直腸間膜(mesorectum)
- 腹膜反転部までは、直腸の前面と側面は腹膜に覆われ、後面は直腸間膜筋膜により境界される直腸間膜(mesorectum)となってこの中を神経や血管、リンパ節が含まれる。
- ・直腸間膜は、直腸癌の周囲進展やリンパ節転移の評価に重要。
症例70歳代 男性
直腸周囲には直腸固有筋膜を認めており、これと直腸との間が直腸間膜に相当することが確認できる。
直腸間膜筋膜(mesorectal fascia)
- 直腸間膜筋膜は、直腸の周囲の直腸間膜層の脂肪層を取り囲む線状構造として認められる。
- 直腸間膜筋膜浸潤の有無が直腸間膜全切除術の切除境界となるため。
- 直腸間膜筋膜と腫瘍、転移リンパ節、脈管内浸潤の距離が1mm以内の場合は筋膜浸潤陽性とされる。
- その場合、術前の化学放射線療法などの必要性を示唆する。
- しかし、わずかな筋層外への浸潤と反応性炎症による線維化との区別は困難。
- 直腸癌に対しては、直腸間膜全切除(TME:total mesorectal excision)またはTSME(tumor- specific mesorectal excision:腫瘍の位置に応じた直腸間膜を部分的に切除する)が標準術式となったが、側方リンパ節郭清が追加される場合が多い。
直腸間膜全切除(TME:total mesorectal excision)
- 1982年にHealdにより開発された直腸切除法。
- 肛門管直上までの直腸間膜をすべて直腸間膜筋膜ごと切除する術式。
- この術式の導入により、直腸癌の局所再発率が著しく改善された。
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