先に結論:肝類上皮血管内皮腫(EHE)のCT・MRI
- 類上皮血管内皮腫は、血管の内皮細胞から出るまれな悪性腫瘍(低〜中等度の悪性度)で、肝臓に多く、中年女性にやや多い病気です。進行がゆっくりなことも多く、経過はさまざまです
- 画像の特徴は、肝臓の表面近く(被膜下)に多発し、だんだん癒合する腫瘤と、肝表面のへこみ(被膜陥凹)、造影で中心が低く・縁が染まり・外側に低いhaloの3層(標的状)、そして腫瘤の縁で肝静脈や門脈が途切れる「lollipop sign」です
- lollipop signは肝転移ではまれで(患者単位で6.4%)、被膜陥凹とならんでEHEを疑う手がかりになります。ただし小さな病変では出にくい所見です
- 確定には肝生検が必要で、治療は切除、多発例では肝移植なども検討されます
- 名前の似た血管肉腫(悪性度が高い)や類上皮血管腫(良性)とは別の病気で、肝臓以外では肺にも発生します
類上皮血管内皮腫(Epithelioid hemangioendothelioma(EHE))
- かつては血管腫と血管肉腫の中間の低悪性度腫瘍とされたが、現在は転座をもつまれな血管性肉腫と位置づけられ、90%超にWWTR1-CAMTA1融合遺伝子(t(1;3))、約5%にYAP1-TFE3融合遺伝子を認める(Beretta 2026)。臨床経過は低悪性度から高悪性度肉腫に近いものまで幅がある。
- やや女性に多いとされ(肝EHE137例では61%が女性)、発症年齢は12〜86歳と様々である(Makhlouf 1999)。
- 肺や肝、リンパ節、骨、脾臓などにも病変が見られることが多く、転移もしくは多中心性発生と考えられている。
- 偶然発見されるほか、胸腹部痛や衰弱等、非特異的な症状 を呈することもある。
- 発見時は多発例が大半で、転移率は27%と報告されている。肝外病変は肺・腹膜・リンパ節・骨に多い。5年以上生存したのは43%と報告されている(Makhlouf 1999)。
- 特徴的な腫瘍マーカーや危険因子はないとされ、確定診断には免疫染色を含めた病理診断が必須。
- 治療は可能であれば原則として外科切除を行う。多発例が多いため肝移植も選択肢となり、文献レビューでは5年生存率が肝切除75%、肝移植54.5%、無治療4.5%と報告されている(Mehrabi 2006)。
- 基本的には低悪性の進行性疾患であるが、一方では無治療でも長期生存例があり、症例ごとに治療法を慎重に検討する必要がある。
肝類上皮血管内皮腫の画像所見
- 辺縁、被膜下に偏在することが多い。
- 病初期は結節状、進行すると癒合する傾向があり、びまん性発育を示し、被膜陥凹所見を伴うことが多い。
- 単純CTでは境界明瞭な低吸収結節。
- 造影CTで、中心の低濃度、辺縁の造影増強効果、その外側のhaloを呈し、3層構造(低-高-低)。
- MRIのT2WIで疎な浮腫状結合織やviableな腫瘍が高信号、線維性結合織や出血や凝固壊死や石灰化が低信号を呈し、外側に低信号のhalo(血栓化した脈管)がとりまく。67例の検討では、多発が88%、肝辺縁の被膜下に位置するものが96%、被膜陥凹が81%、癒合が61%で、門脈相の標的状所見は69%にみられた。MRIでもT2強調像の67%、拡散強調像の61%に多層の標的状所見を認めた(Ganeshan 2020)。
lollipop sign(ロリポップサイン)とは
lollipop signは、造影CT・MRIで境界のはっきりした腫瘤(あめ玉)に、肝静脈または門脈の枝(棒)が向かってきて、腫瘤の縁かそのすぐ内側で途切れる見え方を、棒付きキャンディーに見立てた名前です。多発する肝EHEの4例すべてで、一部の病変の縁で肝静脈か門脈が終わる像がみられたことから提唱され、ほかの画像所見と組み合わせるとEHEに特異的な所見と考えられています(Alomari 2006)。
見るときのポイントは次のとおりです。
- 門脈相で探す:棒にあたるのは途中で閉塞した静脈で、門脈相で肝静脈・門脈の枝を腫瘤までたどると見つけやすくなります(Liu 2022)。
- 血管が腫瘤の縁かそのすぐ内側で終わっていることを確かめます(Alomari 2006)。
- 大きな病変ほど出やすい:57例412病変のMRIでは、lollipop signは病変単位で14.6%、被膜陥凹は11.4%にとどまりましたが、5cmを超える病変で最も多くみられました(Liu 2022)。
| 報告 | 対象 | lollipop signの頻度 |
|---|---|---|
| Liu 2022(MRI) | 肝EHE 57例・412病変 | 病変単位14.6%、患者単位66.7%(肝転移では6.4%) |
| Tan 2023(造影CT) | 肝EHE 93例・740病変 | 局所で癒合する型の患者で74.3%と最多。病変の大きさで頻度に差があった |
患者単位で比べると、肝転移ではlollipop sign(66.7% vs 6.4%)も被膜陥凹(59.6% vs 3.2%)もまれで、両者は肝EHEを疑うのに役立つ所見とされています(Liu 2022)。一方で病変単位では見られない病変のほうが多いため、1つの病変で見えなくても否定はできず、多発病変を1つずつ確認すること、被膜下の分布・被膜陥凹・標的状所見とあわせて判断することが大切です。
症例 60歳代女性

引用:Radiopaedia
辺縁、被膜下を中心にびまん性に腫瘤を認め、肝の被膜陥凹所見を伴っています。
腫瘤には造影効果を認めています。
肝生検にて、類上皮血管内皮腫(Epithelioid hemangioendothelioma(EHE))と診断されました。
症例 50歳代女性

引用:Radiopaedia
辺縁、被膜下に単純CTで低吸収で、造影CTで中心の低濃度、辺縁の造影増強効果、その外側のhaloを呈し、3層構造(低-高-低)を示している腫瘤を複数認めています。
肝生検にて、類上皮血管内皮腫(Epithelioid hemangioendothelioma(EHE))と診断されました。
類上皮血管内皮腫・血管肉腫・類上皮血管腫の違い
「血管内皮腫」は血管の内側をおおう内皮細胞から発生する腫瘍のグループ名で、類上皮血管内皮腫はその一つです。名前が似た病気と混同されやすいため、違いを整理します。
| 類上皮血管内皮腫(EHE) | 血管肉腫 | 類上皮血管腫 | |
|---|---|---|---|
| 性質 | 悪性(低〜中等度。経過に幅がある) | 悪性度が高い | 良性 |
| 遺伝子 | WWTR1-CAMTA1融合が90%超 | — | CAMTA1は陰性 |
| 肝臓での画像 | 被膜下に多発・癒合、被膜陥凹、標的状、lollipop sign | 腫瘤を作る型(76.5%)と作らない型(23.5%)がある | 肝臓ではきわめてまれ |
| 報告 | Ganeshan 2020、Beretta 2026 | Kim 2026(17例、平均69歳、男性11例) | Brown 2026 |
肺の類上皮血管内皮腫
