが多く、T2強調像の辺縁の低信号帯などMRIの所見が大切です(Wu 2013)。
よくある疑問(Q&A)
Q. 手術のあと再発しますか?
A. 内視鏡を中心とした手術を受けた20例では、全例で再発がありませんでした(Song 2007)。
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症例 30歳代女性

引用:Ohta N et al. Int J Otolaryngol 2013(Figure 1)
2か月前からくり返す鼻出血がある症例の造影CTです。右上顎洞に不均一に造影される腫瘤があり、中心部が強く造影されています。右鼻腔の外側壁は圧排され、薄くなっています。(出典:Ohta N et al. Int J Otolaryngol 2013, Figure 1, CC BY 3.0)

引用:Ohta N et al. Int J Otolaryngol 2013(Figure 2)
同じ症例のMRIです。(a)T1強調像(冠状断)では腫瘤の中心部がやや低信号です。(b)T2強調像では腫瘤は不均一で、中心部が高信号、その周りは中心部より低い信号です。(c)造影では中心部が強く造影され、周りの部分は中心部より造影が弱く、肥厚した副鼻腔粘膜も強く造影されています。(出典:Ohta N et al. Int J Otolaryngol 2013, Figure 2, CC BY 3.0)
参考文献:
- 新 頭部画像診断の勘ドコロ P355-6
- 頭頸部 画像診断の勘ドコロNEO P154
- Lee HK, Smoker WR, Lee BJ, et al. Organized hematoma of the maxillary sinus: CT findings. AJR Am J Roentgenol. 2007;188(4):W370-3. PubMed
- Song HM, Jang YJ, Chung YS, et al. Organizing hematoma of the maxillary sinus. Otolaryngol Head Neck Surg. 2007;136(4):616-20. PubMed
- Park MJ, Choi JW, Kim JH, et al. Sinonasal Organizing Hematoma: Demographics, Diagnosis, and Treatment Outcomes of 112 patients. Laryngoscope. 2024;134(4):1581-1590. PubMed
- Hur J, Kim JK, Byun JS, et al. Imaging characteristics of sinonasal organized hematoma. Acta Radiol. 2015;56(8):955-9. PubMed
- Wu AW, Ting JY, Borgie RC, et al. Diagnostic characteristics of sinonasal organizing hematomas: avoiding misdiagnosis. Int Forum Allergy Rhinol. 2013;3(7):598-602. PubMed
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