腹部CTで消化管と腸間膜などの脂肪のコントラストがつきにくい、消化管のガスと脂肪のコントラストがつきにくくて消化管が追いにくいということがあります。
そういった時に脂肪ウインドウにすれば追いやすくなるということで、今回はそちらを解説していきたいと思います。
通常の腹部CTの条件では腸管と脂肪のコントラストがつきにくい場合がある
こちらが腹部の単純CTですが、消化管とそれから腸間膜、あるいは大網のコントラストが非常につきにくいということがわかると思います。
横行結腸の中のガスとこの周りの脂肪、どちらも低吸収で黒いのでこのコントラストが非常につきにくいということがわかると思います。
これをどうすればコントラストがつきやすくなって消化管を追いやすくなるのか、ということについてみていきます。
CT値の復習
まずCT値の復習です。
CT値というのは水が0HU(Hounsfield Unit:ハンスフィールドユニット)として、骨を1000HUとします。(骨も1000以上2000のものもありますが、基本的に骨は1000ということにします)
そして空気が-1000HU、脂肪が-100HU程度です。
このあたりの位置関係をまずおさえておきましょう。
通常の腹部CTの条件では?
腹部の条件ですが、WW(ウインドウ幅)、WL(ウインドウレベル)、それが300HUと40HUです。
これがだいたいの腹部の撮影条件になると思いますが、この場合にはWLである40HUが中央値になります。
ウインドウの中央の値がWLであるということで、40HUを中心としてWWは300HUの幅を持たせてます。
すなわち、上のように40HUを中心として190HU、それから-110HU、この中でこの白黒の濃度差を持たせるということになります。
190HUを越えるものというのは真っ白になりますし、-110HU以下のものは真っ黒になるということです。
あくまでこの中でコントラストを持たせるというのがこの300HUと40HUの意味になります。
そうすると、脂肪は-100HU程度、空気は-1000程度であったので、これはほぼ黒です。
この条件では脂肪も空気もほぼ真っ黒になってしまうので、コントラストはつかないということになってしまいます。
どうすればいいかというと、このコントラストをもっと左側の方に幅を広げる必要があるわけですね。
すなわち、空気と脂肪を区別できるようにするようにするには、ウインドウ幅を今の300HUでは足りずにもっと広げる必要があるということになります。
脂肪が-100HUなので、この-110HUの条件では脂肪がほぼ真っ黒になるので、ここを広げることで、もう少し脂肪を白くする、ということです。
空気はそのまま真っ黒でいいですが、脂肪をもう少し高吸収にして、少し白みを持たせて空気と脂肪を鑑別するためには、ウインドウ幅を広げる必要があるということになります。
では先ほどの症例で、少しウインドウ幅を広げてみたいと思います。
こちらが先ほどの症例ですが、WWが300HUになっていますので、WWを400HUにして100HU広げてみます。
そうすると上のように脂肪の濃度が少し高吸収になって、内部のガスと周りの脂肪のコントラストが先ほどよりもついたのがわかると思います。
先ほどは脂肪もガスも真っ黒だったのですが、脂肪が少し高吸収になったので、これで消化管を追うことができます。
このように脂肪を見やすくするために、脂肪ウインドウといって、ウインドウ幅を広げるということを実際の現場ではやっていただけたらと思います。
脂肪ウインドウ、エアウインドウ
脂肪ウインドウのほかに、空気をより見やすくするエアウインドウというものがあります。
脂肪ウインドウはFat window、これはWW/WLを400HUから-25HU程度にすると、より適切に脂肪が見やすくなるということです。
エアウインドウというのは消化管穿孔などでエアを探す時に使っていただきたいんですが、これはWWが2000HU、WLを-600HU程度にするとより見やすくなります。
通常の腹部の表示のほかに、脂肪ウインドウ、エアウインドウの条件で表示させて観察することで、見落としを減らすことができるということです。
最後に
脂肪をより明瞭にしたい、とくに脂肪織濃度上昇を認めている場合や、あるいは今回の場合のように消化管を追う際にガスと脂肪のコントラストをつかせたい場合、あとは消化管穿孔において、腹腔内遊離ガス(free air)を探す場合などに、脂肪ウインドウ、エアウインドウを使うことで見落としを減らすことができます。
今回はその中でも脂肪ウインドウ幅を広げることで、脂肪と空気を鑑別することができるということについて、紹介させていただきました。
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