- 肺にも発生し、CD31・CD34・ERGの免疫染色が陽性で、多くにWWTR1-CAMTA1融合遺伝子を認めます。
- 限局した病変では手術が第一選択で5年生存率は80%超、多臓器に広がる場合は治療効果が限られ、多臓器転移・男性・55歳以上が予後不良因子とされています(Tang 2025)。
遅延性濃染を示す肝腫瘤
豊富な間質が原因
血管腔の拡張が原因
肝被膜陥凹の原因
被膜陥凹は悪性腫瘍に特異的な所見ではなく、良性・悪性のさまざまな病気でみられます(Blachar 2002)。
類上皮血管内皮腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 類上皮血管内皮腫の生存率は?
A. 肝EHEの文献レビューでは、5年生存率は肝切除75%、肝移植54.5%、無治療4.5%でした(Mehrabi 2006)。一方で無治療でも長く安定する例もあり、経過は人によって大きく異なります。
Q. 症状はありますか?
A. 偶然見つかることも多く、症状があっても右上腹部痛などはっきりしないものが多いです。気になる症状や健診での異常があれば、医療機関で相談してください。
参考文献
- Makhlouf HR, Ishak KG, Goodman ZD. Epithelioid hemangioendothelioma of the liver: a clinicopathologic study of 137 cases. Cancer. 1999;85(3):562-82. PubMed
- Mehrabi A, Kashfi A, Fonouni H, et al. Primary malignant hepatic epithelioid hemangioendothelioma: a comprehensive review of the literature with emphasis on the surgical therapy. Cancer. 2006;107(9):2108-21. PubMed
- Alomari AI. The lollipop sign: a new cross-sectional sign of hepatic epithelioid hemangioendothelioma. Eur J Radiol. 2006;59(3):460-4. PubMed
- Lyburn ID, Torreggiani WC, Harris AC, et al. Hepatic epithelioid hemangioendothelioma: sonographic, CT, and MR imaging appearances. AJR Am J Roentgenol. 2003;180(5):1359-64. PubMed
- Stacchiotti S, Miah AB, Frezza AM, et al. Epithelioid hemangioendothelioma, an ultra-rare cancer: a consensus paper from the community of experts. ESMO Open. 2021;6(3):100170. PubMed
- Ganeshan D, Pickhardt PJ, Morani AC, et al. Hepatic hemangioendothelioma: CT, MR, and FDG-PET-CT in 67 patients-a bi-institutional comprehensive cancer center review. Eur Radiol. 2020;30(5):2435-2442. PubMed
- Beretta A, Stacchiotti S, Tam YB, et al. Translating molecular mechanisms of epithelioid hemangioendothelioma to improve patient outcome. Crit Rev Oncol Hematol. 2026;217:105021. PubMed
- Kim BJ, Hong JH, Lee HW. Primary Hepatic Angiosarcoma: Distinct Imaging Phenotypes Mirroring Histopathologic Growth Patterns in a Retrospective Human Study. Diagnostics (Basel). 2026;16(2):291. PubMed
- Brown E, Schoedel K, Barwad A, et al. Clinicopathologic and radio-genomic insights into hepatic epithelioid hemangioma: An illustrated review. Hum Pathol. 2026;170:105955. PubMed
- Tang B, Zhao S, Wang J, et al. Pulmonary epithelioid haemangioendothelioma: A comprehensive review of clinical and molecular advances. Clinics (Sao Paulo). 2025;80:100789. PubMed
- Asayama Y, Yoshimitsu K, Irie H, et al. Delayed-phase dynamic CT enhancement as a prognostic factor for mass-forming intrahepatic cholangiocarcinoma. Radiology. 2006;238(1):150-5. PubMed
- Blachar A, Federle MP, Brancatelli G. Hepatic capsular retraction: spectrum of benign and malignant etiologies. Abdom Imaging. 2002;27(6):690-9. PubMed
- Liu X, Yu H, Zhang Z, et al. MRI appearances of hepatic epithelioid hemangioendothelioma: a retrospective study of 57 patients. Insights Imaging. 2022;13(1):65. PubMed
- Tan H, Zhou R, Yu H, et al. CT appearances and classification of hepatic epithelioid hemangioendothelioma. Insights Imaging. 2023;14(1):56. PubMed
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