先に結論:骨化性筋炎(こっかせいきんえん)とは
- 打撲などのけがのあと、筋肉の中に骨ができてしまう病気です(異所性骨化)。名前に「筋炎」とありますが細菌などによる炎症ではなく、良性です。若い人の太もも・肘・お尻に多く、まひ・脊髄損傷・やけどのあとに起こることもあります
- 症状はしこり・痛み・腫れ。レントゲンやCTでは、はじめは軟部組織の腫れだけですが、数週間でぼんやりした石灰化が出て、1〜2か月で外側ほど骨化が強い殻のような骨(ゾーン現象)になります
- 「化骨性筋炎」「仮骨性筋炎」とも書かれます。異所性骨化(本来骨がない場所に骨ができること)の中で、筋肉などにかたまり状にできるものが骨化性筋炎です
- 早い時期は骨肉腫などの悪性腫瘍とまぎらわしいため、経過を追って骨化の形の変化を確認することが大切です。多くは安静などの保存的治療で軽快します
骨化性筋炎(myositis ossificans)
- 非炎症性軟部腫瘤であり、外傷に伴うことが多い。近年は病変にUSP6遺伝子の再構成が見つかり、指の線維骨性偽腫瘍・結節性筋膜炎・動脈瘤様骨嚢腫とともに「USP6関連腫瘍」としてまとめて扱われるようになっている。
- 筋肉内もしくは軟部組織内に異所性の骨化を伴う腫瘤が起こる。
- 症状は、腫瘤触知、疼痛、腫脹。
- 外傷後に起こるものと、外傷の既往のない非外傷性に分けられる。
- 非外傷では、麻痺、熱傷、テタニー、筋肉血腫などに続発する。
- 若年者に多く、肘、大腿部、臀部などに起こる。
- 対麻痺の患者は特に股関節や膝周辺に多い。
- 治療は安静など保存的治療が基本で、多くは自然に軽快する。症状が残る場合は、骨化が成熟してから(急性期を過ぎてから)手術を検討する。
異所性骨化と骨化性筋炎の違い
異所性骨化は骨のない場所に骨ができる現象全体を指す言葉で、骨化性筋炎はそのうち筋肉などにひとかたまりの腫瘤としてできるものです。
| 骨化性筋炎 | そのほかの異所性骨化 | |
|---|---|---|
| きっかけ | 打撲などの外傷が多い | 脊髄損傷、手術、やけど、遺伝性(FOP)など |
| 形 | 筋肉内の境界明瞭な腫瘤 | 関節のまわりに広がることが多い |
画像所見
CT、レントゲン
- 発症早期:軟部組織の腫脹、時に骨膜反応。
- 数週間後:斑状の淡い石灰化。(この時期は悪性腫瘍と鑑別が困難になることが多い)
- 1-2ヶ月後:レース状の辺縁明瞭な骨化。骨化は辺縁ほど強い。(ゾーン現象:zone phenomenon) ※慢性期に見られる現象。中心部は未熟な紡錘形細胞や類骨変性からなり、辺縁は成熟した骨梁からなる。
- 近接する骨とは連続性を持たない事が多いが、持つこともある。
- 骨シンチで集積が見られる。
- MRIでは急性期には病変部の浮腫性変化を認め、慢性期になると成熟した骨化となり内部の脂肪髄によりT1WI、T2WIともに高信号になる。早期病変はMRIでリング状に造影され周囲筋にも増強を伴うため、膿瘍や壊死性腫瘍と紛らわしく、MRIだけでは特異的な診断が難しいことがあります。
骨肉腫との見分け方
画像で決めきれないときは、時間をおいた再検査や生検を検討します(Walczak 2015)。
| 見るところ | 骨化性筋炎 | 骨肉腫(骨外・傍骨性など) |
|---|---|---|
| 骨化の分布 | 辺縁ほど成熟(ゾーン現象) | 中心ほど濃く、外側は不整 |
| 近くの骨との関係 | すき間があることが多い | 付着していることが多い |
| 経過 | 骨化が成熟し、縮小することもある | 増大する |
軟部組織の骨化をきたしうる疾患
- 神経麻痺
- 外傷、熱傷
- 静脈うっ滞
- 骨肉腫
- 骨化性筋炎
- 進行性骨化性線維異形成症(FOP、旧称:進行性骨化性筋炎)
- 術後瘢痕
症例 60歳代男性 脊損後。

左の縫工筋に沿った石灰化あり。
脊損前はなく、脊損後9ヶ月目のフォローCTで指摘。
骨化性筋炎を疑う所見です。
症例 50歳代男性 1週間続く左股関節の痛み 片麻痺の既往

引用:Radiopaedia
左股関節周囲の軟部組織に広範な石灰化物質を認めています。これらは、上方は腸骨の下部近くまで、下方は小転子の下方付近まで広がっています。骨化性筋炎(MO)を疑う所見です。
骨化性筋炎でよくある疑問(Q&A)
Q1. 外傷性骨化性筋炎は治りますか?
A. 自然に落ち着く良性の病気で、多くは保存的治療で軽快します(Walczak 2015)。ただし打撲後のしこりの原因はほかにもあるため、しこりが大きくなる・痛みが続くなど気になる症状があれば医療機関を受診してください。
参考文献
- Kransdorf MJ, Meis JM, Jelinek JS. Myositis ossificans: MR appearance with radiologic-pathologic correlation. AJR Am J Roentgenol. 1991;157(6):1243-8. PubMed
- Shirkhoda A, Armin AR, Bis KG, et al. MR imaging of myositis ossificans: variable patterns at different stages. J Magn Reson Imaging. 1995;5(3):287-92. PubMed
- Walczak BE, Johnson CN, Howe BM. Myositis Ossificans. J Am Acad Orthop Surg. 2015;23(10):612-22. PubMed
- May DA, Disler DG, Jones EA, et al. Abnormal signal intensity in skeletal muscle at MR imaging: patterns, pearls, and pitfalls. Radiographics. 2000;20 Spec No:S295-315. PubMed
- Cordier F, Van Dorpe J, Sciot R, et al. A morphomolecular study of 175 ‘USP6-associated neoplasms’: The USP6 fusion partner strongly depends on morphology and location. Histopathology. 2026;88(4):898-910. PubMed
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