先に結論:膝のMRIでわかること・正常な見え方

  • 膝のMRIでは、レントゲンでは写らない半月板・前十字靱帯/後十字靱帯・側副靱帯・関節軟骨・骨髄(骨のむくみや骨折)・関節液を詳しく見ることができ、半月板損傷や靱帯損傷の診断に役立つ検査です。関節鏡と比べた解析では、前十字靱帯断裂の感度87%・特異度93%、内側半月板断裂は89%・88%、外側半月板断裂は78%・95%でした(Phelan N, et al. 2016)
  • 正常では、半月板と靱帯はどの撮り方でも黒い(低信号)のが基本で、傷つくと水分が入って白い線(高信号)として見えます。そのため、水が白く写る脂肪抑制T2強調像・STIR・脂肪抑制プロトン密度強調像を中心に見ます
  • プロトン密度強調像は、組織の水素(プロトン)の量を反映する撮り方で、半月板や軟骨の細かい構造が見やすく、関節のMRIでよく使われます。検査は膝用のコイルをつけて足から機械に入り、多くは頭は機械の外に出たままで撮影できます。膝の痛み・腫れ・ひっかかりが続くときは医療機関に相談してください

膝関節MRIの正常構造と信号パターン

  • 半月板:いずれのシークエンスでも低信号
  • 靱帯:いずれのシークエンスでも低信号。ただし、TEの短い撮像(T1強調像・プロトン密度強調像など)では、静磁場に対して約55°傾いて走る腱・靱帯・半月板が高信号に見えることがあり(magic angle効果)、損傷と見誤らないよう注意が必要です。
  • 関節軟骨:T2WIでは低〜中間信号(撮像法で異なる)だが、T2*WI、脂肪抑制PDWI(プロトン密度強調像)では高信号
  • 骨髄:赤色髄の割合によって見え方は異なる。半月板では、半月板靱帯・半月大腿靱帯・膝窩筋腱の半月板束などの正常構造や、円板状半月・meniscal flounce・半月板小骨・軟骨石灰化症などが断裂と紛らわしいので注意します。断裂がはっきりしないときも、半月板周囲嚢胞・半月板の逸脱(extrusion)・線状の軟骨下骨髄浮腫といった間接所見があれば断裂を疑います。

損傷すると水強調像で高信号を示す

  • T2WI、脂肪抑制T2WI、STIR、脂肪抑制PDWI(プロトン密度強調像)を中心に観察し、骨髄異常信号を評価する場合にはT1WIも観察する。(T1WIでは骨の異常(骨棘、軟骨下病変、骨折線など)が見やすい、脂肪とのコントラストがつきやすく筋肉が見やすいというメリットがある)。

膝のMRIでわかる主な病気と見え方

病気・所見 MRIでの主な見え方
半月板損傷 黒い半月板の中に関節面に達する白い線。2枚以上の画像で見えれば断裂とする目安がある(De Smet AA, et al. 2006)
前十字靱帯損傷 靱帯が途切れる・形がくずれる。骨挫傷を伴うことが多い(Ward P, et al. 2022)
骨挫傷・骨折 脂肪抑制T2強調像・STIRで骨髄が白く、T1強調像で黒い
軟骨損傷・変形性膝関節症 軟骨が薄くなる・欠ける、軟骨下骨の信号変化、骨棘

MRIの精度は高いものの100%ではなく、外側半月板断裂の感度はやや低め(78%)と報告されています(Phelan N, et al. 2016)。

半月板損傷の見方:断裂の型と、年代で違う膝の病変

半月板断裂は、形によって水平断裂・縦断裂・放射状断裂・根部断裂・複合断裂・転位した断裂・バケツ柄断裂などに分けて報告します。形によって治療の考え方が変わり、縦断裂は縫合の対象になりやすく、水平断裂や放射状断裂は部分切除が必要になることがあるとされています(Nguyen 2014)。

膝のMRIで見つかる病変は年代によって傾向が違います。年代の目安を頭に入れておくと、所見の意味づけがしやすくなります。

年代 よくある病変 MRIのポイント
若年者(スポーツ外傷) 前十字靱帯損傷、膝蓋骨脱臼、外傷性の半月板断裂 前十字靱帯断裂では骨挫傷の合併が多い(Ward 2022)。膝蓋骨脱臼は若い成人に多く、内側膝蓋骨と外側大腿骨顆の骨挫傷(kissing contusion)、内側膝蓋大腿靱帯の損傷が手がかり(Earhart 2013)
中年〜高齢者 変性による半月板断裂、変形性膝関節症 半月板の水平断裂や、軟骨のすり減り、骨棘。断裂があっても症状の原因とは限らない(下記)
高齢者(特に急な痛み) 軟骨下脆弱性骨折(以前は特発性骨壊死と呼ばれた) 大腿骨顆などの軟骨下の低信号線と、その周囲の広い骨髄浮腫様の信号。半月板の後根断裂を伴うことが多い(Ochi 2022)

