乳頭状腎細胞癌 Papillary RCC
- 2番目に多い。腎細胞癌の5-10%。男女比1対1。
- 比較的予後の良い細胞型(特にtype 1)である。
- 乳頭状構築を示す腫瘍細胞、黄色腫細胞を伴う。
- 肉眼的には出血、hemosiderin沈着を反映しベージュ色もしくは、茶褐色。
- 境界明瞭だが、内部は非常に汚い腫瘍。出血やヘモジデリン、コレステリンの沈着を反映している。ただし、淡明型と異なり、均一。金太郎飴様。
- c-met遺伝子の活性型変異(type1家族性症例)、Fumarate hydratase遺伝子の失活型変異(type2家族性症例)
- 染色体異常を伴う(Y染色体欠損および3q, 7, 12, 16, 17, 20のtrisomy)。
- 近位尿細管曲部上皮に由来するとされ、病理組織上、Type1、2あり。1は核の異型性は小さい。2は大きい。
- 両側に多発する家族性のものはtype 1であり、散発性のものはtype 1, 2両方ありうる。type 2の方が予後が悪い。
type 1
- 境界明瞭、均一な像。
- 小さめの好塩基性の胞体をもつ腫瘍細胞が単層で細い乳頭を形成。
- 典型的なのはこちら。
type 2
- poor prognosis
- 境界不明瞭、求心性発育。
- 腫瘍塞栓を伴うことがある。
- 進行がんであることが多い。
- 早期のものはType1に類似する。
- 大きめの好酸性の胞体をもつ腫瘍細胞が偽重層化し乳頭を形成
http://www.ajronline.org/doi/pdf/10.2214/AJR.07.3181より引用。
乳頭状腎細胞癌の画像所見
- 単純CTで軽度高吸収、造影の程度は軽微なことが多い。
- 典型的にはhypovascularで均一。(淡明型は不均一。)
- 小さい場合は、ヘモジデリン沈着を反映して、T2強調像(T2*強調像)で全体に低信号を呈する(83%)。(大きくなると変性などのため、必ずしもT2強調像で低信号とはならない)。
- 偽被膜あり(83%)。
- 腫瘍間質への泡沫細胞(foam cell:脂肪貧食した組織球)浸潤も特徴で、特にtype 1でより高頻度にfoam cellを伴いやすい。chemical shift画像で検出されうる。一般に淡明細胞癌よりもその程度は軽く低頻度である。
発育形式 | type1 | type2 |
---|---|---|
偽被膜 | (+) | (-) infiltrative |
均一性 | 均一 | 不均一 (壊死・嚢胞、出血) |
脂肪 | 含む (in/out of phase) | 含む (in/out of phase) |
造影パターン | Hypovascular wash outなし。 T2WI,T2*WIでの低信号。 鉄(ヘモジデリン)含有。 | Hypovascular wash outなし。 T2WI高・低混合。 T2 *低信号。 進行例は境界不明瞭。 腎門への浸潤性強い。 静脈腫瘍塞栓 |
画像上鑑別が問題となるのは
- 脂肪の少ないAML(単純CTで高、造影軽微)
- complicated cyst(単純CTで高)
- metanephric adenoma(後腎性腺腫)(単純CTで高)
- 嫌色素細胞癌(造影軽微)
complicated cystかRCCかの鑑別
平衡相でのCT値>70HU あるいは不均一に造影される
→よりRCCらしい。
Suh M,et al Radiology;228:330-334,2003
papillary RCC v.s. AML with minimal fat(脂肪の少ないAML)
単純CTで高吸収結節(充実性)を見たら、
- 脂肪を探す(薄いスライスを追加して必死で探す)→ともにあり。
- Beak signに注目する。→AMLの場合これがないことあり。
- MRIを撮影する。
T2WI、T2*で低信号か→低信号なら乳頭状。鉄含有を示唆。
T2WIで筋と等信号か→等信号なら筋を反映して、AML(fatなし)
偽被膜があるか→あれば乳頭状