膝蓋骨脱臼は、受診した時にはすでに膝蓋骨が元に戻っていて、診察では気づかれないことが半数ほどあるとされ、MRIの骨挫傷と靱帯損傷の組み合わせで診断がつくことがあります(Earhart 2013)。急性の膝蓋骨脱臼のMRI(発症後8週以内)81例の検討では、外側大腿骨顆の骨挫傷が80%、内側膝蓋骨の骨挫傷が61%、内側膝蓋支帯の損傷が76%でした(Elias 2002)。

中高年では、MRIで半月板断裂があっても症状の原因とは限りません

50〜90歳の991人を対象にした地域住民の研究では、膝に症状がなくても、MRIで半月板の断裂や破壊がみられる割合は、50〜59歳の女性で19%、70〜90歳の男性で56%でした。半月板断裂のある人の61%は、直前1か月に膝の痛みやこわばりがありませんでした(Englund 2008)。年齢が上がるほどMRIの半月板断裂は「よくある所見」になるため、痛みの場所や診察の所見と合わせて評価することが大切です。

膝のMRIの見方(読影の手順)

膝のMRIは、矢状断・冠状断・横断の3方向を、次の順に見ると見落としが減ります。

順番 見るもの ポイント
1 関節液・膝の裏 関節液の量、Baker嚢胞、滑液包の液
2 骨髄 骨挫傷・骨折・軟骨下の低信号線。脂肪抑制T2強調像・STIRで白く、T1強調像で黒い
3 半月板 関節面に達する高信号(2スライス以上)、形の欠け、転位した断裂片(De Smet 2006)
4 十字靱帯 ACLの連続性と傾き、PCLのたわみ(ACL断裂)
5 側副靱帯 冠状断でMCL浅層の全長と周りのむくみ(MCL損傷)
6 伸展機構・膝蓋大腿関節 膝蓋腱・大腿四頭筋腱・内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)。膝蓋骨脱臼の後では内側の支持組織と骨挫傷を見る(Elias 2002)
7 関節軟骨 薄くなる・欠ける、軟骨下骨の信号変化(関節軟骨損傷のMRI)

レントゲン・CT・MRIの使い分け

骨折や変形性膝関節症(関節のすき間の狭さ・骨棘)はレントゲンで確認し、半月板・靱帯・骨髄の変化はMRIで評価します。骨折の形や骨片の評価にはCTが向いています。軟骨下脆弱性骨折(以前の特発性骨壊死)は、レントゲンで診断できるのは進んだ時期で、MRIが必要になることが多いとされます(Maris 2024)。

実際の画像で見る:レントゲンで目立たず、MRIでわかる病変

症例(論文):内側大腿骨顆の軟骨下脆弱性骨折

軟骨下脆弱性骨折 X線
引用:Maris A et al. Radiol Case Rep 2024(Fig. 1)

膝の側面X線写真です。膝蓋上嚢に少量の関節液がありますが、脂肪血関節症や骨の損傷は見られません。(出典:Maris A et al. Radiol Case Rep 2024, Fig. 1, CC BY 4.0)

軟骨下脆弱性骨折 MRI
引用:Maris A et al. Radiol Case Rep 2024(Fig. 3)

同じ患者の横断(A)・冠状断(B)の脂肪抑制プロトン密度強調像です。内側大腿骨顆の関節軟骨のくぼみと軟骨下骨板の不整があり(矢印)、軟骨の欠けに比べて不釣り合いに強い骨髄浮腫が広がっています。軟骨下脆弱性骨折を示唆する所見です。(出典:Maris A et al. Radiol Case Rep 2024, Fig. 3, CC BY 4.0)

詳しくは大腿骨内顆の軟骨下脆弱性骨折(SIFK)をご覧ください。

症例(論文):外側膝蓋骨脱臼のあとの内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)断裂

膝蓋骨脱臼 MPFL断裂 MRI
引用:Nagasaki K et al. Reports (MDPI) 2026(Figure 2)

12歳の小児の、受傷時のCT(A)とMRI(B)の横断像です。CTでは大腿骨滑車の形の異常があり、MRIでは内側膝蓋大腿靱帯の断裂(矢印)が確かめられます。(出典:Nagasaki K et al. Reports (MDPI) 2026, Figure 2, CC BY 4.0)

膝蓋骨脱臼の骨挫傷・骨軟骨損傷は膝蓋骨外側脱臼による骨軟骨損傷のMRIにまとめています。

膝のMRIでよくある疑問(Q&A)

Q. 半月板の中に白い線があれば、断裂ですか?
A. 白い信号が関節面に達していて、2枚以上の画像で見えるときに断裂と診断する目安があります(De Smet 2006)。一方で、半月板靱帯・半月大腿靱帯・膝窩筋腱の半月板束などの正常構造、円板状半月、meniscal flounceなどが断裂に似て見えることがあるため注意します(Nguyen 2014)。

Q. 年齢が高いと、半月板断裂は手術が必要ですか?
A. 一概には言えません。上のとおり、MRIで断裂があっても症状がない人は多く、治療は痛みの場所、動かしたときのひっかかり、関節の変形の程度などを合わせて整形外科で決めます。膝の痛みや腫れ、ひっかかりが続くときは、受診してください。

Q. MRIの前にレントゲンを撮るのはなぜですか?
A. 骨折や変形性膝関節症はレントゲンで確認でき、半月板や靱帯はレントゲンに写らないため、必要に応じてMRIを追加します。軟骨下脆弱性骨折のように、早い時期はレントゲンで目立たず、MRIで見つかる病変もあります(Maris 2024)。

Q. 膝蓋骨が外れてすぐ戻りました。MRIで脱臼したとわかりますか?
A. わかることがあります。急性の外側膝蓋骨脱臼のMRIでは、外側大腿骨顆の骨挫傷(80%)、内側膝蓋骨の骨挫傷(61%)、膝蓋骨付着部での内側膝蓋支帯の断裂(76%)が多くみられ(Elias 2002)、この組み合わせが手がかりになります(Earhart 2013)。

関連記事:膝MRIの矢状断の正常解剖/膝MRIの冠状断の正常解剖/半月板断裂のMRI画像診断/前十字靱帯(ACL)断裂のMRI/内側側副靱帯(MCL)損傷のMRI

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの膝MRIの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。

あわせて読みたい:脛骨顆間隆起骨折の画像診断

参考文献

  1. Richardson ML, Amini B, Richards TL. Some new angles on the magic angle: what MSK radiologists know and don’t know about this phenomenon. Skeletal Radiol. 2018;47(12):1673-1681. PubMed
  2. De Smet AA, Tuite MJ. Use of the “two-slice-touch” rule for the MRI diagnosis of meniscal tears. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(4):911-4. PubMed
  3. Oei EH, Nikken JJ, Verstijnen AC, et al. MR imaging of the menisci and cruciate ligaments: a systematic review. Radiology. 2003;226(3):837-848. PubMed
  4. Nguyen JC, De Smet AA, Graf BK, et al. MR imaging-based diagnosis and classification of meniscal tears. Radiographics. 2014;34(4):981-999. PubMed
  5. Phelan N, Rowland P, Galvin R, et al. A systematic review and meta-analysis of the diagnostic accuracy of MRI for suspected ACL and meniscal tears of the knee. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2016;24(5):1525-1539. PubMed
  6. Ward P, Chang P, Radtke L, et al. Clinical implications of bone bruise patterns accompanying anterior cruciate ligament tears. Sports Health. 2022;14(4):585-591. PubMed
  7. Englund M, Guermazi A, Gale D, et al. Incidental meniscal findings on knee MRI in middle-aged and elderly persons. N Engl J Med. 2008;359(11):1108-15. PubMed
  8. Ochi J, Nozaki T, Nimura A, et al. Subchondral insufficiency fracture of the knee: review of current concepts and radiological differential diagnoses. Jpn J Radiol. 2022;40(5):443-457. PubMed
  9. Earhart C, Patel DB, White EA, et al. Transient lateral patellar dislocation: review of imaging findings, patellofemoral anatomy, and treatment options. Emerg Radiol. 2013;20(1):11-23. PubMed
  10. Elias DA, White LM, Fithian DC. Acute lateral patellar dislocation at MR imaging: injury patterns of medial patellar soft-tissue restraints and osteochondral injuries of the inferomedial patella. Radiology. 2002;225(3):736-43. PubMed
  11. Maris A, Al-Khudairi R, Maslaris A, et al. Subchondral insufficiency fracture of the medial femoral condyle treated conservatively with early non-weightbearing. Radiol Case Rep. 2024;19(10):4158-4162. PubMed
  12. Nagasaki K, Mitsuhashi M, Seino T, et al. Primary Lateral Patellar Dislocation Associated with an Increased Sulcus Angle in an African Child: A Case Report of Synthetic Graft-Assisted Medial Patellofemoral Ligament Reconstruction. Reports (MDPI). 2026;9(3):232. PubMed

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